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「ウィザードリィの深淵」を読んだ。 読んだ……というか、今、少しずつ読んでいる途中だ。もったいなくて、高いお酒をちびちびとやるように、毎日、少しずつページをめくっている。 だって冒頭から須田PINさんのロングインタビューとかが載っているのだ。「誰それ?」などと思ったやつは帰れ。いや、うそうそ。帰らずに、もう少しおじさんの昔話につきあってほしい。 俺が最初に触れたウィザードリィは、ゲームボーイ版の外伝Iだった。副題は「女王の受難」どんな話だったかはおぼえていない。副題から察するに女王がたいへんな目に遭う……すなわちクイーンズブレイド的なあれだったかもしれない。いや、たぶんそうじゃないと思う。ウィズは(俺はさしたるウィザードリィフリークではないと自認しているが、ここではいかにも通っぽく”ウィズ”と略していく)ゲームの中でたいしてストーリーを語らないので、おぼえてないのもしかたがない。たしか中学
よく来たな。正月も終わり、気がつけば1月も終盤に差し掛かろうとしている。この一年のはじまりに、おまえはなにをして過ごしていた? おそらく腰抜けのおまえはいつものように流行りの映画をそそくさと見に行ってはあたりさわりのない感想をツイッターに投稿したり、しょぼいメシの写真やら自撮り写真やらを誰にも頼まれないのにせっせとインスタグラムにアップロードして自分のみみっちい世界を守るのに必死だったのだろう。あるいは噂の新型ゲーム機ニンテンドースイッチの予約に忙しかったかもしれない。俺も予約した。そうして翌朝からはじまるつまらない仕事にため息をつき、なんてつまらない人生なんだというむなしい感慨から目をそらし、つとめて忘れるようにしながら眠りにつく。そうこうしているうちに1月は終わり、2月も終わり、気がつけば1年が過ぎている。なにごとにも熱くなれず、大事なことがなにかもわからぬまま、場末の酒場で出会ったベ
■ロードランナー わけあって俺はゲーム「ロードランナー」をやっている。 やっている、といってもコントローラを手にしてゲームをプレイしているわけではない。実際に俺自身がランナー君となり、テレビ画面の中に散らばる金塊をひたすら集め、手にしたレーザーガンで地面に穴を掘って警備ロボットを埋めたりしている。 「どうしてこのレーザーガンで直接敵を撃たないんだ?」 そんな疑問は、俺自身が実際にロードランナーになってみても解消されることはない。もちろん直接敵を撃つこともできない。 なぜならそれがゲームのルールだからだ。 俺は地中深く埋まった金塊目指して足元に穴を掘り、飛び降り、また穴を掘る。 だが目算が狂っていたのか、俺は自らの掘った穴の中で身動きが取れなくなる。そしてゆっくりと穴はふさがっていき、俺は息絶える。 世界がポーズされ、俺の視界に古い壊れかけのテレビがときおり発するようなちらつきが広がり、スプ
■1■ 天にまします神様が俺たち人間どもに与えてくだすったベスト・オブ・くそったれな贈り物がなにか知っているか? そいつは想像力だ。 こんなもの、俺は欲しくなんか無かった。 七戦闘単位日ほど前、俺たちはハリ湖の作戦でヴーアミ人のキャンプを襲撃した。 武装ゲリラの巣窟、というのが事前に小隊へ与えられた情報のすべてで、作戦目標はKTA。すなわち「キル・ゼム・オール――とにかくみんなぶち殺せ」 俺はぶち殺した。動くものすべてに突撃銃を向け、ひたすら引鉄を引いた。 反撃を受けることはなかった。当然だ。そこには武装した者など一人もおらず、あらゆる年齢の女と、少年か少女かもわからないような年端もいかない子供、そして赤ん坊しかいなかったからだ。 老婆の頭を丸ごと吹っ飛ばしたあと、俺は彼女の過ごしてきた長い時に思いを馳せる。 子供の胴体に丸い穴をうがったあと、俺は彼(彼女?)がこれから過ごすはずだった長い
