政策思想としての経済学 世の中閉塞感に満ちあふれているせいか、最近非生産的で反知性的な言説ばかりが出回っています。そんな中、『ちょっと気になる政策思想―社会保障と関わる経済学の系譜』(権丈善一著、勁草書房)は、わくわくするような知的刺激を読者に与えてくれます。こういう知的で示唆に富む本に出合えるのは、実にうれしいことです。 経済学者は、「万能の理論」を求めて研究を続け、さまざまな「科学的手法」を駆使し、より精緻なモデル、より包括的な「経済理論」を構築してきました。 「厳密な科学的手法に依拠した学問」といわれる経済学ですが、真の社会「科学」たりうるか、という話になると、今なお大議論があるようです。 何となれば、経済学の世界には、複数の、それこそ学者の数だけの異なった経済「理論」が「同時並行」で存在しているからです。 自然科学の世界で学者の数だけ科学理論=真理が同時に存在する、などということは