新宿歌舞伎町の通称“ヤクザマンション”に事務所を構え、長年ヤクザと向き合ってきたからこそ書ける「暴力団の実像」とは――暴力団のシノギの一つである「博奕」について、著作『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)から一部を抜粋する。 ◇◇◇ 老博徒の昔話 本来、ヤクザの美学は博徒のそれとイコールだった。盆中での経験を通じて、若い衆は修行を積んでいった。自分たちが主催する盆中はもちろん、親分に付いて余所の賭場に行くこともある。博徒一家は持ちつ持たれつで、自分の賭場に来てくれた人間が博奕を開くときには、返礼として遊びに出かけなければならない。こういった機会は若い衆にとってなによりの経験になった。自分の賭場では見えないことが見えるし、なにより客の立場になってものを考えられるからだ。