新宿ピカデリー前にはいつものように何十台ものバイクやサンドバギーが路駐されていた。 さらにどこの馬鹿どもが乗ってきたのか、乗合バスよろしく大型の装甲車まで鎮座している。車体の背面に据え付けられた銃座の上で、機関銃が雄叫びを上げるような角度で濁った空を示していた。 まとわりついてくる重油の臭い。獣の革とおぼしき臭いと、むき出しの鉄が錆びた臭い。よくわからない隠し味のような臭い。それらが最悪の三重奏だか四重奏をかなで、俺の鼻孔を直撃した。 車輌はどれも例外なく装甲板が何枚も無骨に重ね貼られ、ホイールやボンネットから槍のような鋭いスパイクが突き出ていた。まるで鉄のハリネズミか、あるいは病気の針葉樹のようないびつなシルエットを晒しているそれらを慎重に避けながら、ピカデリーの入り口にたどり着く。 やがて俺はピカデリー内部に通じるスイングドアの前に立った。耳障りな蝶番の音を響かせ、その汚い木切れで出来
ぼくの住んでいる街の駅前広場には小さな時計台があって、それはもちろんポータルとして登録されている。 学校の行き帰りにスキャナー画面を起動して、ポータルレベル8の時計台がひときわ強い青い光を放ち、周囲のポータルと密接にリンクされ、まるで蜘蛛の巣のように複雑な幾何学模様を描き出していることを確認する。 スマートフォンの小さな画面を通して見える青い世界に、名状しがたい安堵をおぼえる。 * 実際の地図と位置情報を利用した世界規模の陣取りゲーム「Ingress<イングレス>」 青と緑の両陣営が、日本中……いや世界中いたるところに点在するポータルを巡って熾烈な領土争いを繰り広げている。 ぼくは、その青の陣営――通称「レジスタンス」――に属するエージェントだ。 世界を青で覆い尽くす。 それがぼくの使命だ。 誇り高きレジスタンスのエージェントたるぼくの使命。 自宅から駅、そして学校の周辺はぼくのテリトリー
アニメ「ヤマノススメ」をセカンドシーズン含めぶっつづけで視聴しました。 ゆるふわガールズ登山アニメの金字塔であり、ヒロインを演ずる井口裕香と阿澄佳奈の頭蓋がとろけそうなボイスが交互に襲い来るおそるべき作品です。気がつけば高山病よろしく脳に酸素が行き渡らなくなり、正常な思考を失いがちになる危険なアニメでした。 途中からは小倉唯までもが加わり、ほとんど生体兵器の域に達している甘ったるい声音までもが混ざるようになり、あやうく涅槃のむこうに落ちかける意識が、かろうじて日笠陽子の声によって踏みとどまる……そんなアニメです。 あと、観た人はみんな同じ感想を持つと思いますが……とにかく主人公のひなたとあおいの家がでかいんですよ。 ルビをふるなら……そう、”巨(デカ)”いんですよ。 その華美壮麗さたるや、豪邸という言葉すら生ぬるいほどです。 風呂は当たり前のように優雅な檜造りで、部屋の中にしれっと大理石と
世の中、あまりにもつらいことや理不尽なことが多すぎるのでひたすらバットマン:アーカム・ビギンズを遊び、浮世の憂さを忘れてゴッサムシティの空を縦横無尽に飛び回ってました。 そして騒がしいチンピラを見つけては高所から急襲。 軽く50m以上はあるであろうビルの上からおもむろに飛び降り、そのままターゲットめがけて全速力で突っ込みながら蹴りを入れても気絶で済みます。 なぜなら不殺だから。不殺のヒーロー・バットマンだから。 ほんとすげーよバットさんは。生きた逆刃刀ですよ。 あまりにチンピラを高所から襲うことに快楽をおぼえすぎて、普通に歩いていったほうが早い距離でチンピラを発見してもわざわざ遠回りして高所に登ってから襲いかかるほどです。 あと、今回はブルース・ウェインが若いころの話で、すなわちバットマンが誕生して間もないころということで、いまいちバットマンの知名度が低いです。 具体的にはまわりの人が「こ
年が明けて一年のうちでもっとも寒い時期が訪れると、いつも中学生時代を思い出す。 輝かしい思い出などではなくて、耐えがたい慙愧の念とともに思い出しては、どうして俺はもう少しうまく中学生時代を過ごせなかったんだろうと頭を抱える。 勉学、運動、友情、恋とかもろもろ、なにひとつうまくこなせなかった。 びっくりするぐらいこなせていない。 修学旅行では、そう言えばグループの班長をやった。 今思い出した。グループで誰もやりたがらなかったので俺が押し付けられたのだった。 そもそも最初にやったグループのメンバー決めにしたって、俺はいい具合に余り者となり、いたたまれない感じでそのグループに入れてもらった記憶がある。 そして班長を押し付けられた。 自己主張の苦手な根暗なデブでしかない俺には、それに甘んじるほかなかった。 グループにおける旅行の目標を発表しなさい、と先生に言われ、班長が何分かずつスピーチするという
