高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事] *** 大人が色々余計な知識をもっていることは大抵マイナスの方向にはたらくと思っている。「君の名は。」(新海誠原作・脚本・監督)というアニメ映画が面白いらしいと評判だが、どうも食指が動かなかった。 「君の名は。」と言えば、真っ先に思いつくのが脚本家・菊田一夫の代表作「君の名は」である。1952年にラジオドラマで放送されたこの作品の聞かせ所は、主人公・真知子と春樹の会えそうで会えないすれ違い。こちらの「君の名は」と「君の名は。」は全く違う話らしいが、後者の方にもすれ違いはあるのだろうか。 アニメ映画「君の名は。」では、男子高校生と女子高校生の体が意識が入れ替わってしまうそうが、その設定の名作には山中恒の児童文学「おれがあいつであいつがおれで」を大林宣彦監督が1982年に映画化した「転校生」がある。尾美としのり、小林聡美の鮮烈な演技が目