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ブックマーク / honz.jp (22)

  • 友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ

    ヒトの進化において「協力的なコミュニケーション」が大きな鍵を握ったであろうことは、たびたび指摘されるところである。人がひとりでできることは限られている。単独で野生動物を狩ろうとしても、得られるのはせいぜいウサギくらいだろう。しかし、ほかの人と協力すれば、わたしたちはシカだって野牛だって狩ることができる。また、ほかの人と情報交換すれば、わたしたちは新たな技術などについて伝えあうことができる。というように、その進化史において、協力的なコミュニケーションはヒトに多大なメリットをもたらしたと考えられる。 しかしそれならば、次のような問いがさらに生じても不思議ではないだろう。ヒトはどうやって協力的なコミュニケーションを行うことができるようになったのか。 書は、その問いに対してひとつの回答を与えようとするものである。そして、書が導き出す回答は、原書のタイトル(Survival of the Fri

    友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ
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    htenakh 2022/06/27
  • 『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか - HONZ

    「中世ヨーロッパ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「疫病と飢饉」、「魔女狩り」、「異端審問」……。代表的なものを挙げたが、いずれにせよ、西ローマ帝国が滅んだ5世紀末からの約1000年間に明るく進歩的な印象を抱く人は少ないだろう。 だが著者は、そうしたネガティブなイメージはここ200年ほどの間に私たちに植え付けられた誤解だと説く。書には、中世に関する11の「フィクション」が登場する。多くの人は、どれも一度は耳にしたことがあるはずだ。 中世の人々は地球が平らだと思っていた。風呂にも入らず、暮らしは不潔で腐った肉も平気でべた。教会は科学を敵視し、今では誰も疑うことのない説も教会の権威によって迫害され続けた。何の罪もない女性たちが何万人も魔女として火あぶりにされた。 これらの説は、文化上構築された「中世」にすぎず、前世紀までに歴史学の専門家によって否定されている。だが、今でも大きな顔をして

    『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか - HONZ
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    htenakh 2021/06/12
  • 『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ

    スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人みたいではないか……。 そんなツッコミで幕を開ける書は、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、ソーシャルゲームといったデジタルテクノロジーが持つ薬物のような依存性をわかりやすく噛み砕いて分析した一冊である。ネット依存を題材としたは他にもあるが、書が類書とちょっと違うのは、こうした依存症ビジネスを否定・糾弾するのではなく、人間心理への深い理解を促すことに重心が置かれている点だ。著者はニューヨーク大学の行動経済学や意思決定の心理学

    『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ
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    htenakh 2019/09/07
  • 『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 - HONZ

    小学校に通う子どもの通知表を見ていたときのことだ。教科ごとに4つの評価項目が設けられているが、「社会」のところに「おや?」と目が留まった。項目がすべて同じ文章になっている。「もしかして誤記?」と思ったのだ。 よくよく見ると同じ文章ではなかった。だが、勘違いするのも無理はない。「我が国の歴史や伝統、世界の国々に〜」「我が国の歴史や伝統の意味について考え〜」など冒頭がすべて同じ文言だったのだから。なにこれ? 2017年、初めて行われた道徳の教科書検定が話題となった。ある教科書に載った教材に文部科学省が意見をつけ、教材に取り上げられた店が「パン屋」から「和菓子屋」に変更されたのだ。 文科省は具体的な差し替え箇所を指示したわけではないというが、教科書全体を通して「我が国や郷土の文化に親しみ、愛着をもつ」点が不足していたと説明している。パン屋よりも和菓子屋のほうが我が国の伝統にかなっているということ

    『掃除で心は磨けるのか いま、学校で起きている奇妙なこと』ある特定の方向へ誘導する教育の問題 - HONZ
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    htenakh 2019/04/20
    心が奇麗になったかは分からないが、気分は最悪だ。
  • 『Bullshit Jobs: A Theory(洋書)』どうでもいい仕事を理論化する - HONZ

