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増田文学に関するboxmanx99のブックマーク (29)

  • 吉野家の七味

    対面のおじさんが必死に七味を振り掛けている。 おじさん、ここの七味は香り重視だ。たれの味を損なわない吉野家のこだわりだ。 そんなに辛いのが好きか、おじさん。 俺はU字カウンターの向こう側に回り、おじさんに瓶を差し出す。 愛用のマイ一味(業務用大瓶)だ。 おじさんは驚いた表情で俺の顔を見つめ、その後目をそらし言った。 「ありがとう」 無言で微笑み返す俺。 自席に戻った俺は事を再開する。 お会計の時に店員に言う。 「今日のたまねぎの煮込み具合は実に俺好みだった」 あわててマイ一味(業務用大瓶)を返そうとするおじさん。 いいんだ、おじさん。それはあんたにあげたんだ。 ユア一味(業務用大瓶)だ。 ポケットから未開封のマイ一味(業務用大瓶)をおじさんに見せた。

    吉野家の七味
  • 寄生虫と呼ばれて

    アイドルと聞いて何を思い浮かべるだろうか。世の中には一定以上彼らを批判する声もあるだろう。それでも私には一人のアイドルが私の生きる意味だった時代がある。 ことがある、と表現したのは即ち今は違う、ということである。真っ当な生活をしているわけではないけれども、それでも毎日を彼らの後ろ姿を追いかけることだけに費やすことは無くなった。成長と言っていいのかは分からないけれど寄生虫と呼ばれたあの時代に比べればきっとマシになったと信じたい。 うん年前、一人のアイドルのファンになった。最初はただ見ているだけで十分だったのにいつのまにかわたしの欲求は認められたい、に変わってしまった。スポットライトを浴びて黄色い歓声の中心にいる彼にどんな形でもいいからわたしという存在を知ってほしい。最初は彼も私を1ファンとして扱っていたけれど、だんだんと彼の中の私という存在は害虫レベルになっていた。見かけるだけで気分が悪くな

    寄生虫と呼ばれて
  • かわいいあかちゃん

    うちの旦那はバツイチだ。 早くに結婚し、結婚生活2年目で元奥さんが浮気し、離婚した。らしい。 そんなこんなで私と出会い、それなりにお付き合いして結婚し、 いま結婚生活2年目に突入した所で妊娠が発覚した。 彼は結婚する前から子どもが欲しい事をたびたび口にしていたので それはもうふたりで大層喜んだ。 病院の帰り、車の中で少し意地悪な疑問が浮かんで旦那に質問した。 「前の奥さんと子作りはしてたの?」 聞いたところで損にしかならない、そういう質問をしたくなる気持ちを バツがつく伴侶をもつ方なら分かってくれると思う。 彼は間髪いれずに答えてくれた。 「してない」 「あいつの遺伝子ではかわいいあかちゃんは見込めないと思ったから」 私はなにも言えずエアコンの温度を1℃あげた。 初めて見た旦那の刃物みたいな思考とか元奥さんの浮気の原因はまさか、とか いま少し恐ろしい気持ちでいる。

    かわいいあかちゃん
  • メガネと性行為がしたい

    それまではメガネを掛けた女性が好きでたまらないと思っていました。それが、当はそうではないということに気付いてしまったんです。 自分の中で美人だったり可愛いという基準はメガネがなくては絶対に成り立ちません。その日だって、いつも通りメガネを掛けた女性に見とれていました。 午後の外回りが落ち着いた頃に、休憩で立ち寄った喫茶店で通路を挟んだ斜め向かいの席にその女性は座っていました。仕事がうまく行かなかったのかそれともこれから大事なミーティングがあるのかわかりませんが、今どき紙の書類を束にして、そこへ気難しそうに視線を落としていました。 黒くしっかりとしたツヤのある縁どりに、やや四角い横長ながらそれほど大きさを感じさせないメガネから、薄めの化粧の割にアイラインがしっかりと描かれた、意志の強さを感じさせる瞳が覗いていました。 余計なものは身につけず、身体のラインが感じられるグレーのパンツスーツに上着

    メガネと性行為がしたい
  • 「これは映画館で見たほうがいい映画」

    「これは映画館で見たほうがいい映画」といううたい文句が差すものが万人でバラバラすぎてそのうたい文句が包含する映画群がずんずん拡大しつづける現象があたしはとても好きだったりする。 『ゴジラ』は映画館で見たほうがいい、『パシフィックリム』は映画館で見たほうがいいと聞けばなるほど迫力のある映像表現・音響表現がある作品は映画館でみるべきだよと言っているのかなと思う。 『her/世界でひとつの彼女』は映画館で見たほうがいい、『怪しい彼女』は映画館で見たほうがいいと聞けばふむふむヒューマンドラマは映画館で見るべきだと言っているのかなって思う。 はたまた『TOKYO TRIBE』は映画館で見たほうがいいと聞けばほうほう時代性を反映している映画は生ものだから映画館で見るべきだという話なのかなと思ったりもする。 そうやって「これは映画館で見たほうがいい映画」が指す映画たちの特徴がどんどん広がっていって、最終

    「これは映画館で見たほうがいい映画」
  • 店員の薦めるままに私はそれをバケットに塗って口に放り込んだ。 濃厚な味..

