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  • 仏紙が唸る「数学を世間に広める能力で、時枝正にかなう者はいない」 | 直感の逆を突き、驚かせ、人の未知への欲求を刺激する

    スタンフォード大学の教授で数学者の時枝正(ときえだ・ただし)は、「おもちゃ」を使って数学や物理の定理を解き明かす。スープ皿や木のレール、大きなコインを手に、「ショー」とも呼べそうな講義をいかにも楽しげに始めるその姿に、聴衆は一瞬にして心を惹きつけられるという。 数学者には二つのタイプがいるという──。一つは、チョークを握り黒板に向かう、理論派タイプ。もう一つは、フェルトペンとホワイトボードを使う、どちらかというと応用数学系の人である。 その伝でいうと、時枝正は第三のタイプの数学者である。しかもこの第三のタイプは、世界広しといえども彼一人だけの可能性がある。 時枝は仕事道具をどれも煎餅の空箱から取り出すのだが、箱は「すべて同じブランドのもの」なのだそうだ。たとえばその中身は、見かけはそっくりなのに、転がるものと転がらないものがある二つの不思議な構造物。ひもや輪ゴム、クリップの扱い方は、まるで

      仏紙が唸る「数学を世間に広める能力で、時枝正にかなう者はいない」 | 直感の逆を突き、驚かせ、人の未知への欲求を刺激する
    • わずか数分で聴衆の心を惹きつける“数学界のスーパースター”時枝正 | 2023年に世界が注目した日本人100

      仏紙「ル・モンド」は2023年5月、米スタンフォード大学の数学教授である時枝をこう評した。 「数学者は2つのグループに分けられがちだ。黒板にチョークで数式を書く理論派とプラスチックのシートにフェルトペンで書き込む応用数学者──しかし、日本の時枝正は第三のカテゴリーに属している」 ル・モンドは、パリのアンリ・ポアンカレ研究所での時枝の講義に注目する。彼は数学や物理学における古典的な内容を取り扱う際に、チョークではなく大きなコインを用意し、それで理論を視覚的に伝えているのだ。 時枝が注目される理由は、「わかりやすく数学を広める」という彼の特殊能力にある。シンプルな道具を使い、深淵な数学理論を親しみやすく解説するその手法は「手品のよう」とも形容される。 時枝の経歴もまた非常にユニークだ。もともと彼は画家としての将来を嘱望されるほど絵画に長けていた。日本を離れ、フランスに発ったのは14歳のころ。「

        わずか数分で聴衆の心を惹きつける“数学界のスーパースター”時枝正 | 2023年に世界が注目した日本人100
      • 「5人に1人」が処方される“恐怖のクスリ” | 金に目の眩んだ米製薬会社の「罪」を追う

        1996年、米国で、オピオイド系の麻薬性鎮痛薬「オキシコンチン」が発売された。その年、医学誌にはこんな広告が掲載されている。 2つのカップがスポットライトに照らされていて、片方には「朝8時」、もう一方には「夜8時」と書かれている。そして、キャッチコピーがひとつ。 「たった2錠で、痛みが和らぐ」──。 新薬で見た「地獄」 オキシコンチンが発売された当時、42歳の主婦だったエリザベス・キップは、とある米カンザス州カンザスシティの医師を訪れた。 彼女は14歳のときに乗馬大会の練習中に落馬して以来、ずっと腰痛に悩まされてきていた。それからというもの、短時間作用型の鎮痛剤をずっと服用してきたが、その日、医師に新しい薬を試してみないかと提案された。 オキシコンチンを12時間ごとに1錠服用する、というのが医師の指示だった。彼女は、その指示をしっかり守ったという。 「科学者気質だから、こういうことは厳格に

          「5人に1人」が処方される“恐怖のクスリ” | 金に目の眩んだ米製薬会社の「罪」を追う
        • エマニュエル・トッド「いま私たちは西洋の敗北を目の当たりにしている」 | 西側諸国は「何も見えていない」

