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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (2)

  • 生徒会長から雲をもらった話 - 傘をひらいて、空を

    西脇くんは生徒会長でわたしは書記だった。中学生のころのことだ。わたしたちは素直ないい子で、クラスで推薦されて先生からもやってほしいと言われて全校生徒の前で選挙に出て生徒会をやっていた。わたしはピアノが得意で芸高の受験準備をしていた。西脇くんは進学校に行くつもりであるらしかった。わたしたちの中学校はどちらかといえばガラの悪い下町の公立校で、わたしたちはだから、相対的に優等生だった。 西脇くんは背の高いがっしりした男の子で、もじゃもじゃの髪を中学校の校則ぎりぎりまでのばしていた。黒縁のめがねをかけていて、そのめがねは上等のものだった。わたしは工芸に詳しくなかったけれど、それでもわかった。 そのめがね、いいね。わたしが言うと西脇くんはそれを外し、制服の裾でていねいに拭いて、見る、と言った。わたしはありがとうと言ってそれを見た。一見ふつうの黒いフレームのめがねだったけれど、流麗なフォルムをしていた

    生徒会長から雲をもらった話 - 傘をひらいて、空を
  • 傘をひらいて、空を

    仕事やめたんだあ。 友人が言う。皆が一斉に失業保険について質問する。もうやったか。自己都合退職でももらえる。手続きはこう、必要な書類はこう。 その場にいる全員が失業保険の申請をしたことがある、または申請方法を調べたことがあるのだから、就職氷河期世代とはせつないものである。資格職外資大学院入りなおし中途採用公務員、そんなのばかりである。 しかし、五十近くともなると職が落ち着き、転職がぐっと減った。だから仲間うちで仕事を辞めたという話が出るのは久しぶりなのである。 退職したという友人は、失業保険ねえ、とつぶやく。めんどくさい。 皆がいっせいに、もったいない、と言う。もらえもらえと言う。 しかし、よく考えればこの女には昔からそういうところがあるのだ。 彼女はふだんはパワフルだ。早くにできた子どもが二人いて、若くして配偶者を亡くし、親類や友人や、もちろん自分の能力と時間も含め、手持ちのリソースをフ

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    kofugu
    kofugu 2010/06/28
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