    経済学者のジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946年)は、 1930年に”Economic Possibilities for our Grandchildren(孫の世代の経済的可能性)”というエッセイの中で、イギリスやアメリカのような先進国では、テクノロジーの進化によって20世紀末までに週15時間労働が実現しているだろうと予言した。(”Essays in persuasion(ケインズ 説得論集)”) ケインズの指摘する通り、確かにテクノロジーは大いに進化したものの、結局、この予言は当たらなかった。ロンドンスクール・オブ・エコノミクス(LSE)の社会人類学教授のデヴィッド・グレーバーは、その理由を、テクノロジーがむしろ無意味な仕事を作り出す方向に使われたからだと説明する。 グレーバーは、”We are the 99%(我々は99パーセントだ)”というスローガンで行われた、201

    『Bullshit Jobs: A Theory(洋書)』どうでもいい仕事を理論化する - HONZ
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    htenakh 2018/07/27
  • 『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機 - HONZ

    その日、電車に揺られながら、ぼくは迷っていた。これから会う相手にどんなスタンスで話を訊けばいいのか悩んでいたのだ。待ち合わせ場所は新宿小田急百貨店。この中にある書店で、山田ルイ53世の『一発屋芸人列伝』の発売を記念したトークショーが予定されていた。 『新潮45』連載時に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞した書は、発売前から重版がかかるほど評判が高く、すでにいくつかの著者インタビューも世に出ていた。その中には現代ビジネスに掲載された石戸諭さんによる素晴らしいインタビュー記事などもあって、いまさら屋上屋を架しても……という思いがあった。 さらに個人的な事情もあった。実は山田ルイ53世は、ぼくが勤めるラジオ局で番組を持っている。ただしそれは地上波ではない。ポッドキャストでの配信番組である。 正確に言えば、かつては地上波でワイド番組を持っていたものの、打ち切りの憂き目にあい、いまはポッド

    『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機 - HONZ
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    htenakh 2018/06/11
    色川武大は『うらおもて人生録』の中で負けることの大切さについて書いた。賭け事で連戦連勝するような人間は、決まって命に関わるような致命的な負けをする。大切なのはうまく負けを拾うこと。最終的に人生9勝6敗。
  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
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    htenakh 2017/09/15
    近未来って言うか今だよ
  • 『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない。 2年以上をかけて準備されていた計画の周到さ。そして、何百人もの生徒たちでにぎわう昼時のカフェテリアを爆破するという残虐な構想。計算ミスや完成度の低さにより爆弾は不発に終わったものの、実際の被害を遥かに上回るその計画の大きさは、人々の間に驚きと恐怖の渦を巻き起こした。 言うまでもなく、この事件を題材にして過去に多くのが書かれ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ
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    htenakh 2017/07/23
    「「大量殺人犯には明確な特徴や兆候がある」、「身近な人ならばそれが見抜いて防ぐことができて当たり前」といった根強い幻想を打ち砕くためだと答えたい。」
  • 『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? - HONZ

    『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか?編集部解説 ネコ派も、イヌ派も、ご用心! あなたの性格や行動が知らないあいだに、腸内や脳などに住む寄生生物によって操られているとしたら? 「まさか、そんなことは!」と思うだろうか。近年、「神経寄生生物学」と呼ばれる分野の研究が明かしているのは、まさにそんなことが起こっている、しかもごく日常的に!である。 たとえば、世界中で3人に1人が感染していると言われるトキソプラズマ原虫。この微生物は主にネコからヒトへと感染し、脳に住みつく。 医学的には、感染しても妊婦などでなければさほど問題はないとされていた。しかし、心理学者や神経科学者らの研究では、人の気分や性格を変えてしまい、そのせいで感染者が危険な行動を取ったりすることがわかってきた。とくに男性では、規則を破り、人と打ち解けない傾向が強く、交通事故などにも

    『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? - HONZ
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    htenakh 2017/04/16
  • 『戦争の物理学』戦史と物理学の歴史の見事な融合 - HONZ

