人によって子育ても仕事の関わり方も違う しかし、出産後は「なれない家事と、初めての育児に必死で、なかなかテーマの本質をとらえることができませんでした」と振り返る。2015年に上梓した『駅物語』(講談社)も、「作家には産休も育休もありませんから」と、膝の上に子どもを乗せて執筆した。編集者と(電話で)話しているときに、「子どもが泣き出して中断したこともあります」。 「私は結婚し、子どもが産まれ、否応なく家事の世界に放り込まれた人間で、もともと家事は苦手です。特に育児では、電車に乗ったらベビーカーをたためという空気があるなど、孤立無援の心理状態になることが多く、いったいどうやって仕事を続ければいいのかと、この小説に登場する礼子のような状況に陥ってしまって。客観的に書くことができず、怒りあふれる内容になってしまい、編集者から『愚痴になっていますよ』と指摘されました」 礼子は3歳の息子と生後半年の娘