主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人桃谷一秀の上告趣意第1点は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であり、同第2点は、判例違反をいうが、所論引用の判例は、対話者の一方が相手方の同意を得ないで会話等を録音することが判示の事情の下では違法ではないとするにとどまり、所論のいうような趣旨まで判示したものではないから、前提を欠き、いずれも適法な上告理由に当たらない。 なお、所論にかんがみ、職権で判断すると、本件で証拠として取り調べられた録音テープは、被告人から詐欺の被害を受けたと考えた者が、被告人の説明内容に不審を抱き、後日の証拠とするため、被告人との会話を録音したものであるところ、このような場合に、一方の当事者が相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく、右録音テープの証拠能力を争う所論は、理由がない。