クリスマスケーキと話をしたことがあるだろうか。 信じてはもらえないかもしれないが、俺はある。 * 昨年の冬のことだ。 例年のようにとくになにごともなくクリスマスをやり過ごした俺は、会社帰りにコンビニへ立ち寄ったついでに、半額で叩き売られていたクリスマスケーキを買った。 それは雪のようなホワイトクリームをベースに小さな苺の切り身が乗っかったホールケーキで、レジのすぐ前で「半額!」のポップとともに雑然と並べられていた。 クリスマスにはなんの思い入れもないが、ケーキは好きだ。 大勢で食おうが一人で食おうが、その比類なき甘さは俺に安寧をもたらしてくれる。いやおうなく日常を感じさせるその安っぽい味は常に俺を救ってくれたし、たぶんこれからもずっと救ってくれる。虫歯と肥満に気をつける限りは。 * 誰が待つでもないワンルームに帰りついた俺は、コンビニで買った弁当を食ったあと、おもむろにケーキにとりかかるこ
人は中年になるとしきりに昔のことを思い出すようになる。少なくとも俺はよく思い出す。ああ、そういえば俺にも高校時代ってやつがあったよなあ、と高校を舞台にしたアニメなんかを観ながら思い返す。 共学ではあったけれど女っ気は皆無だったし、部活とかで熱いバトルを繰り広げたりもしない凡愚きわまるハイスクールライフを送っていたが、そういえばナイフで刺されたことが一度だけあった。今も腹部に傷痕が残っている。 高校三年生の、たしか秋ごろだったと思う。文化祭の準備に追われていた記憶がある。 俺を刺したのは同じクラスのSくんという男子だ。よく言えば素朴でおとなしい、悪く言えば暗い感じの少年で、クラス内のヒエラルキーは低かった。暑苦しくて根暗なデブであるところの俺とSくんは自然に仲良くなり、よく本やゲームの貸し借りをしていたものだ。 富野作品を愛していた彼から、俺は「ガイア・ギア」のラジオドラマCDだとか「逆襲の
往年の名作アニメ「ブレンパワード」をすべて視聴するという荒行をこなしたのですが、あらためてしょーもない大人(とくに両親)が反省したりしなかったりする話でした。大人はもっとしっかりしなさい。 二十数回もOPとEDを観たおかげで、登場人物のIN MY DREAM的な女性の全裸に耐性ができると同時に、とてつもなく心が滑らかになりました(KOKIA的に) あと毎回冒頭に入る比瑪ちゃんの「先週のブレンパワード」は、今観てもあまりにエキセントリックでした。新キャラとして複数のアンチボディを引き連れて颯爽と登場したナッキィ・ガイズを「戦力になりそうでならなかった」とばっさり斬って捨てるあたりもすごい。 個人的に好きなブレンパワード台詞ベスト5 5位「おまえのブレンパワードの扱い方、イエスだね!」 比瑪ちゃんに再会した勇が感極まって言い放った言葉。グッド(良い)でもバッド(悪い)でもない、第三の価値観を俺
劇場版「中二病でも恋がしたい!」であるところの「小鳥遊六花・改」を観覧してきた。 当然、新宿ピカデリーである。 なにがどう当然なのか自分でもうまく説明できないが、このような劇場アニメを視聴するのに新宿ピカデリーという場所は、なんというかこう、しっくりくるのである。 三連休の真ん中の日、朝九時の回をオンラインで予約していたので、普通に出勤するのとそう変わらぬ時間帯で家を出て、電車に乗り、新宿ピカデリーにたどり着いた。 早朝でまだ開いている店も少ないせいか、新宿の街は少し人通りが少ないように思えた。 ピカデリーの入り口には、十数人の男女がたむろしていた。どうやらまだ入り口が閉まっているらしかった。俺が到着するとほぼ同時に自動扉が開け放たれ、よく訓練された兵士のように彼らは屋内へと吸い込まれていった。俺もその流れに乗り、映画館へと足を踏み入れた。 手早く排尿を済ませ、込み合う前にパンフレットを買
