検察としても,この種の事件の取扱いは非常に難しい。 検事時代に,育児ノイローゼから,咄嗟的に子供を殺害しようとした殺人未遂事件を担当したことを思い出す。その事件で,子供には重篤な障害が残った。 求刑は,本件と同じ懲役5年。ただし,「今後も自殺の動機がある」と指摘して,敢えて実刑を求める論告をした。判決は,実刑を退けて,懲役3年執行猶予5年。 しかし,被告人の母親は,釈放後,判決確定前に自殺した。 育児疲れによる殺人は,懲役5年求刑が量刑相場と言える。しかし,刑事司法だけでは,適切な解決が図れるものではないことを痛快させられた。