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cruel.hatenablog.com
なんかこんなのを作ってしまったので、読みたい人は読みなさい。何かお気づきの点があればご教示たもれ……と思ったら商業出版の話が出たので、無料公開は停止。 なお、ウクライナ侵攻のときの演説が変だという検討については、第4期のまとめp.222- と、その対比で第3期のまとめp.153-をお読みください。 プーチン重要論説集 (星海社新書) 作者:ウラジミール・プーチン星海社Amazon 例によって、デスクトップ環境ではしおり/目次リンクがめちゃくちゃになるので。Adobeに上げてpdf化した。昨日よりは便利になったかな?
ご存じかもしれないけれど、ぼくはエドワード・スノーデンの自伝を訳した。 スノーデン 独白 消せない記録 作者:エドワード・スノーデン河出書房新社Amazon それなりにおもしろい伝記ではある。まあその後ちょっとあまり楽しくないできごともあったりして、がんばって宣伝しようという気持が萎えてしまった部分はある。しかし彼がそれなりの正義感を持ってNSAによる大量監視システムを暴露したのはまちがいないし、個人的にはそれが大変勇敢で立派なことだと思っている。 ただこの伝記の中で、彼はずっとロシアとの接触が一切なかったと述べている。ロシアに留まったのは、飛行機に乗っているときにパスポートをアメリカが取り消して、身動き取れなくなっただけだ。だからそれはまったくの偶然にすぎない。その行き場を失ったシェレメーチエヴォ国際空港でも、ロシアとは一切関わりを持たず、FSBが接触してきたときもそれをかたくなに拒絶し
先日、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』の1995年あとがきや、新装版への2003年序文を訳した。 訳しても読んだ人は、たぶんぼく自身以外はあまりいないと思う。長ったらしいし、テメーらみんな、度しがたい怠けものだから。が、読んだ人なら (そしてもちろんあの『オリエンタリズム』をまともに読んだ人なら) その中でこれまで「オリエンタリスト/東洋学者」どもが、無知と偏見まみれでイスラム世界を歪めまくり、実態とは似ても似つかないものに仕立て上げ、自分たちのイデオロギーにあうように歪曲して、植民地支配と軍事支配に都合良く描きだして列強の世界収奪と支配に奉仕してきた様子が描かれており、そしてその代表例としてバーナード・ルイスがやり玉にあがっているのをご存じだろう。特に、1995年あとがきでは、ルイスが『オリエンタリズム』やそれが引き起こした風潮に批判を述べた Islam and the Wes
Executive Summary 1999年大晦日、プーチンの大統領代行就任直前に発表された、ロシアの今後の政策についての概要文書。ソ連崩壊とその後改革による経済的な低迷と社会的な混乱を描き、自由と民主主義に基づきつつも、ロシア的な国家重視を維持した体制の強化を進め、競争と市場原理と産業高度化に基づく経済発展と生活水準の向上を目指し、そのために国の仕組みと行政府を強化しつつ、それを監視する市民社会も重視することが謳われている。 自由と民主主義を重視している部分を重視するか、国家重視の部分を重視するかで如何様にも読める玉虫色の文書だが、出発点でのプーチンは、かなりバランスの取れた考え方をしていたことはうかがえる。 プーチンシリーズで、ついでながら1999年大晦日にプーチンがロシア大統領代行に就任する直前に発表した、政策方針の文書も訳したので、座興でアップロードしておく。 1999年大晦日、
Executive Summary 2007年のミュンヘン安全保障政策会議でウラジーミル・プーチンが、それまでの西側への順応的な態度をかなぐりすてて、アメリカをおおっぴらに罵倒し、もうおまえらの一極世界は終わりで、アメリカなんかもうオワコン、オレはもう好きにするぜ、と宣言した有名な演説。プーチン&ロシアの一つの転回点とも言われる。 「冷戦後の世界はアメリカ中⼼の⼀極世界に向かっていたが、これはアメリカが⾃分の勝 ⼿な要求を、しばしば武⼒により世界に押しつけるものとなっている。だがGDPでもそ の他の⾯でも今後は多極世界へと向かう。アメリカはNATO拡大やミサイルで一方的にロシアをいじめるばかりで許せん。もっと対等に扱え。宇宙軍拡禁⽌や核不拡散の徹底、⺠⽣⽤原⼦⼒の核燃料 サイクル確⽴、市場開放と平等な経済関係などで協⼒をすすめ、オレたちに発言力を認めろ」との論旨。 ウラジーミル・プーチンが
ケインズ『戦費調達の方法』(1940) をやったついでに、全集でセット販売されてる『繁栄の手段』(1933) もやってしまったけど、全部書いてあるじゃん。これだけ読んで理解すればもう十分でしょう。「金融緩和だけで云々」「波及経路が」とか聞いた風な口きくまでもなく終わりじゃん。すべて書いてあるではないの。 ケインズ『繁栄の手段』 (1933) pdf 470kB 能書きはまた後で書くが。 飛行機の搭乗直前に急いであげてアップしたので まちがいや誤変換あると思うので、気がついたらご教示ください!