■FMタウンズとPC98 高校時代、俺はパソコン研究部なる怪しい部活に入っていた。 情報処理室の片隅にあるスペースに置かれているFMタウンズでプログラムの勉強をするのが主な活動。ゲームのプログラムの参考にするため、という名目でタウンズでゲームをすることも許された。 そういうわけで、なんとなくパソコンで遊びたいボンクラたちが集まるゆるい空間だった。 だが、当時の俺たちは青春真っ盛りであり、絵に描いたような思春期であった。 結論から言うとエロゲーをやりたくて仕方がなかったのだ。 情報処理室には十数台のPC-98が設置されていた。今では信じがたいが、HDDが内蔵されておらずフロッピーディスクを読み込ませてソフトを走らせるタイプのコンピュータだった。 それにボンクラ連中がどこからともなく持ち寄った怪しいエロゲーのフロッピーを挿入して遊んだ。夢中で遊んだ。かの名作「同級生」などはフロッピーディスク数
あのV林田卿(てるみなおじさん)が鉄道コラムを寄稿しているというkashmir先生の「てるみな」を読みました。 粘土ゲーム「バルバロッサ」においてパンタグラフ(電車の屋根についてるアレ)を作成して皆の顰蹙をかったV林田卿が寄稿しているというので、表紙だけ見て「ははーん猫耳少女が無闇にマニアックな鉄道の列車に乗って旅情をかもし出す漫画だな?」などと安易な予想をして読んでいましたが、そんな浅はかさを吹っ飛ばすほどの衝撃を受けたので紹介したいです。 第一話のタイトルは「特急 高尾山 行き」 主人公の少女ミナに突然猫耳が生えてしまい、お払いのため天狗の住む山・高尾山に赴く……という流れから話は始まります。 おっ、高尾山はちょうど少し前に行って登って来たなーなどと思って頁をめくっていると「……あれっ?」と首をひねること数回。なんかこれ、俺が知ってる高尾山じゃないような……。 完全なフィクションかとい
第6話「センターは誰だ?」 穂乃果の部屋に、三人の女が集っていた。 「おう、これに歌詞を」 東條希が、一冊の擦り切れた帳面を手にしながら言った。手垢にまみれ、汚臭が漂っていた。表紙全体が灰色をしている。タイトルを書き入れるためのスペースには、小さく”歌詞”とだけ、黒いボールペンで記されていた。 スクールアイドル活動についての話を聞きに来た希は、興味深げに二人が語る言葉に耳を傾けている。 「歌詞はだいたい海未先輩が考えている」 凛が短く言った。 「ほう。では新しいステップを考えるのは――」 「それはことりが考えている」 間髪入れずに穂乃果が答えた。 誇らしげに太い笑みを浮べているμ'sのリーダーに、希は問うた。 「では――穂乃果、あなたは何をしているん?」 「うむ」 しばし黙考し、穂乃果は言った。 「私は飯を食らう」 「私はテレビを視聴する」 「私は他のアイドルたちを見て、”凄いな”と思う」
アニメ「ラブライブ!」がおもしろいので、各話の見どころを夢枕獏風に紹介したい。 第1話「叶え!私たちの夢——」 「廃校――」 高坂穂乃果は目眩を感じた。 年々生徒の数が減じている。ゆえに廃校。 明快であった。 そのあまりに明快すぎる論理が、穂乃果の眼前に硬い石壁のようにそびえていた。 * 「おまえたちが、スクールアイドル活動だと」 生徒会室は澱んだ空気に満ちていた。 「認められぬ」 生徒会長と名乗ったその女は、穂乃果たち三人を睨めつけながら拒絶の言葉を口にした。 露国人の血が混じっているらしい。羆のような体軀であった。 だが―― 白い、嫋やかな指をしている、と穂乃果は思った。 会長の放った、 しゅう…… という獣の呼気にも似た冷気が肌をなでた。 ぶるり、と肉が震えた。 だが、同時にその言葉は熱い何かを感じさせた。 熱―― 熱である。 長い時をかけて火中で炙られ、歪にねじくれた鉄のごとく、冷
