「事実は小説より奇なり」と言うが、インテリジェンスの世界では、小説の方が事実をよりリアルに表す場合がある。例えば、1963年にイギリス秘密情報局(SIS、いわゆるMI6)幹部のキム・フィルビーがソ連に亡命した。この事件が西側陣営に与えた影響は計り知れない。本件については、数多くのノンフィクションが書かれたが、そのどれよりもイギリスのカトリック作家グレアム・グリーンが書いた小説『ヒューマン・ファクター』(ハヤカワ文庫)の方が真相を知る上で有益だ。諜報機関員はほぼ例外なくこの小説を読んでいる。 さて、日本でも、最近公刊された一冊の小説がインテリジェンスの世界に激震を与えている。NHK前ワシントン支局長の手嶋龍一氏の『ウルトラ・ダラー』(新潮社)だ。奥付によると3月1日の発行だが、2ヵ月強で既に20万部を超えるベストセラーだ。本書について、筆者は『文藝春秋』5月号で書評しているので、ここでその
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