ブックマーク / hiko1985.hatenablog.com (9)

  • 宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ

    宮﨑駿による『不思議の国のアリス』(もしくは宮沢賢治の童話)とでもいうような、イマジネーションの破茶滅茶なまでの躍動。『千と千尋の神隠し』以降の作品に見られた傾向がさらに押し進み、ストーリー・テリングとしては、明らかに混乱している。しかし、それは宮﨑駿の“世界”に対する誠実な態度であるように思う。シンプルで明瞭なストーリーで語り切れるほど、この複雑で暗澹たる現代は生易しくないし、そもそも人間というのはそんなに簡単なものではない。たとえば、この映画における主人公の父親。彼にいい印象を持つ観客は多くないだろう。転校初日に車で学校に乗りつけたり、子どもの喧嘩に介入したりするさまなどは、まさにエーリッヒ・ケストナーが『飛ぶ教室』で書いた大人への批判がそのまま当てはまる。 どうしておとなはじぶんの子どものころをすっかり忘れてしまい、子どもたちにはときに悲しいことたみじなことだってあるということを、あ

    宮﨑駿『君たちはどう生きるか』 - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2023/07/18
  • 『あいのり:Asian Journey』の異様な魅力について - 青春ゾンビ

    『あいのり:Asian Journey』がおもしろい、呆れるほどにおもしろい。ここ数日でい入るようにして、Netflixで配信済の約20のエピソードを観終えてしまった。必要ないとは思いますが、『あいのり』という番組について念のため説明しておきます。「ラブワゴン」と呼ばれるピンクにカラーリングされた車に乗った男女7人が、様々な国を旅する。その中で繰り広げられる恋模様を見つめていく恋愛観察バラエティ。スタジオのタレントや視聴者は、そこで繰り広げられる出来事のすべてを俯瞰することができ、更にはメンバーの心情や過去のトラウマすら把握できてしまう。すべてのことが手にとるようにわかる。これはまさに神である。しかし、ラブワゴンのメンバーたちは、そんな神々の思考をいとも簡単に飛び越えてくる。突拍子もつかないような行動に打って出ては、わたしたちを驚かせるのだ。まさに筋書きのないドラマ。その行動に対して、「

    『あいのり:Asian Journey』の異様な魅力について - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2018/03/07
  • 野木亜紀子『アンナチュラル』1話 - 青春ゾンビ

    うおー。思わず声が出てしまうほどにおもしろいではありませんか。脚、役者、演出、編集、劇伴、衣装・・・あらゆる要素が90点越えを叩き出す超優等生の登場である。脚は野木亜紀子。『空飛ぶ広報室』(2013)、『重版出来!』(2016)、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)などで高い評価を得た、原作もののスペシャリストがついにオリジナル脚テレビドラマを手掛けるということで、期待値は高かったのですが、その予想の遥か上をいく完成度。ここ20年のテレビドラマの軌跡と叡智の結晶というような感触を覚える。そう考えると、”遺体解剖”という作品のモチーフはあまりにもはまっている。野木亜紀子は相当のテレビドラマフリークであると聞く。 テレビドラマの過去のアーカイブス(≒死体)を暴き出し、「このドラマは何故おもしろいのだろう?」というのを徹底的に究明し、未来へと繋げた成果が、この『アンナチュラル』なのであ

    野木亜紀子『アンナチュラル』1話 - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2018/01/15
    飯尾も褒めてあげて
  • 坂元裕二『カルテット』9話 - 青春ゾンビ

    家森:別府くん、この映画いつになったら面白くなるの? 真紀:宇宙・・・出てこないですね すずめ:幽霊はどこにいるんですか? 別府:だから そういうのを楽しむ映画なんです 『スターシップ 対 ゴースト』という、2話で登場した『人魚 対 半魚人』に劣らぬB級感を醸し出す映画を観ながらの4人の会話。まさにこの『カルテット』という作品についての自己言及のようである。面白くない人には当にずっと面白くないだろうな。アンチドラマで、登場人物はウダウダと動かず、物語展開はどこまでも不親切で、毎回フェイクな予告で視聴者を惑わしたりもする。8話のラストであんなにも視聴者を揺さぶった「真紀は早乙女真紀ではない」というサスペンスも、開始数分であっという間に処理されてしまう。「誰でもない女ですかね」とまで言われていた真紀の名も”ヤマモトアキコ”とあっさり明かされ、物の早乙女真紀はしっかり生きていて、あまつさえ

    坂元裕二『カルテット』9話 - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2017/03/16
    人生やり直さない、巻き戻さないってことで、真紀は戻ってこないってか。ちがうか。
  • 坂元裕二『カルテット』8話 - 青春ゾンビ

    またしても心震えるような傑作回である。8話に到達してもなお、坂元裕二のペンが絶好調だ。例えば、「お義母さん!(駆け寄って)野沢菜ふりかけ」というギャグのようなシークエンス1つとっても、真紀(松たか子)にハグを期待してかわされる鏡子(もたいまさこ)に、同じく別れ際にハグをすかされた幹生(宮藤官九郎)の顔がチラつく。こういった些細な書き込みによって、鏡子というキャラクターに「あぁ彼女は幹生の母であるのだな」という実感が宿るのだ。こういった人間の小さな営みを積み重ねることのできる細部の充足こそが、坂元裕二の真骨頂だろう。穴釣り、冷え冷えの便座、穴の空いたストッキングと、今話においても”ドーナッツホール”のモチーフが活き活きと登場し、物語に華を添える。ナポリタンとブラウス、ナポリタンと粉チーズ、と”赤”と”白”の混ざりあいが提示されたり、すずめ(満島ひかり)にチェロを教えたという”白い髭のおじいさ