■ゲームボーイその2 俺は高校を卒業するまでに、学校を二回だけ休んだ。 高校時代にナイフで腹を刺されて入院したときと、中学時代に学校をさぼったときだ。 その日、学校をサボってみようと決めていた。 さしたる理由があったわけではない。 学校が好きというわけでもなかったが、格別に嫌いというわけでもなかった。たいていの十四歳が経験する、世界に対する反抗的なものだったとも思わない。 と、思っているだけで、実は単にそういうものだったのかもしれないが。 いつも通りに朝食を食べ、中学指定の学生鞄を持ち、家(例のボロ家だ)を出て、とりあえずすぐ近くにある小さな児童公園に行き、ベンチに座ってみた。そのとき公園沿いの道に、犬の散歩をしている男性の姿が見えた。 その男には見憶えがあった。アマイケという人で、公園の向かいにある自宅で学習塾を開いている。まずいことに、当時の俺はそのアマイケ塾に通っていた。 学校の先生
いつの間にか三十五歳。 もしかするともう自分の人生は半分過ぎてるんじゃないか。 それなのに、まだなにも始まっちゃいないような気がするのはなぜだろう。 そんなことを考えてしまいがちな夜だから、なんとなくゲームのハードウェアごとの思い出。 ■ファミコン 初めてファミコンとそのゲームを見たのは、小学校一年生だったか二年生だったか。 たしか友達の家で見たスーパーマリオブラザーズが初めてだったと思う。 ボタンを押すとテレビの中のヒゲのオヤジがジャンプしたり走ったり、カメを踏んづけたり、キノコを食って巨大化したり。今もってよくわからない世界観だったが、俺は素直に感動した。 たしかずっと友達の兄貴が遊んでいて、そのときはプレイできなかったように思う。いつの日か好きなだけあのオヤジをコントローラーで操ってやりたい、と強く思った。 その頃はファミコンを持っている友達の家に、それこそ毎日のように遊びに行ってい
(兄さんが何かメモしながら「ソードアート・オンライン」を視聴している……) 半裸でテレビ画面に見入っている兄さんの背後に忍び寄り、私はそっと手元のメモを覗き込んでみる。 そこには丁寧な字で次のようなことが書かれている。 キリト → パーン アスナ → ディードリット クライン → ウッドチャック エギル → ギム サチ → エト シリカ → シーリス 茅場晶彦 → 水野良 「……未だに例の島の呪縛から逃れられないんだね、兄さん」 私がほくそ笑むと、兄さんは身を固くこわばらせる。
狂乱のうちに夏のコミケが終わり、虚脱した日々を過ごしていた。 初めての長編小説「バブルピース」はおかげさまで好評をいただいている。繊細な青春もののような恋愛物のようなホラーのような……と、実にさまざまな感想をいただいているが、読んだ方は共通しておおむね楽しんでくれたようで、あーよかった本当によかったと胸をなでおろしている次第。 近日中に通販も開始される予定なので、よろしくお願いしたい。 * 宣伝がてらの前口上はここまでとして「魔法少女リリカルなのは」のことを書く。 つい先日、とある人(仮にM氏とする)に「現在公開されている劇場版なのはを観に行きませんか」と誘われ、これを機に未視聴であったTV版の「なのは」(無印)を観始めた。 ついでに、劇場版の一作目も観た。 そのような準備を終え、いよいよ本命の劇場版「なのは」ニ作目……正確には「魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 2nd A's」を
01 連合宇宙軍第七番母艦《ノイマン》、医療区画第一病棟、フロア二のB室、そこに設置された六十四基の胎盤ポッドのひとつから、あたしは生まれた。この時代、ほぼ万に一つ、奇跡に等しい確率でしか生まれない”正常な”遺伝子を持つ人類として。 百年前の地球脱出における”根汚染”のおかげで、生後一時間と生きられない未熟児・奇形児の発現率が激増した。いまや胎児段階におけるナノマシンを使った発現形質の調整や、未発達器官の代替が必須というご時世なのだから、あたしのようなまっさらな人類はたいそう珍重された。 大人たちは、あたしのことをよく「最後の人類」と呼ぶ。 たぶん最初にあたしをそう呼んだ担当医は、後頭部に外付け式の外部メモリを増設している。大人たちはみんな、遺伝子異常によって欠損した身体や未発達の脳を補うために、そういった拡張処置を受けている。あたしは忘れっぽいから、そういうものがあったほうが便利だと思う
