※プライバシーのため、内容には一部フィクションを含みます。 父は酒乱だった。 こういう言い方をすると世の酒乱の親を抱えた人々は怒るかもしれない。実際、はたから見れば僕の父はそこまで悪い親ではなかったのではないかと思う。夏は少ない休みを使って旅行に連れて行ってくれたし、人並みの人生ではあるものの特別お金に困ることもなく、僕を奨学金なしで大学院まで通わせてくれた。しかし、少なくとも僕の父との思い出と酒とは切っても切れない関係があるのは事実だ。 仕事から帰った後、父の側にはいつもビールと発泡酒の缶が並んでいた。早く帰ったときは野球中継を見ながら、遅くなったときは今日の野球のダイジェスト放送をニュースで見ながら缶を開けるのが父の日課だった。たいてい、一日に5,6本は開けていたように記憶している。 別にそれについては大きく僕に影響を及ぼすことはなかった。ひとしきり飲んだ後は布団に入って寝るだけだから