しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール [著]香山リカ[掲載]2009年9月6日[評者]佐々木俊尚(ジャーナリスト)■アンチ「勝間」もまた幻想か 本書に書かれていることの大半は「小泉改革が日本をダメにした」「勝ち負けを重視しすぎ」といった、ワイドショーのようにわかりやすく、かつ古くさい現代社会批判である。だがこの本の唯一新しい点は「アンチ勝間」だ。表紙の帯には大きく「〈勝間和代〉を目指さない。」と銘打たれ、本文中でも最終章をまるまる割いて、経済評論家・勝間和代氏の自己啓発本への批判が展開されている。 現代の日本は過酷だ。終身雇用制と年功序列に守られなくなった若者たちは、自分でキャリアパスを組み立て、コミュニケーション能力を高め、専門知識も身につけなければならない。そうしなければ脱落してしまうという不安感が彼らを覆っているからだ。自己啓発クイーンこと勝間氏の本が読まれ