「なんのために働くか」というより、高度成長期の回顧録である。高度成長期はもう教科書の出来事になったし、バブル崩壊後の衰退期に育った人はもはやかつての成長や繁栄の時代を知ることはないだろう。どんな時代だったのかと知る本である。 言葉を拾ってゆくほうがこの時代のことをつたえやすいだろう。 「所帯をもっている人は、子供の顔を見たことがないと言っていましたよ。休みは1カ月に1日あれば、今月はよかったなあ、と思うくらいです。20年間、1日も休んだことがないという独身の係長もいましたよ」 「誰も手をつけていない未知の部分で、自分の主体性とイニシアチブをもって携われたというのは、男にとって、最高の喜びではないでしょうか」 「私は本当についていると思います。とにかく、作れば売れるでしょう。やればやっただけの成果がある。実に幸運でした」 「全部、一からつくるしかない。とにかく、全部、自分たちで作るしかないの