    戦争にまつわる物理学のを書いている」著者がこう話すと、周りからは「物理学が戦争と何の関わりがあるんだい?」という言葉が返ってきたという。続けて「ああそうか、原子爆弾のことだね」と言われたという。『戦争の物理学』という書のタイトルを読んで同じように思った方も多いだろう。もちろん、書では原爆の事も論じられている。しかし、それだけではない。人を殺傷する際の運動エネルギーも全て物理の法則にのっとり行われている。書は古代から現代までの兵器の変遷を物理学の視点から読み解いた、一風変わった作品だ。 書は、それぞれの時代の兵器の変遷を説明し、その兵器がいかに活躍したかを戦記風に記述した後、兵器にまつわる物理的な話へと移る、という構成が取られている。このため、歴史好きの人にもお勧めできる一冊だ。 例えばロングボウという弓の話は「100年戦争」のさなか、ロングボウの活躍により圧倒的な兵力差を誇る重

    『戦争の物理学』戦史と物理学の歴史の見事な融合 - HONZ
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    htenakh 2016/04/29
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    『腸よ鼻よ』10指腸 2018年09月22日 澄み渡る青い空と透き通るような海、白い砂浜のある南の島――沖縄。 この島に生まれ、蝶よ花よと育てられた1人の少女がいた。 彼女の名は島袋全優。 漫画家を志し、いずれは大都会東京での タワーマ...

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    htenakh 2015/10/17
  • 『スエロは洞窟で暮らすことにした』 お金がなくても豊かに生きられる!? - HONZ

    米国ユタ州の砂漠の町モアブに、10年以上まったくお金をつかわずに暮らしている男がいる。スエロと名乗る彼は、50歳をすぎた現在でも、月の半分以上は野草やごみ箱から拾った物をべ、人里はなれた洞窟に寝るという穴居生活を送っている。書は、スエロの旧友でもあるノンフィクションライターの著者が、リーマンショックを機に、資主義の煩わしさとは無縁の世界に生きる彼の元を訪れ、密着取材をしたことで生まれた。 10年以上もお金をつかわない生活なんて聞いたことない! と、書を読み始めたのだが、実はこの手の強者は世界を探せば他にもいるようだ。調べてみると、まで出した人もいる。はい、レビュー断念。となるところだが、読み進めていくとどうやら スエロは他の無銭者とはひと味違う。著者をもって「フリーランスの哲学者」といわしめる彼の哲学は、資主義の世に生きる我々にとって、はっとさせられるような気づきをもたらしてく

    『スエロは洞窟で暮らすことにした』 お金がなくても豊かに生きられる!? - HONZ
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    htenakh 2015/03/20
    「金銭を放棄することで、逆に人との交流が深くなるのは興味深い。スエロは色々な集まりに積極的にでかけ、人々と互いに善意の贈与を通してつながっている。」
  • 『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ

    65歳以上の高齢者の万引きの増加が話題になったのは20年ほど前だったか。当時は全体に占める割合が1割に達したことで注目を集めていた。 書によると警察庁発表の犯罪統計では高齢者による万引きは2011年には未成年者の検挙数を追い抜き、直近の公表値である13年は32.7%を占め過去最高を記録したという。万引き犯の3人にひとりが65歳以上という状況だ。人口全体が高齢化していることを踏まえても異常な増え方だ 万引きだけではない。ストーカーも60代以上の13年度の認知件数が10年前の約4倍に増え、他の世代の1.7-2.6倍に比べて高い増加率を示す。驚くべきなのは暴行の検挙数。2013年には94年比45倍超の3048人に急増している。原因も「激情・憤怒」が60%以上を占め、次点の「飲酒による酩酊」の14%を大きく引き離す。酔っぱらって、「何だ、この野郎!」と酒場で暴れる老人を想像しがちだが、当に凶暴

    『老人たちの裏社会』生き地獄化する余生 - HONZ
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    htenakh 2015/03/20
    というかこれ俺の末路なんじゃないかと…しんどいな
  • 犯罪者を特定する因子は存在するのか? 『暴力の解剖学 神経犯罪学への招待』 - HONZ

