和歌山市の土木建設会社で4人が死傷した拳銃発砲事件。逃走した溝畑泰秀容疑者(45)=8月31日に自分の腹を撃ち死亡=は住宅街の木造アパートに、17時間以上、立てこもった。「こんなことで死にたくない」。未明に2階の部屋の窓から雨どいを伝って自力で脱出した住人の男性(73)が、恐怖と緊迫に満ちた当時の様子を話した。 「ガサガサッ」。8月31日午前1時過ぎ。アパート2階の自室で目を覚ました男性は、部屋の前の通路の方で音がするのを聞いた。 「猫かな」。玄関わきの窓から網戸越しに外をのぞいた。通路の鉢植えを手入れする時に腰かけている椅子に、見知らぬ男が座っている。左手に銀色、右手に黒色の拳銃を持っていた。 同29日に4人が撃たれた発砲事件は、アパートの約100メートル東の土木建設会社で起こった。容疑者が逃げているのは、もちろん知っていた。「警察が守ってくれとるんかな」。一瞬そう思ったが、服装の違和感