          西洋の凋落を証明する「3つの要因」 ──2023年に弊紙から受けたインタビュー「第三次世界大戦はもう始まっている」が、今回の新著を書くきっかけになったと伺っています。すでに西洋は敗北を喫したとのことですが、まだ戦争は終わっていませんよね。 戦争は終わっていません。ただ、ウクライナの勝利もありえるといった類の幻想を抱く西側諸国はなくなりました。この本の執筆中は、それがまだそこまではっきり認識されていなかったのです。 昨年の夏の反転攻勢が失敗に終わり、米国をはじめとしたNATO諸国がウクライナに充分な量の兵器を供給できていなかった事態が露呈しました。いまでは米国防総省の見方も、私の見方と同じはずです。 西洋の敗北という現実に私の目が開かれたのは、次の三つの要因によるものでした。 第一の要因は、米国の産業力が劣弱だということです。米国のGDPにはでっちあげの部分があることが露わになりました。私は

            エマニュエル・トッド「いま私たちは西洋の敗北を目の当たりにしている」 | 西側諸国は「何も見えていない」
          • 経済学者は現行の社会モデルや租税モデルが“持続不可能”だと気づきはじめている | トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」

            トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」 経済学者は現行の社会モデルや租税モデルが“持続不可能”だと気づきはじめている ジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞した仏経済学者ガブリエル・ズックマン Photo: Ian C. Bates / The New York Times

              経済学者は現行の社会モデルや租税モデルが“持続不可能”だと気づきはじめている | トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」
            • 萩尾望都が仏紙に語る「漫画を描いて、母の抑圧からの解放を模索した」 | BLの礎を築いたアーティスト

              日本の漫画が人気なフランスだが、いわゆる少女漫画の作品はまだあまり知られていない。そんななか、フランスで1月末に開催されたアングレーム国際漫画祭に合わせ、大規模な萩尾望都回顧展がアングレーム市美術館で開催された(2024年3月17日まで)。これを受け、仏紙「ル・モンド」がオンラインで萩尾にインタビューをしている。 戦後日本の漫画界の立役者 萩尾望都の50年以上に及ぶ創作活動から生まれた作品の数々に目を通すと、痛感することがある。それは、フランスが世界有数の日本漫画消費国を自負するわりに、日本の漫画の受容においてすっぽりと抜け落ちてしまっている部分があることだ。 これは萩尾だけに限った話ではないが、フランスでは、日本の著名女性漫画家の作品の多くが出版されていないのだ。1972~76年に描かれた萩尾の初期の名作『ポーの一族』のフランス語版が出版されたのは、2023年に過ぎない。 1949年生ま

                萩尾望都が仏紙に語る「漫画を描いて、母の抑圧からの解放を模索した」 | BLの礎を築いたアーティスト
              • 日本の画期的カキ陸上養殖に仏紙「久米島で革命が起きている」 | その牡蠣は“あたらない”らしい…

                食中毒の心配なしに食べられる「あたらない牡蠣」の生産を目指し、沖縄県・久米島で開発が進む牡蠣の陸上養殖。日本と同じく生牡蠣を愛する国、フランスの「ル・モンド」紙特派員が久米島へ、世界初の試みの現場を訪ねた。 プレハブの事務所、いけすのある温室、謎めいたコンクリートの建物……。日本の南端にある小さな島、久米島の海辺に建てられたこの施設で、「牡蠣養殖の革命」が起こっている。 日本企業ゼネラル・オイスター(GO)の子会社ジーオー・ファーム(GO Farm)が、この地で深海の水を使い、「あたらない」牡蠣を陸上養殖しているのだ。 「エイス シー オイスター2.0(8TH SEA OYSTER 2.0)」の陸上養殖技術の完成には、10年の研究を要した。「8TH SEA」とは、古代からの伝説にある7つの海に加えて、第8の海=深海を意味する。大量の水を循環させ、適切な餌を与え、最適な温度管理をおこなう。こ

                  日本の画期的カキ陸上養殖に仏紙「久米島で革命が起きている」 | その牡蠣は“あたらない”らしい…
                • 角界“追放”の元力士が出場、米国流SUMOに現地メディアも驚き | エジプト出身の大砂嵐ら、試合前に舌戦も