表題の通り、ケインズ『戦費調達の方法』(これまでの訳題は「戦費調達論」だが、だれがお金くれるわけでもなし、趣味でやってるんだから題名も趣味で決める) の翻訳。 以前、ケインズの『説得論集』をやった。 cruel.hatenablog.com ケインズ全集では、この説得論集の巻に戦費調達論も含まれているので、そのときについでにやろうかと思って手をつけていたのだ。が、急ぐこともあるまいと思って他のものに目移りして放置してあった。 それがちょうど戦争も始まったことで、日本もお金を出すつもりが、増税で対応するとかバカなこと言ってる政府が出てきたし、ツイッターで何か話題にした人も出たし、やっちゃいましょう、ということで。 J. M. ケインズ『戦費調達の方法』(1940)(pdf, 700kBほど. 仕掛かり中、本文は完了。2023年1月中には終わるはず) 考えて見れば、エドワード・サイードなんかや
訳者注:邦訳は、文庫版も1993年に出ており、この後書きは含まれていない。どっかの雑誌のサイード特集や独自編集の雑文集とかで訳されたことがあるかもしれないが、そこまで調べていない。が、あまりに長いので、これが全文そのまま雑誌などで出る可能性はあまりないと思う。『オリエンタリズム』が今後、何かの機会で新装版などが出たら可能性はあるかな。もとにしたのは原著のKindle版 (をスクショしてOCRしたものだがKindle版自体も見ている) なおウェブで読むのはいやという人のために https://cruel.org/books/SaidOrientalism/orientalism1995postnote.pdf (460 KB) オリエンタリズム 上 (平凡社ライブラリー) 作者:エドワード・W. サイード平凡社Amazon サイード『オリエンタリズム』1995年あとがき エドワード・サイード
『オリエンタリズム』25周年記念版版序文 (2003) エドワード・サイード 山形浩生訳 Orientalism (Penguin Modern Classics) 作者:Said, Edward W.Penguin Books Ltd (UK)Amazon 9年前の1994年春、私は『オリエンタリズム』のあとがきを書いた。これは自分で言った/言わなかったつもりのことを明確にしつつ、1978年に本書が出てから生じた多くの議論だけでなく、「オリエント」の表象についての作品が、ますますまちがった紹介や誤解にさらされる各種のやりかたについても強調した文章だった。同じ事が現在も見られるというのを、自分が苛立たしいと思うよりむしろ皮肉だと思ってしまうのは、歳を取ったしるしでもあるし、同時に年配となる道のりを通常は彩る、期待や教育的な熱意の必然的な衰えのしるしでもある。我が知的、政治的、個人的な導師2
しばらく前に、モンティ・ホール問題がよくわかんねえ、というエントリを書いた。 cruel.hatenablog.com 黒木さんに言わせると、こんな初歩的な代物がそもそもわかんねえこと自体が情けねーよ、ということらしく、すみませんすみません。 #統計 どんなに素晴らしい仕事(研究)をしていても、モンティ・ホール問題を取るに足らない自明でつまらない問題とみなさずに、理解力が足りない人たちを基準にして、「難しい問題」とみなしたり、さらに酷いことに「パラドックス」とみなす人による解説は信用し切れない。— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) December 6, 2022 とはいえ、これに応えていろんな人がコメント欄を含めていろんなところで説明してくれた。説明なしに「そんなのもわかんないのか、山形バカだねー」みたいなツイートがいくつかあって、それはそれでムカついたんだが、まあ
プーチンが、ウクライナ侵略の9ヶ月前に発表した論文、というかアジ文。ウクライナはロシアと一体、という文章のように題名だけ見ると思えるが、実際にはウクライナは常にロシアの庇護下にあったし、ロシアが守ってやらないとやってけないぜ、ついでにドンバスとかクリミアとか、ロシア系が多くてみんなロシアになびいているのにウクライナ政府がそれを邪魔してネオナチ国粋主義者が虐殺していて、西側がそれを支援していてけしからん、という文章。 2022年のウクライナ侵略におけるプーチンの考え方を示す資料としてときどき言及されるが、きちんとした訳をみたことがないので (きちんとしていない、機械翻訳以下の訳が東京都市大名誉教授によるものとして存在するようだ) 自分でやりました。翻訳は、クレムリンの公式英訳に基づいている. ロシア語との齟齬があるかもしれないが、チェックしていない. 付記:ロシア大使館の翻訳がすでにあった。
