本稿の目的は、日本を代表する宗教学者である島薗進氏が「統一教会と現代日本の政教関係——公共空間を脅かす政教のもたれ合いと宗教右派」という論文で展開した議論について、氏の個人史的な文脈を考慮にいれて検証することにある。 2024年1月に出版された『自壊する「日本」の構造』という本に収められたこの51頁の論文は、過去1年半にわたって島薗氏がおこなってきた言論活動のエッセンスが詰まったものとなっている。そこで、この論考の検討をはじめる前に、まず島薗氏の近年の活動について簡単に触れ、その中でこの論考がどのような位置を占めているのか整理しよう。 東京大学名誉教授である島薗氏は、新宗教やスピリチュアリティに関わる様々な研究を手がけ、宗教学の概説書や入門書を数多く世に送りだしてきた、日本の宗教学を牽引する存在である。2022年7月8日に発生した安倍元首相暗殺事件の直後から、島薗氏はとても活発に言論活動を