                  エジプト出身の大砂嵐ら、試合前に舌戦も 角界“追放”の元力士が出場、米国流SUMOに現地メディアも驚き 2024年4月13日、米ニューヨークで開催された「ワールド・チャンピオンシップ・スモー(WCS)」で、トロフィーを掲げる大砂嵐とソスラン・ガグロエフら Photo: Roy Rochlin / Getty Images 米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで相撲の世界大会とされるスポーツイベントが開かれ、米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、観客はプロレスさながらのリングネームや相手選手への挑発も含む“米国流”の相撲を興味津々で楽しんだという。 同大会には、大相撲の元幕内で引退勧告の処分を受けたエジプト出身の大砂嵐や、大麻所持事件で日本相撲協会を解雇された元若ノ鵬とみられる選手も出場。それぞれ現地メディアの取材に応じている。 「礼儀正しい日本の相撲」と大違い 複数の現地メディ

                    角界“追放”の元力士が出場、米国流SUMOに現地メディアも驚き | エジプト出身の大砂嵐ら、試合前に舌戦も
                  • 国が衰退しているのは明らか─それでも日本人の「平和ボケ」はいまも健在 | どうしてそんなに無頓着?

                    進む少子高齢化、成長しないどころか後退しはじめた経済、そして頼りにならない政府──そんな危機迫る状況にもかかわらず、なぜか日本国民は落ち着いているようだ。その“不思議”を米紙「ニューヨーク・タイムズ」が解説する。 数十年間ほとんど成長をみなかった景気が、いまや後退段階に。減り続ける人口、昨年の出生数は過去最低。政治が硬直しているように思われるのは、事実上権力を握っているのが一党であり、どれほどスキャンダルまみれになろうと、不支持率が高まろうと、その状況に変わりがないからだ。 でも、ご心配なく。ここは日本、悪い情報はすべて相対的なものだ。 まあ見てみよう。日本みたいな現状ならば、社会的荒廃の兆候、たとえばゴミの散乱、路面の穴ぼこ、ピケライン(ストやデモの際に張る監視線)等々を想像するだろうが、それはまず見当たらない。安定ぶりとまとまりの良さはいまも驚くほどで、破滅が差し迫っている感じはほとん

                      国が衰退しているのは明らか─それでも日本人の「平和ボケ」はいまも健在 | どうしてそんなに無頓着?
                    • 100年前に“素人”経済学者が提案した「腐る貨幣」が再注目されている | 「未来の社会はマルクスよりゲゼルから学ぶだろう」

                      そもそもお金とは何なのか? お金の歴史は、経済学者ジェイコブ・ゴールドスタインが著書『貨幣 その誕生の真実』 (未邦訳)のなかで述べるとおり、「義務の概念と気まぐれな論理」から成り立っている。お金が発明される前、人々は物々交換に頼っていたがこれは非常に不便なシステムだった。ゴールドスタインいわく、「お互いの需要が一致」しなければ、交換は成り立たないからだ。私が小麦を持っていて、あなたが肉を持っているとしよう。私たちが交換を成立させるためには、私がちょうど肉を求めていて、あなたもちょうど小麦を求めていなくてはならない。これはこのうえなく効率が悪い。 価値と価値の交換は、世界中のあらゆる文化において存在する。たとえば結婚、殺人罪に対する刑罰、そして生贄(いけにえ)。こうした交換で使われたのは、子安貝、マッコウクジラの歯、長い牙を持つブタなどだ。これらの品物は、お金の持つ2つの大きな役割を果たし

                        100年前に“素人”経済学者が提案した「腐る貨幣」が再注目されている | 「未来の社会はマルクスよりゲゼルから学ぶだろう」
                      • 日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

                        温泉の街・別府の観光名所「血の池地獄」 Photo by Chang W. Lee / The New York Times 日本には膨大な地熱エネルギーが眠っているが、不可解なことに、その豊富な資源はまったく生かされていない。なぜ安価でクリーンな純国産エネルギーを開発しないのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が答えを探ってみると、日本ならではの葛藤が見えてきた。 【画像】日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」 総発電量のわずか0.3%日本を旅する人々に愛される保養地といえば、山あいや風光明媚な沿岸部に位置する温泉リゾートだ。国内に何千ヵ所もある温泉地のなかには、何世紀にもわたって観光客でにぎわってきたところもある。 そうした温泉地のすべてを支えているのが、日本の豊富な地熱エネルギーだ。実際、日本の地下には膨大な地熱エネルギーが眠っており、発電に利用されれば、国内の石炭・ガス火力発電や原

                          日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース
                        • 同性婚が日本で認められない背景にあった、保守政治家と「神道政治連盟」の強い関係 | 宗教右派に依存してきた自民党との強い関係

