幕末・明治期から今日にいたる日本の近現代一五〇年間を、折々に画期となった書物をとおして通覧するのが本書『日本の時代をつくった本』である。 一五〇年前といえば一八六七年、江戸幕府による支配体制が大政奉還によって終焉した年だ。坂本龍馬が暗殺され、夏目漱石や正岡子規が生まれた年でもある。一世紀半を経る間にわたしたちは、ずいぶん遠くまで来てしまったのか、それともさほど変わっていないのか。 本書を支えているのはつぎのような考え方だ。「振り返ると、その時々に合わせて書物がつくられてきた。書物は時代を映す鏡だ。時代が書物をつくる。詩歌や小説が書かれ、海外の作品が翻訳され、雑誌がつくられた。それだけでなく、書物が時代をつくることもある。たとえば福沢諭吉『学問のすゝめ』は明治の精神に大きな影響を与えた。『少年マガジン』や『少年サンデー』などマンガ誌は戦後ベビーブーマーたちの心をとらえ、のちに独自の文化を築き