〈多思彩々〉内向き日本、外に開かねば（東京大先端科学技術研究センター教授・池内恵）｜信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト

今年は１年の半分をイスラエルのテルアビブ大に客員研究員として籍を置き、研究拠点を築いて日本と中東の２拠点生活を送っている。テルアビブ大の中東研究センターの研究室の窓からは、キャンパス中央の広場を見下ろせる。季節の移ろいにつれてジャカランダや火炎樹の花が咲き乱れるのが目に優しい。 住居はエルサレムに置き、近年開通した快速鉄道でテルアビブに通う。エルサレムは東西に分かれるが、１９６７年の第３次中東戦争でイスラエルが占領して以来、行き来は自由だ。アラビア語を用いるアラブ人（パレスチナ人）の世界と、ヘブライ語を用いるユダヤ人の世界が隣接し、交わっている。ユダヤ教を信じるユダヤ人、キリスト教やイスラム教を信じるアラブ人がそれぞれさらに細分化された帰属意識（アイデンティティー）を持つ集団に分かれ、緊張しながら共存している。 イスラエルを拠点に、隣接するパレスチナ自治区や隣国ヨルダン、２０２０年にイスラ