                          神道系政治団体の政治的影響力 何百万人もの日本人にとって、神道は精神的修行というより文化的な修行だ。毎年正月を迎えると、多くの人が神社に参拝し、新しい年の幸運を祈る。また、恋愛や受験、就職がうまくいくように祈願する人も多い。 このような儀式は、決まった信条の下におこなわれているわけではない。土着の宗教である神道には、公式な教義も経典もない。一方、日本では一般的にほとんど知られていないものの、全国8万社の神社を包括する神社本庁の関係団体「神道政治連盟(神政連)」が、同性愛者やトランスジェンダーの権利などに対する保守思想の声を政治家のあいだに広めようとしてきた。 日本はG7の国のなかで唯一同性婚を合法化していない。2023年5月のG7広島サミットに向け、米国などの駐日大使らは、性的少数者の差別反対と権利擁護を盛り込んだ法整備を日本政府に促してきた。世論調査によると、日本では同性婚が大多数に支持

                            同性婚が日本で認められない背景にあった、保守政治家と「神道政治連盟」の強い関係 | 宗教右派に依存してきた自民党との強い関係
                          • 古代ローマ人は「去勢された永遠の少年」をどう見ていたのか? | 彼か彼女か、それとも…

                            なぜ古代世界には「去勢」の風習があったのか? 去勢された者はどんな存在と見られていたのか? 古代ローマ世界での場合を中心に、イスラエル紙「ハアレツ」の考古学記者が深掘りする。 世界で初めて故意になされた雄の去勢が何だったかは、永久に不明のままだろう。現代の歴史家たちは、去勢は畜産から始まったと示唆している。それは、望ましくない繁殖を減らし、より穏やかで、より肥えた牛や豚を生み出すためだったというのだ。 人間の男性の去勢はどうやら、罰の一種として最初に導入されたようだ。古代の史料は、誰が最初にそれを始めたのかを明快に語っている。これほど倒錯したことを思いつけるのは、女しかいないだろうと──。 ギリシャの歴史家ヘラニコス(前5世紀末に著述活動)は、アケメネス朝ペルシア(前550〜前330年)の王妃アトッサ(在位前520〜前486年)が最初の宦官を生み出したとしている。古代ローマ後期、ローマの住

                              古代ローマ人は「去勢された永遠の少年」をどう見ていたのか? | 彼か彼女か、それとも…
                            • 独経済学者が解説 日本経済を世界4位に転落させた「自滅行為」とは | 政府も企業も自ら「衰退」を選んだ

                              低成長を続ける日本経済が回復する兆しはなかなか見えず、世界3位を維持してきた名目GDPも2024年2月にドイツに抜かれた。欧州議会の顧問などを務める経済学者ダニエル・グローは日本経済低迷の原因を独自に分析し、欧州諸国に「同じ失敗をするな」と警鐘を鳴らす。 日本はもっと、よくなっていいはずだ。 労働者の教育レベルは高く、かつよく訓練されているし、社会全体としての投資額は多くの先進諸国を上回っている。たとえば日本における研究開発費はGDPの3.3%を占め、最近まで米国よりも高かった。にもかかわらず、日本経済は相対的に低迷しつづけている。 ドイツ人経済学者で欧州政策策定協会の所長でもあるダニエル・グロー。欧州各国の政府や中央銀行の顧問を経て、現在は欧州議会の顧問を務める。米シカゴ大学で経済学の博士号を取得。専門は金融・財政政策、為替レート、気候変動など Photo: Puramyun31 / W

                                独経済学者が解説 日本経済を世界4位に転落させた「自滅行為」とは | 政府も企業も自ら「衰退」を選んだ
                              • 「ジャニーズ事務所の記者会見」を海外メディアはこう報じた | 東山新社長の疑惑にも触れて…

                                9月7日に行われたジャニーズ事務所の記者会見の模様は、海外メディアでも広く報じられている。 なかでも3月にドキュメンタリー番組で性加害の事実を暴いたBBCは、新社長に就任した東山紀之の過去の疑惑についても報道。記者の「『俺のソーセージを食え』と指示したのは事実か」という質問に対し、東山は「記憶をたどっても本当に覚えていない。したかもしれないし、してないかもしれない」と答えたと報じた。 英紙「ガーディアン」はメディアの問題点を指摘。「喜多川は何年にもわたって性的虐待疑惑があったが、若者たちを惹きつける事務所のスターたちとの接点を失うことを恐れた大手新聞社やテレビ局はその疑惑を無視した」と報じた。 また、米紙「ニューヨーク・タイムズ」はジャニーズ事務所の会見を受けて同日に開かれた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の様子も報道。中村一也氏の「ジャニーズ事務所が会見したことは夢のような感じに思いま

