小松左京『はみだし生物学』(新潮文庫)に、何故、子孫を残すのに両性による生殖が行われるのか、という話が有った。単性生殖ではなぜいかんのか、という話だ。情報が薄れるを避けるためだ、という解釈をしめしていた。遺伝子情報を正しく子孫に伝えるためであるというのだ。小松氏は電子複写、コピーを例に取って説明していた。コピーしたものをコピーしたら薄れてしまう、更にコピーすればもっと薄れる。単性生殖はこれにあたるという。そこで別のコピーと照し合せると、あるコピーでは読み取れなかった情報が読み取れるし、読み誤りも防げる、というのである。 文献を扱う人間にとってはコピーを例に取るよりも写本を考えた方がよい、と思い、この説に大いに納得が行った。 ある本を人が写せば、まず誤写(写し間違え)がある。それを更に写すと、新しい誤写が生じるし、場合によっては既にある誤写部分を勝手にねじまげて解釈し、本来の形とは似ても似つ