    HONZが送り出す期待の新メンバー・冬木 糸一。若干26歳にして恐るべき読書量を誇り、彼の個人ブログ「基読書」では注目のノンフィクションが続々と、HONZに先んじる形で取り上げられていった。こんな危険な輩を外で野放しにしておくわけにもいかないので秘密裏に交渉し、メンバー入りへと至った次第。今後の彼の活躍に、どうぞご期待ください!(HONZ編集部) 日のようにかなり平和な国であっても人は人を殺す。メディアは殺した人間をどのような人間であったのか、どのような趣味を持っていたのか、いかにも人を殺しそうな人間であったのか、はたまた普段は人当たりのよい人間だったのかと、盛んにそのパーソナリティに迫ってみせる。 そんな時、「どこにでもいる、あなたの隣にもいそうな人間が超凶悪な殺人犯でした! あなたも危ないかもしれません!」とただ危険を煽るだけだと問題でも生じるのだろうか、そこに何らかの特徴をつけて

    犯罪者を特定する因子は存在するのか? 『暴力の解剖学 神経犯罪学への招待』 - HONZ
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    htenakh 2015/03/09
  • な、なかったんですかっ?! 『ニュートンのリンゴ、アインシュタインの神 : 科学神話の虚実』 - HONZ

    毎年、年末ぎりぎりに高校の同級生との忘年会がある。過去10年以上にわたっておこなわれているのであるが、デジャヴみたいに同じような話が繰り返される。しかし、自分のことが語られていても、自分では覚えていないこともあるし、自分の記憶と違っていることもよくある。 自分が正しいのか、友人たちが正しいのか。もちろん、自分が正しいと思いたいけれど、よってたかって間違えてると言われると、やっぱり自分の勝手記憶のせいなのかという気がしてしまう。いまを生きる自分の記憶ですらそうなのだ。過去の歴史上の人物について書かれたことの何が正しいかとなると、なおさら難しい。 ガリレオ、ニュートン、アインシュタインなど、歴史的な科学者の偉大な発見についてのエピソードをめぐるである。副題にある『科学神話の虚実』が示すように、それらの『神話』が史実を反映しているかどうかが、一次資料を読み解くことによって明らかにされていく。

    な、なかったんですかっ?! 『ニュートンのリンゴ、アインシュタインの神 : 科学神話の虚実』 - HONZ
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    htenakh 2015/02/15
    「私については、よくぞここまでと思うほどの嘘や完全なでっちあげがすでに山ほど書かれていて、そんなものを気にして過ごしていたら、私はとっくの昔に墓に入っていたことだろう。」
  • サイコパスと診断された科学者が語る『サイコパス・インサイド』 - HONZ

    サイコパスの研究者が、サイコパスであったーーこの衝撃の事実を皮切りに物語は始まる。科学者視点による所見と自分自身のこれまでの体験、二つの視点が交錯する中で際立っていたのは、両者の間に大きな乖離が存在するということであった。 サイコパスの定義とは今日の科学の進展をもってしても、未だ不確かなものである。一般的に「精神病質」と表されるサイコパスの特徴は「平板な感情の動き」に代表される対人関係における共感性の欠如である。映画『羊たちの沈黙』『ハンニバル』に登場するレクター教授のような、古典的なサイコパス像を思い出される方も多いだろう。 だが決して凶悪な殺人犯だけを指すわけではなく、人を思い通りに操縦しようとしたり、嘘に長け、口がうまく、愛嬌たっぷりで、人の気持ちを引きつけたりといった特徴も含むものとされる。むろん著者は人殺しや危険な犯罪を犯したことなどなかったし、それどころか科学者として成功し、幸

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    htenakh 2015/02/11
  • やっぱり日本の翻訳家はスゴイ!『翻訳問答』 - HONZ

    シンプルでセンス溢れる軽快な装丁、帯には江國香織と穂村弘の推薦文、著者は、僕らの世代だと、ハワイやサーフィンのイメージがすぐに浮かぶ、作家・翻訳家の片岡義男と、クッツェーの翻訳や『嵐が丘』の新訳で知られる鴻巣友季子。そしてタイトルの「蒟蒻問答」を思わせる遊び心ーー。 を手に取れば、どうしても「洗練」「洒脱」といった言葉が思い浮かんでしまう。ところが、いざページを開くとまったく印象が変わる。ひんやりと澄んだ空気感のなかで、真剣を交えるような言葉のやりとりが続く、実に読みごたえのある一冊なのだ。 書の「仕組み」は、次のようなものだ。 ・まず著名な、すでに翻訳されている著名な小説を、「課題小説」として片岡、鴻巣両氏が選び出す。 ・訳す範囲の原文だけが編集部から二人に渡される(つまり全体を通して原文を読むことはできない)。 ・締切日が提示され、その日までに双方が翻訳原稿を提出したのち、対談が行