                                  「ジャニーズ事務所の記者会見」を海外メディアはこう報じた | 東山新社長の疑惑にも触れて…
                                • 進化心理学者ロビン・ダンバーが教える友情の秘密─ポイントは「七本柱」と「30分ルール」 | 友達の数は何人が理想的? 男の友情と女の友情は違うの?

                                  ロビン・ダンバーは、英オックスフォード大学の進化生物学の名誉教授であり、人類学者でもある。彼は、一人の人間が持てる友達の数は150人が最大だという「ダンバー数」の提唱者として世界的に有名だ。また、飲酒やゴシップが人間関係の円滑化に決定的な役割を果たすことを示した研究でも知られる。 ダンバーの著書『なぜ私たちは友だちをつくるのか: 進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係』は、友情研究の名著である。一般人にもわかりやすく、この数十年の研究結果が紹介されている。そんな彼に「会話が成立する最大人数は4人」「友情の七本柱」や「30分ルール」といった話に加えて、男の友情と女の友情の違いといった、最近はタブーになりつつある性差の話についても語ってもらった。 友達の数が多いことは、禁煙と同じくらい健康に良い ──友達がいると幸福度が上がりますが、それだけでなく健康や寿命にもいい影響が出るそうですね

                                    進化心理学者ロビン・ダンバーが教える友情の秘密─ポイントは「七本柱」と「30分ルール」 | 友達の数は何人が理想的? 男の友情と女の友情は違うの?
                                  • 『限りある時間の使い方』の著者に聞く「心が軽くなる時間管理術」 | 「目的のある人生」の落とし穴って?

                                    タイムマネジメントに関するアドバイスは世に溢れているが、実際にはストイックすぎて継続不可能なものも多い。自分の心と体にとって、本当に健康的なタイムマネジメントとはどんなものなのか? ベストセラー『限りある時間の使い方』の著者オリバー・バークマンに聞いた。 いままでと同じやり方じゃ、どうせうまくいかない 終わりのないToDoリストに悩んでいないだろうか? そんなとき、LinkedInや自己啓発系ポッドキャストでよくある解決策は、効率を上げろというものだ。 朝は5時に起きる。スケジュールは15分刻みで管理し、メールはこまめにすぐ返信する。アイアンマンレースに向けたトレーニングをしながら、中国語の勉強もする。自己管理を徹底して、たくさんの会議や人脈作りのコーヒータイムを詰め込み、家族との時間も大切にする。 だが、みんながこれに納得するわけではない。「こんなふうに時間との戦いに勝つことはできません

                                      『限りある時間の使い方』の著者に聞く「心が軽くなる時間管理術」 | 「目的のある人生」の落とし穴って?
                                    • 村上隆が仏紙に語る「僕が楽観主義なのは、記憶喪失のせいです」 | 「オタクだった少年時代」から「AIへの思い」まで

                                      長い髪にあご髭、ジョンレノン風の丸眼鏡……村上隆(61)は、永遠の美大生のような風貌をしている。この日本の現代美術のスターは、パリ近郊の街ル・ブルジェのガゴシアン・ギャラリーで、長さ24メートル、高さ5メートルの大作を展示している。展示初日のレセプションでは、若い頃にオタクだった彼らしく、NFT(非代替性トークン)が無料で配られた。 「楽観的になることを妨げているのは過去ですから」 ──2006年、オークションハウスのクリスティーズは、あなたを世界で6番目に高額なアーティストと格付けしました。いまはどうなっているのでしょうか。 それは知りませんでした。で、いまは誰が一番高額なアーティストなんでしょう? 奈良美智さんかな……。2021年のトップがジェフ・クーンズで、次がデイヴィッド・ホックニーですか。それも知りませんでした。この手の格付けはあまり重要とは思えなくて、注目していないんです。 ─

                                        村上隆が仏紙に語る「僕が楽観主義なのは、記憶喪失のせいです」 | 「オタクだった少年時代」から「AIへの思い」まで
                                      • 日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」 世界3位の地熱資源大国だが… | なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?