10月24日に、Change to Hopeというイベントがあって、スティーブン・ピンカーが来日して基調講演をする……予定だったのがコロナで来れずオンラインになってしまったんだが、ぼくがその司会役、というか質問係をおおせつかったのでした。 www.change-to-hope.com で、これは新著『人はどこまで合理的か』をベースに最近のネタを散りばめる講演で、ぼくも付け焼き刃でざっと読んでみました。基本は、人はいろいろ数学パズルみたいなものにごまかされて合理性を発揮しにくくなる部分があるのだ、という話や経済学的な合理性の話などで、あとは合理性がいかにしてこれまでの人類の発展を率いてきたか、これからも理性をちゃんと使ってがんばらないといけないよ、というもの。一般向けの講義をまとめたものだそうで、人によっては知ってる話ばかりでつまらないかもしれない。まったく知らなかった目新しい話はない。類書
やりかけていたこれ、本編は全部終わったー。 cruel.hatenablog.com 本体はこれです。 https://genpaku.org/TimeontheCross/timeonthecross_j.pdf なんだかこないだから、Word--> pdfで目次のリンクが全部ずれる。またしおりもちゃんと作ってくれなくなった。だからpdfにちょっと不具合はあるけど、大目に見てくださいな。 補遺に関しては、もともとは全部やるつもりだったが、手法解説の部分はとてもテクニカルになっちまうんだよなー。それをやるのはあまりに手間なので、研究の心得を書いた補遺Aだけは、訳して本文に加えた。その他、手法や統計処理その他に関するテクニカルな補遺は、原文を見てくださいな。ここにある。 https://genpaku.org/TimeontheCross/TIME%20ON%20THE%20CROSSsup
2022年ノーベル経済学賞は、バーナンキ、ダイアモンド、ダイブヴィグ (ディブヴィグ? 字面でしか見たことないので読みをよく知らない) に決定した。金融・銀行系ね。 そういえば、むかしの自分の予想でもバーナンキは入れていたなあ、と思って昔のエントリーを見ると、ほうほう、なかなかよいではないの。2020年でバーナンキは次点扱い。2017年についての表を見ると、その後六年で3人は含まれている。まあ15人もあげてるから、ヘタな鉄砲もナントやらだろう、と言われればそれまでなんだけどね。が、そんなに悪くもないんじゃないか。ジャンル的にはかなり当てていると一応は自画自賛。 cruel.hatenablog.com でも表を見ると、もう他界した人も結構いる。ジョルゲンソンは今年他界してるのか……2020年にお目にかかったときにはシャキシャキだったのになあ。その他、すでに取った人、すでに他界した人、いろい
ぼくが初めて訳した商業出版は、H・R・ギーガーの画集だったんだけれど、それを出したトレヴィルという西武系の出版社の編集者川合さん (というか彼一人しかいなかった) が「じゃあ是非これもやってください!」と言って翻訳させられたのが、ティモシー・リアリーの『神経政治学』だった。 神経政治学―人類変異の社会生物学 作者:ティモシー・リアリー,ロバート・アントン・ウィルソン,ジョージ・A・クープマントレヴィルAmazon ドラッグやったら脳の回路が活性化して新しい世界が見えるぜ、それでみんなニュータイプになって宇宙にさいくだ! という、まあまぬけもいいところな本だったが、一応張り切ってやって、ついでにこれで大学院の学費は自分で稼げるぜ、親の世話にはならないぜ、と大見得を切ったんだが、なんと大学院に入る前に仕上げたのに、実際に本が出てお金が入ってくるまでに2年以上かかった。別に訳文にはぜんぜん文句は
