男の4人に1人はがんで死ぬ。ずいぶんエンカウント率の高い敵だ。彼を知り己を知れば百戦して殆うからずと孫子はいったが、いずれ自分を殺す可能性が高い敵であるならば、突然目の前にやってきて強制的に対峙させられるその前に、敵のことを知っておくにこしたことはない。そんなようなことを考えながら「がん」についての本を時たま読んでいるけれど、上下巻で4000年以上に及ぶ人類とがん治療における歴史をたどっていく本書はその中でも一番の傑作であった。 著者はインド系アメリカ人。コロンビア大学でおそらくは臨床もする助教授として血液及び腫瘍医学研究に携わっている。その為単なるがん研究者、あるいはサイエンス・ライターには書けない生身の人間との関わり合い、実感が本書には通底している。目の前で多くのがん患者を亡くしてきたであろうし、打つ手がもうないのだと、助からないことを伝えなければいけないこともある。本書を書くことにき