宗教は昔から統治の道具であった.政治権力が宗教を利用することもあれば,教団が権力を欲することもある.今日の成熟した宗教が,日常を淡々と守らせるように機能していることは確かだけれども,そのために宗教があるかというと微妙だ. 僕はむしろ宗教というのは,理不尽な世の中を分かった気になりたいとか,何かを信じたいといった欲望に深く根ざしていている気がする.科学も同様の欲望に根ざしているし,科学や近代国家,資本主義よりも宗教が先にあり,特に基督教がそれらの成立に深く関わっていることは周知の通りである. 日本も明治維新の折に近代法を持ち込んだり近代軍隊をつくる課程で,基督教に於ける神の機能に代わるものとして天皇制を再定義している.創作もかなり含まれるにせよ『象徴の設計 (文春文庫)』なんかを読むとその辺が生々しく描かれていて面白い. いまでは葬式仏教という言葉さえ死語になりつつある仏教でさえ昔は僧兵で武