                                        日本には膨大な地熱エネルギーが眠っているが、不可解なことに、その豊富な資源はまったく生かされていない。なぜ安価でクリーンな純国産エネルギーを開発しないのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が答えを探ってみると、日本ならではの葛藤が見えてきた。 総発電量のわずか0.3% 日本を旅する人々に愛される保養地といえば、山あいや風光明媚な沿岸部に位置する温泉リゾートだ。国内に何千ヵ所もある温泉地のなかには、何世紀にもわたって観光客でにぎわってきたところもある。 そうした温泉地のすべてを支えているのが、日本の豊富な地熱エネルギーだ。実際、日本の地下には膨大な地熱エネルギーが眠っており、発電に利用されれば、国内の石炭・ガス火力発電や原子力発電に代わる重要な役割を果たす可能性がある。 だが、地熱エネルギーの普及を目指す日本の野望は何十年もの間、驚くほど強力な温泉地の抵抗に阻まれている。 福島県の山中にたたず

                                          日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」 世界3位の地熱資源大国だが… | なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?
                                        • 理論物理学者カルロ・ロヴェッリが語る、直感に反する「現実」の存在 | その現実は、実は間違いかもしれない

                                          その人が書く本は、世界中の言語に翻訳され、物理学関連の書籍としては「異例の」売り上げを記録している。新著『ホワイトホール』(未邦訳)もそんな異例の一冊になるのだろうか。仏誌「ロプス」に掲載された、その人、理論物理学者カルロ・ロヴェッリへのインタビューを読めば、邦訳版の発売が待ち遠しくなってくる。 才気あふれる物理学者とは、カルロ・ロヴェッリのような人のことを言うのだろう。この人の本を読んだり、講義を聴いたりすると、まるで天才がこちらにも感染したかのように、一瞬にしてすべてが明快になるのである。それはロヴェッリによる科学の解説が「俗受け」を狙ったものだからではない。むしろ、彼は思考の道筋を示し、対立する見解も紹介する。ときにはそういったことが人生においてどんな意味を持つのかについても語る。 ロヴェッリは、もともと理論家だった。「ループ量子重力理論」の提唱者の一人として知られる。ループ量子重力

                                            理論物理学者カルロ・ロヴェッリが語る、直感に反する「現実」の存在 | その現実は、実は間違いかもしれない
                                          • 「捕鯨再開」の権利を求めて─アメリカ先住民・マカ族「捕鯨」の戦い | 大切な伝統を守るため

                                            伝統を取り戻すために コククジラは毎冬、夏のあいだに餌場としているアラスカから、出産のためにメキシコのバハ・カリフォルニア半島へと約6000マイルの旅を始める。 そんなコククジラをアメリカ先住民のマカ族が捕鯨しても良いか否かが、ワシントン州の行政裁判で決まるかもしれない。 マカ族はワシントン州オリンピック半島のネア・ベイ地区に暮らしている。彼らは伝統的な捕鯨を再開し、今後10年間で20頭まで捕獲する権利を得るべく、アメリカ海洋大気庁(NOAA)に対して「海産哺乳動物保護法」の免除を求めているのだ。 政府はかつて「1855年条約」において、マカ族に捕鯨権を付与している。この条約の存在もあり、マカ族の要求は連邦政府と世界中の「部族共同体」から支持されているのだ。 1855年、当時のワシントン州知事アイザック・スティーブンスは、3万ドルと30万エーカーの土地の譲渡を交換条件に、マカ族に対して「魚

                                              「捕鯨再開」の権利を求めて─アメリカ先住民・マカ族「捕鯨」の戦い | 大切な伝統を守るため
                                            • 仏ノーベル物理学者アラン・アスペ「新技術を支える基礎研究を重視せよ」 | 若者の科学離れが進む現代への懸念