    やっぱり日本の翻訳家はスゴイ!『翻訳問答』 - HONZ
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    htenakh 2014/10/25
    「(英検は)『絶対英語を使えるようにはさせないぞ』という固い決意のもとに作られているのではないか」
  • 『ピクサー流 創造するちから』 創造する組織を創造する - HONZ

    7つのゴールデングローブ賞、11のグラミー賞、そして27のアカデミー賞。1995年の『トイ・ストーリー』を皮切りに、ピクサーが生み出した14の長編映画は、数えきれないほどの賞を獲得し、世界中の観客の心を動かしてきた。芸術面での高評価にとどまらず、どの映画も多くの人々を映画館へと向かわせ、商業的にも大きな成功を収めている。水物と言われることもあるコンテンツビジネスにおいて、ピクサーの勝率は驚異的だ。 この偉業は1人の天才の手によるものではない。なにしろ、14の映画で14名もが監督にクレジットされているのだ。もちろん多くの稀有な才能に支えられてはいるが、“ピクサーという組織”が継続的に映像技術を革新し、胸打つストーリーを創造してきた。そして、その組織を動かす“ピクサーの仕組み”が、16年間も公開時興行成績1位を逃し続けていたディズニー・アニメーションを蘇らせた。ピクサーには、書の原題である『

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    htenakh 2014/10/13
  • 『妻と飛んだ特攻兵』 - 大空に舞った白いワンピース - HONZ

    ごく稀に、年に数回ほどだが、まるで導かれたかのように一冊のと遭遇することがある。書の強烈な磁力は、完成されたグラフィック広告のような表紙から発せられていた。 タイトルと写真を見た時の「この女性が!」という驚き。続いて副題の「8・19満州、最後の特攻」を眺める。「満州に特攻隊?」「8月19日って、終戦後のことなのか?」など、次々に湧き上がってくる疑問… まるで映画のエンディングのようなシーンから書は始まる。 ”「女が乗ってるぞ!」 滑走路を走る飛行機の後部座席に、さらさらと風になびいている長い黒髪が見えたのだ。そしてほどなく群衆は、あの白いワンピース姿の女性も忽然と姿を消したことに気づいたーーー。” 九七式戦闘機に乗っていたのは、ソ連軍戦車に特攻しようとする谷藤徹夫少尉(当時22歳頃)。そして見送りにきていたはずの・谷藤朝子(当時24歳頃)が、いつの間にか後部座席に。1945年8月1

    『妻と飛んだ特攻兵』 - 大空に舞った白いワンピース - HONZ
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    htenakh 2013/06/21
  • 『日本人とナノエレクトロニクス』 - HONZ

    非常に要領よくナノエレクトロニクスの進展とそれに関わる日人研究者について書かれたである。テーマの選択も妥当であり、この分野の啓もう書としてはもっとも優れたであろう。6つの主要技術についてそれぞれ1章をつかって説明したあとに、これからのナノエレクトロニクスについて語るという構成だ。 第1章は集積回路についてだ。キャパシタとMOSFETなどを使って視覚的に集積回路の基を説明したあと、集積回路全体の質的な特徴である材料と量子力学を概観する。図版も豊富で判りやすい。「n型半導体とp型半導体」と「集積回路の作り方」という2のコラムが添付されていて、この分野が全く素人でも分かりやすい構成だ。 第2章は「電子を閉じ込める」。この分野の知識はある程度あったつもりだったのだが「なるほどそうだったのか」と1ページ目から感心しきりである。身近な赤外線センサーの話から、それに使われる量子井戸型赤外線検

    『日本人とナノエレクトロニクス』 - HONZ
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    htenakh 2013/05/12
    芸術じゃなくて、これは芸術業界だから。本物は本当に世捨て人。