    坂元裕二『カルテット』8話 - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2017/03/09
    今回もまた名レビュー
  • 坂元裕二『カルテット』5話 - 青春ゾンビ

    30分の放送を経て、やっとのことタイトルバックが現れる。その直前に披露されるのはカルテットによる実に幸福な路上演奏だ。1話のオープニングを思い出したい。路上でチェロを独奏する世吹すずめ(満島ひかり)に足を止めるものはいなかった。誰からも耳を傾けられることのなかったその音色が、彼女の運命共同体であるカルテットとして奏でられると、かくも”世の中”に浸透する。しかし、このシーンがほとんど夢のような鮮度でもって撮られているのが気になる。演奏するカルテットの表情、演奏に手拍子で称える人々。あまりの多幸感に、えもすれば覚めることへの切なさすら伴ってしまう、あの”夢”のような鮮度である。たまたま居合わせたノリのいい外人の煽りを端にして続々と道行く人が集まり、踊り出す。果たして、こんなことありえるだろうか?この過酷な現実においては、路上で無許可で演奏しようものなら、たちまち警察が現れるのではなかったか(3

    坂元裕二『カルテット』5話 - 青春ゾンビ
  • 坂元裕二『カルテット』4話 - 青春ゾンビ

    軽井沢の別荘にゴミが溜まっていく。なるほど、カルテットのメンバーは皆一様にして”捨てられない人”だ。たとえば、すずめ(満島ひかり)ならば同僚からの”出てけ”のメモを引き出しが一杯になるまで溜め続けていたし、巻(松たか子)は失踪した夫の下をそのままの形で保存する。別府(松田龍平)は長年の巻への片想い、家森(高橋一生)は別れた家族への想い、もしくは”アジフライにはソース”というこだわりを捨てられない。この捨てられなさは当然、”呪い”というイメージと結びついていることだろう。捨てられないゴミは腐臭を放ち、別荘の部屋に侵してくる。この”侵入”のイメージが4話のキ―である。ゴミに続いて、半田が、そして鏡子(の眼鏡)が、光太が、茶馬子が、次々に他者が別荘に侵入してくる。これまでカルテット以外に別荘に入ったのは、有朱だけ。しかし、それはすずめのみが在宅中の時であったはず。4人が揃った別荘に他者が侵入

    坂元裕二『カルテット』4話 - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2017/02/09
    この人のレビューをみることで2度、いやもう一回見直すので3度このドラマを楽しめる。
  • 坂元裕二『カルテット』3話 - 青春ゾンビ

    親子でしょ? という岩瀬純(前田旺志郎)の屈託のない問いかけが、世吹すずめ(満島ひかり)に纏わりつく”呪い”をギュっと締めつける。20年以上音信を絶っていた父の危篤。家族の死に目には駆けつけるのがホームドラマの定石、いや、この世界の”常識”のようなものだ。想いを寄せる別府司(松田龍平)との会話がフラッシュバックしたことだろう。 家族のお祝い事なんで帰ります “世界の別府ファミリー”から除外され苦しんでいるで別府すら、家族というフレーズの前にはひれ伏さざるえない。しかし、すずめにとって父はどうしても許すことのできない存在だ。最期の最期で全部をなかったことにして、”いい人”になろうとしている父が許せない。 怒られるかな…ダメかな 家族だから行かなきゃダメかな 行かなきゃ… その零れる小さな叫びを聞き、それまで「病院に行こう」の一点張りであった巻真紀(松たか子)が、ギュっと手を握り、「逃げよう」

    坂元裕二『カルテット』3話 - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2017/02/07
    ディテールすごい
  • 坂元裕二『カルテット』2話 - 青春ゾンビ

    言葉と気持ちは違うの! この家森諭高(高橋一生)の叫びがまさにこのドラマの見方を端的に示している。巻真紀(松たか子)が「わたし、弾けない」「無理です、わたし上手く弾けません」などと囁けば、次のカットでは必ずや活き活きとヴァイオリンを演奏する彼女の姿が見られる。喋る言葉が全てではない。人というのは、言葉とは裏腹、その仮面の下にはどんなものが蠢いているかわからない。ドーナッツの穴のように何かが欠けていて、思ったことを上手に言葉にできない不器用な大人達のラブサスペンスである作においてはなおのことだろう。当の”想い”は実に些細な身体の振動やその視線の先に、零れ落ちる。そんな坂元脚のミューズである満島ひかりの繊細な演技に割目せよ。別府司(松田龍平)の『人魚 対 半魚人』のDVDいじりが自分にも回ってくると思って差し出した手の動き(回ってくる前に巻が放り投げてしまう)、別府とベンチに並ぶ時に少し

    坂元裕二『カルテット』2話 - 青春ゾンビ
    jorira
    jorira 2017/02/07
  • 1