ポランニーで、ダホメの輸出側の奴隷事情を見ました。 cruel.hatenablog.com それで奴隷に興味が出てフォーゲルの『十字架の時:アメリカ奴隷制の経済学』を読み始め、訳し始めてしまいました。まだ前半だけ。もちろん、フォーゲルはずいぶん長生きしたし、翻訳権は当分フリーにならないので、みなさんは読んではいけません。以下にあるけれど、見ないように。 フォーゲル&エンガーマン『十字架の時:アメリカ黒人奴隷制の経済学』(まだ前半だけ、pdf18MB) なぜか知らないが、目次のハイパーリンクがずれていて、きちんと当該の章にジャンプしなくなっている。もちろん、みなさんはご覧にならないでしょうから関係ないけれど。あと、Excelで作り直したグラフの相当分は、目分量で原著のグラフから数字を読み取って再現したものなので、完全に厳密ではありません。プラマイ3%くらいの誤差はあるはず。 著作権を遵守す
Executive Summary 教養というと、実学に関係ないステータス財なのか、それとも実学にも役立つべきベースなのか、みたいな議論が起こる。だがその区別がない場合もあるし、それが理想かもしれないという気もする。大学の上水道学の講義で、屈原の「漁父の辞」に水処理の基本原理が描かれていると、まさに我田引水 (水処理だけに) で強引に読み取ってしまった教授は、なんかそれに近いことをやっていたようにも思う。そこから、直接実学と関係なくても、それと関係あるものを引き出す契機、みたいな教養の捉え方はできないものか? 今日、イベントで教養について話せといわれてあれこれ駄弁ったのですよ。 lms.gacco.org その中で、教養の役割とかいう話になる。こう、教養というと、実学とは離れた古典知ってます、みたいな、ボリス・ジョンソンがホメロスをギリシャ語で暗唱できますとか、日本なら四書五経だの漢詩だの
Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』は、ダホメでは経済が社会に埋め込まれており、各種交換は社会関係の一環として行われる儀礼でしかない、権力関係の結果として行われるお歳暮やお中元みたいなもの、という描き方をする。だがその見方は片手オチではないか? 各種交換や配布は人々の生存に直結するものであり、その中では、そうした贈与にせよ交換にせよ、そうした行為自体が権力を創り出す。これはコルナイ・ヤーノシュ「不足の政治経済学」の指摘でもある。つまり、そうした経済関係がむしろ社会関係とその権力関係を創り出しているのでは? ニワトリと卵的な面もあるが、社会関係を先に置くのは倒錯ではないのか? 昨日、ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の全訳終わった。 cruel.hatenablog.com この本は、小さく見れば17-19世紀ギニア海岸での経済システムと、特に奴隷貿易に伴う
Executive Summary タイトル通り、ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の全訳がおわりました。 先日、半分まで終わったポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』 cruel.hatenablog.com 全部終わった。 カール・ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』(全訳、pdf 4.8MB) まあ、こうさ、訳してもさ、どうせだれも読みはしないんだよね。「スゲー」とか「感謝」とかコメントはつくんだけどさ。まあ君たちのためにやってるわけじゃないのでいいんだけど、ときどききょむかんはあるよな。でも、おもしろいよ。 書き方は下手クソで、おんなじ事何回も言っててアレだ。もう少し長生きしていればきちんと手直しできたのかも、でもなかなかおもしろいし、しょせんこの仕組みが一過性ではあったことは、ポランニーも認識しているんだね。現代世界でこんな仕組みが成り立たないのは、彼も知っている。その一方で彼は市場経
Executive Summary 木村汎『プーチン』三部作 (藤原書店、2015-2018) は、書きぶりはあまりにひどい無内容な水増しぶり。だがその中身はかなりきちんとしている。プーチンの自伝的エピソードのごまかしも述べ、また変な柔道談義で舞い上がることもなく、北方領土返す気がないことも指摘。特に最終刊の「外交的省察」は、最初の二つのうんざりする書きぶりがかなり薄れ、北方領土に浮かれたりせず、変な親ロシアのイデオロギーに流されることもなく、きわめてポイントを押さえた冷静なよい記述になっていて、2022年のウクライナ侵攻に繋がる動きもまとめられている。最終刊だけは読むべき。前の二巻は……ウザい書きぶりに耐えられれば。 だいたい何かについて勉強したいときには、一番薄い本を見て大枠つかみ、一番分厚い本を見てそのテーマで出てくるネタを一通りおさえるのが通例。すると他の本については、各種情報がど
Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』の既存翻訳がダメときいて訳し直しました。 昨日のエントリで、ダホメ経済の話をしたけど、そのときに読んだ『経済と文明』こと『ダホメ王国と奴隷貿易』。 cruel.hatenablog.com 翻訳が半分まで終わったので、とりあえず公開。楽しい奴隷取引の部分はこれからだけれど、ここまでの話でも、17−19世紀のダホメ経済のおもしろさはわかる。 カール・ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』(全訳、pdf 4.8MB) すでに栗本慎一郎他の邦訳があって、あまり評判がよくないことは述べた通り。ただ訳してみると、結構晦渋な英語を使っていて、未完成で終わったこともあり、論理的におかしかったり推敲が足りなかったり凡ミスっぽかったりする部分もあるのは事実なので、少し難しめではある。現代の普通の英語の感覚でやると、ちょっとつらかったかも。 経
Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』に描かれている17-19世紀ダホメ王国は、市場システムを持たない。国内ではすべての作物を王様が召し上げ、一大宴会でそれを民草に配り、それ以外のわずかな部分を、王が配るタカラガイで、市場で定額で売買させる。そして外国との取引と、そのための産物生産 (奴隷狩りの戦争) は王様が独占し、民には外国製品は贈り物としてわたすだけ。これは、政府がすべて召し上げ、配給し、それで対応仕切れない部分の調整を市場での取引で行い、外貨取引は政府が全部仕切るという、キューバなどの社会主義経済とほぼ同じ。結局、ある生産力=生産技術の水準により、合理性を持つ経済システム=分配方式は決まってしまうということではないのか? 社会主義とか部族社会とか、イデオロギー関係ないのでは? するとこんどこそ資本主義が変わるとかいう主張もかなり怪しいのではないか。
Executive Summary 2002年あたりに、3日にわたってオリバー・ストーンがフィデル・カストロに密着したインタビュー映画。 だがストーンは脈絡なく抽象的な質問をするだけ。相手が怒ったり口ごもったりするような質問は一切ない。また質問の答を受けてさらに質問して話を深めることも一切ない。実際にいっしょに町中を移動して、その状況をもとにキューバの現状について質問することもない。このため抽象的な質問にどうでもいい一般論が帰ってくるだけの、ほとんど意味のない個人崇拝ドキュメンタリーとでも言うべきものになってしまっている。 プーチンがらみの話の行き掛けの駄賃で、あると知ってしまったので、まあ見ないわけにはいかない。カストロ関係の伝記っぽいのは一通りチェックすることにしてるもんでね。一応、中古とはいえ買ったんだぜ。 コマンダンテ COMANDANTE [DVD] フィデル・カストロAmazo
断捨離の途中で、いまやウクライナ侵攻の話題で大活躍しているポール・ポースト『戦争の経済学』の解説で使った、日清戦争と日露戦争の収支報告書が出てきました。 戦争の経済学 作者:ポール・ポーストバジリコAmazon パブリックドメインだし、ぼく一人が持っていてもしょうがないので公開。ご活用ください。 Expenditures of the Sino-Japanese War (1922) Expenditures of the Russo-Japanese War (1923) どちらも、実にしっかり書けているし、英語も見事だなあ。このシリーズで出ているらしい他のやつもおもしろそう。 これを書いたオノ・ギイチとかオガワ・ゴウタロウ京都大学教授とか、有名なのかもしれないけれど、ぼくはよく知らない。田中秀臣氏あたりに聞くと何か出てくるのかな? なお、この手の内容を日本語で詳しく読みたい人はこちらを