                                              「量子もつれ」の研究で2022年にノーベル物理学賞を共同受賞したフランスの物理学者アラン・アスペ。2つ以上の粒子が遠く離れていても完全に関連するというこの現象が明らかになったことで情報科学や暗号理論の研究が大きく進展し、新たな知識や技術が生まれた。 アスペは長年、学生に物理学の面白さを伝え、その教え子には研究者や起業家が多い。いまも若者の科学への関心を高めようとする彼に、仏誌「ル・ポワン」が、科学の力を保つために何ができるのかを聞いた。 技術革新のもとになっている基礎研究 ──何を原動力に研究に取り組まれているのですか。 物理学の研究は抽象的と思われがちですが、実は日々の生活に大きな影響を与えています。 たとえばMRIとして知られる核磁気共鳴画像法を使うと、体に傷をつけずに、人体の内部を見られます。いまでこそ、この装置はどこの病院でも使われていますが、もとは物理学者が抽象的に考え出したもの

                                                仏ノーベル物理学者アラン・アスペ「新技術を支える基礎研究を重視せよ」 | 若者の科学離れが進む現代への懸念
                                              • ベーシック・インカムは実現可能? もし実現可能ならするべき? | 経済学者ガブリエル・ズックマンが答えます

                                                ガブリエル・ズックマンの答え 同じ「ベーシック・インカム」という言葉を使っていても、二つの大きく異なるものを指しているということがあります。第一のベーシック・インカムは、保守派が提唱することが多いものですが、これは社会保障制度を通じた所得再配分の大部分を廃止し、その代わりにベーシック・インカムという単一制度で、国民全員に一律で現金を給付するという構想です。 それに対し、もう一つのベーシック・インカムは、革新派が提唱することが多いものですが、これは既存の社会保障制度を通じた所得再配分を維持しながら、それに加えて国民全員に現金を支給するというものです。累進的な所得税を財源とするので、高所得者はベーシック・インカムのために支払う額のほうが、ベーシック・インカムで受け取る額よりも大きくなります。逆に低所得者は、支払う額よりも受け取る額のほうが大きくなります。 後者のベーシック・インカムが実現可能で

                                                  ベーシック・インカムは実現可能? もし実現可能ならするべき? | 経済学者ガブリエル・ズックマンが答えます
                                                • 「60歳を超えると人の性格は再び変化しはじめる」 その理由とは? | 高齢になってから性格を再形成

                                                  「人は変わらない」とも言われているが、最近の研究では、人はおおよそ60歳を超えた頃から再び性格が変化しはじめることが示唆されている。 その要因には認知障害などの脳の変化もある。だが、そのような症状がない場合の「別の要因」が注目を集めている。 研究によれば、人は高齢になるにつれ、経験に対するオープンさや「社会的活力」と呼ばれる外向性が減少する傾向があるという。そして、特に人生の終わりに近づくと、神経症が増加する傾向もあるという。 この理由については、いくつかの理論が存在し、可能性のひとつには、退職、子供の巣立ち、伴侶に先立たれるなど、高齢期に起こりやすい特定のライフイベントによって性格が形成されるというものがある。 ただこれについては、仮に「別れ」を経験したとしても、その感じ方は人によってさまざまであり、一概に前述のような外交性の減少を説明するものとは言えないとの指摘もある。それよりも、健康

                                                    「60歳を超えると人の性格は再び変化しはじめる」 その理由とは? | 高齢になってから性格を再形成 
                                                  • 足し算引き算もできる? ニワトリについてケッコー考えてみた | 肉は旨いし、長い付き合いだし、キチンとね

                                                    神のような存在だったニワトリ ニワトリを鍋に入れる──いまから2000年以上前、現在の東イングランドにある地に移住した人々もしていた、なんの変哲もない行為だ。 だが特筆すべきは、彼らがニワトリを煮るなり焼くなりして食していた、わけではないということだ。 リンカンシャーの現地をのちに発掘した考古学者たちは、無傷のニワトリの骸骨を発見し、これは鉄器時代の人々によって丁寧に埋葬されたものだと結論づけた。それはおそらく神々への供えものだった、あるいはニワトリ自体が神のような存在と見られていた、このどちらかだったのだろう。 このアジア原産の野鶏の子孫がブリテン島にいたのはけっきょく数百年間だけだったが、ニワトリはやかましく、色鮮やかで、珍しい存在だった。 ニワトリは、エキゾチックで、特別な鳥だったのだ。 今日、ヒトとニワトリとの関係はまったくもって様変わりしてしまった。200億羽ものニワトリが世界中

                                                      足し算引き算もできる? ニワトリについてケッコー考えてみた | 肉は旨いし、長い付き合いだし、キチンとね
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