    店員の薦めるままに私はそれをバケットに塗って口に放り込んだ。 濃厚な味わいが広がり、それでいて後に残るのはさっぱりとしたさわやかな香りで、しつこさを感じさせない。 私の人生はもう半分を折り返して新しいことなどそうそうなく残りの退屈な人生を送るものだと思っていたが、まだこんな出会いが残っていたのかと歓喜の気持ちが抑えられなかった。 今の私の顔はきっとひどく緩んでいることだろう。 うまい事は人生を豊かにしてくれる。 「これはいったい何なんだ?」 当然の疑問だ。 今までべたことのある味とはかけ離れていて、肉とも魚とも野菜ともつかぬ。 類推することさえ許さぬ珍奇さである。 「ガンダムペーストです」 一瞬、店員の言葉が理解できなかった。 まさかここで出てくるとは思わない単語だったからだ。 しかし、数秒の後、ゆっくりと言葉が私の頭に浸透してくると、これほど珍奇な味わいであればそういうこともあるのか

    店員の薦めるままに私はそれをバケットに塗って口に放り込んだ。 濃厚な味..
  • ドケチだった親父の話

    俺の親父はドケチだった. とにかくドケチだった. 口を開けば「カネがない」とグチった. 貧乏だった. お袋は貧乏が嫌で俺を置いて出て行ったらしかった. う物と言えばパンの耳,着るものと言えばボロ雑巾みたいな古着だった. ガキだった俺は友達が持っているスーファミが羨ましくて親父にせがんだ. 帰ってきたのはゲンコツだった. そんなカネねえ,と. ドケチなクソ親父め. でも俺はあきらめなかった. キャラクターをテレビの中で自由に動かせるのに,熱中していた. 根負けしたのか,なんとかしてやると言い出した. 俺は興奮で眠れぬ夜を過ごした. 翌週親父が持ってきたのは,中古のPC98だった. どうやら友人から譲ってもらったらしい. なんだか嫌な予感がしながら電源を入れたら,文字しか出てこねぇし,なにすりゃいいのか分からないし, まさに「コレジャナイ~」と泣きながら手足をバタバタさせてダダをコネたい気持

    ドケチだった親父の話
  • 東大卒アラサー独身ニートが語った「働かない理由」

    学生時代の同級生で、30になるのに一切働かない奴がいる。 仲間うちでは成績はピカ一だった。当時から分厚い洋書をバターにナイフでも入れるかのようにサクサク読みこなしていた。 名家の出で、父上は元官僚にして実業家、今は経営の実権は兄上に移っているといい、当人は家族に生活費を出してもらって、都内に一軒家を借り、使用人を2人も置いて悠悠自適の生活をしている。 仕事もしないで何をしているのか不思議だが、膨大なを読み、コンサートに足しげく出かけ、実家のコネを使って外国人主催のパーティに出入りしたり、芸者遊びまでして、人は多忙なつもりらしい。 家族は彼が働かないことは全く気にしていないようだが、30にもなって独身でいることこそを問題視しているらしく、しばしば縁談を持ちかけては断られているようだ。 「だって、君だって、もうたいてい世の中へ出なくっちゃなるまい。その時それじゃ困るよ」と言ってみたことがあ

    東大卒アラサー独身ニートが語った「働かない理由」
    boxmanx99
    boxmanx99 2014/08/20
    高等遊民、増田漱石。「バターにナイフでも……」の表現が気になりすぎていきなり躓いた。
  • 柔軟剤のにおいを解決した話。

    職場で隣デスクの男性はとてもいいにおいがする。 柔軟剤を奥さんが選んで使っているようだった。 初日は、あら、いい匂いですね、 新婚さんの幸せおすそわけされてるみたい~♡って思ってたけど 毎日いい匂いでしょ?と鼻にやってくる匂いに日に日にストレスになってきた。 ベッドで寝てるときも、服は男性の体に染み付いてて辛かった。 ある日、職場で「そのにおい、素敵だと思うんだけど、毎日漂ってくると辛いんです・・・」と言うと、 男性は申し訳なさそうに「すいません。がそういう洗剤を選んでるみたいで。やめるように言うね」と言った。 私は匂いをつけるのは人の自由だと思ってる。 その自由を私によって侵害されているのだから、その代償に洗剤のギフトセットを購入しておいて、荷物になるけどごめんねとその場で渡した。 男性は申し訳ないと言っていたが、奥さんはその匂いを気に入ってるだろうし私のわがままだから・・・と言ったら

    柔軟剤のにおいを解決した話。