壁のような黒い津波が迫る中で、元郵便局長の熊川勝さん(85)は福島県浪江町の自宅2階で妻洋子さん=当時(72)=と抱き合っていた。「おい、もうだめだな。今までありがとうな」。恐ろしい光景を見せまいと頭を胸に寄せた。洋子さんは一瞬顔を上げて、うん、うんと小さくうなずいた。「お父さん、ありがとう」。そう聞こえた直後、濁流が家を突き上げた。一瞬気を失い、水中から顔を出すと、洋子さんの姿はなかった。(共同通信=坂野一郎)
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く