Executive Summary 『オリバー・ストーン オン プーチン』(文藝春秋、2018) は、同名のプーチン連続インタビューシリーズの文字版。2015-2017という、プーチンやロシアをめぐる各種の大きな事件が次々に起きた時代で、本当であればまたとない情報源となれたはず。ところが、オリバー・ストーンは自分がしゃしゃり出て、頼まれもしないのに反米妄想をふいて呆れられ、そしてそこにつけ込まれてなんでもアメリカの陰謀のせいにするプーチンの主張を全部鵜呑みにしてしまい、明らかに変なことを言われても何もつっこみを入れず、話も深まらない。おかげで、この貴重な機会が完全に無駄になり、プーチンの本当の腹がまったく見えないままで終わってしまう。映像版は、舞台となったクレムリンや大統領専用機、さらにプーチンの余裕の笑みは一見してもいいが、冗長。 ダメなプーチン本は、もちろん日本だけに限られるわけではな
Executive Summary カブレラ=インファンテ『煙に巻かれて』(青土社、2006) は、葉巻をめぐる歴史、文学、映画、政治、その他ありとあらゆるエピソードを集め、さらにダジャレにまぶしてもう一度昇華させた楽しい読み物。著者が逃げ出したキューバへの郷愁もあり、単なる鼻持ちならないウンチク談義に終わらないまとまりを持つ。ギチギチ精読する本ではなく、楽しく拾い読み、流し読み、如何様にも読めるいい本 (つーか、こんなエグゼクティブサマリーつけるべき本ではそもそもない)。若島正の翻訳も、言葉あそびが強引にならずお見事。 最近、プーチンがらみの話とか、マジな堅い本ばっかり読んでいるし、こちらも真面目に読んで怒ってばかりなので、ときに気軽で楽しい本を読むとホッとする。そんな一冊が、このカブレラ=インファンテ『煙に巻かれて』。 煙に巻かれて 作者:G. カブレラ=インファンテ青土社Amazon
Executive Summary ゴルバチョフ『ペレストロイカ』(講談社、1987) は、ソ連の体制の刷新と解体から、やがてはソ連そのものの消滅をもたらしたという、当時の世界構造の一大変革につながった図書として、いつか読もうと思いつつ果たせずにいた。いま、35年たって読んでみると、ペレストロイカはスローガンでしかなく、社会主義のダメなところは書いてあるが、それを具体的にどうなおすか、という方策はなく、また書きぶりも社会主義的な制約 (これはレーニン様の路線を継承するものなのだ、等) と、ウソすらまじえた弁明 (レーニンは社会主義を世界に広めようとなどしていない、ソ連にそんな疑念を抱くのはゲスの勘ぐりである!)等ばかりが目立ち、あまり勉強にはならない。 本の断捨離を敢行しているが、その中で「あー、こんな本あったなー」とか、後で読もうと思って何かしら先送りにしていた本とかが出てくるので、メモ
Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 III』は、突然イノベーションの話をはずれて、インフラの話をはじめる。だがそのインフラがこれまで重視してきた創造性とどう関わるかはまったく触れない。それぞれのインフラの事例として挙がる都市の記述も、あれこれ詰め込んで整理されず、論点がぼやけてばかりだし、また事例も一大都市から、ドックランズという地区開発をごちゃまぜにして、政策も都市のレベルと国のレベルが混同し、要領を得ない。 さらに最後はITが都市に与える影響だが、1990年代末のWIRED受け売りばかりで、20年たったいまは無惨に古びてしまい、読むだけで恥ずかしいほど。そして来るべき都市の黄金時代と称するまとめは、いろいろ問題を羅列するだけで、これまでの長い二千ページ近くから得られる将来への指針や視点、重視すべきポイントなどが一切ない。結局、全巻通じてこれだけの長さを読ん
Executive Summary プーチン他『プーチン、自らを語る』(扶桑社、2000) は、突然ロシア大統領になってどこの馬の骨ともわからなかったプーチンが、生い立ちから大統領としての問題意識までを率直に語ったインタビュー集。幼少期の記述などはこれがほとんど唯一の文献で、他の本はこれに対する註釈でしかない。また、まだ隠蔽すべき悪事などがないので、かなり率直かつ正直に語られているし、全部が本当ではないとはいえ、一言半句に勘ぐりを入れる必要もなく、ストレートに読める。家族のインタビューも交え、プーチンの全体像をしっかりまとめているし、またチェチェンへの高圧的な態度、反体制ジャーナリストへの冷淡さなどもはっきり出ている。なお英語からの重訳だが、英語版のほうが追加のインタビューを加え、ロシア語版で削除された部分も含んでいることもあり、重訳のデメリットよりはメリットのほうがずっと高いので、懸念に
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