同人誌(バブルピース)も無事に完成したことだし、あとは程よく売れますようにと神頼みをしに行ってきました。 某所のとある神社へ。 「同人誌が売れに売れて、濡れ手に粟の平和な生活ができますように。バブルピースだけに」 バブル=泡=粟 ピース=平和 という、よしりん全盛期の茶魔語にも匹敵する高度な言語的手腕を駆使して神々に祈願したのち、なんとはなしに絵馬を眺めていたんですが……いろいろな人の夢や願いが交錯し錯綜する、ここはまさにドリームスクランブルですね……。 イラスト上手い! 可愛い! たぶん仲の良い女の子たちで来たのでしょう。 心あたたまる一枚です。 個人的な題名は「友情」……まんまですが。 これも微笑ましい。 微笑ましいですが、同時に涙ぐましさも感じます。 恵方巻が大量に売れ残ったりしたんでしょうか……柳沢付近の人々はご協力お願いします。 個人的な題名は「飛翔」あるいは「節分」 不死。 そ
何ヶ月かぶりに休暇を取得できた。 この時期の平日に休みを取れたら、することはただひとつ。 ストライクウィッチーズ劇場版を観に行くことしかない。 観に行くしかない。 むしろ観に行くっきゃない。 なぜか心の中で言い直しながら、新宿の角川シネマに摺り足で向かう。 劇場のロビーで関連グッズなどを眺めて、開演までの時間を過ごす。 映画パンフレットの見本は、いったいなにがあったのかというぐらいボロボロに擦り切れている。封切り後まだ二週間も経過していないというのに。 もはやここは戦場なのかもしれない。 上層部に小言を言われているミーナさんのように、俺はケツを引き締めることにする。 ~以下、少しばかりネタバレっぽいものを含むので注意のこと~ 物語は、501部隊の活躍によりある程度の平和が戻った欧州を舞台にして幕を開ける。 なにやら謎のネウロイが各地に出没し、不穏な気配が漂っている。 あいつら、またネウロい
家に帰ると、赤城みりあはいつだって笑顔で出迎えてくれる。 「プロデューサー、ハッピーバレンタイン!」 小さな指でチョコをひとかけつまみ、手渡してくれる。 彼女はピンク色のリボンで可愛らしくラッピングされたチョコの包みを掲げてみせ、 「今日もファンの人たちにチョコを配ってきたよ~♪」 そうして、また、笑う。 あの日から変わらない笑顔で。 [バレンタイン]赤城みりあは、バレンタインイベント限定のレアアイドルだ。 バレンタインと言っても、俺たちP(プロデューサー)のやることは例によって衣装の奪い合いであり、イベント衣装「カラフルマカロン」のコンプリートを達成することで俺は彼女を入手した。 また、[バレンタイン]赤城みりあは、当該イベント期間において2500個のチョコをファンに配ることでも入手可能である。 2500個というと途方もない数字に思えるが、この業界でのトップP連中は数百万個と
電車の中やトイレの個室の中でモバマスをやっていると、いつも俺は世界からの隔絶を感じる。 なにか大切なもの、大いなるものから切り離されている感覚。 手の中の小さな携帯端末の画面に映し出されるアイドルたちの世界も、俺とは大きく隔てられている。 おそらく彼女たちも、なにか別の大事なものから切り離され、閉ざされているのだろう。 * モバゲーから提供されている、アイドルマスターから派生したソーシャルゲーム。 通称モバマス。 正式名称は、アイドルマスター シンデレラガールズ。 シンデレラガールズ。 遠い昔のお伽話のように、持たざる身から一転して輝かしい栄光を手にする少女たち。 正しくは、ガラスの靴を与えられる一握りの少女たちと、そうではない少女たちの物語。 物語と言っても、このゲームにはわかりやすいシナリオ、ストーリーがあるわけではない。 ただ明確な目的と手段が与えられるのみだ。 このゲームが示す目的
新宿駅における一日の利用者数は三百四十万人以上らしいです。 ものすごい数です。 これはギネスブックにも載っている記録とのこと。 俺は毎日、通勤がてらその世界一の人混みっぷりを堪能しているわけですが、さすがにこれだけ人が集まる場所なだけあって、色んな人を見かけます。 新年が始まってけっこう経ちますがあまり書くこともないので、三人ばかり印象深かった人たちのことを書きたいと思います。 一人目は敦盛親父です。 本名はわからないので、これは俺が勝手につけたニックネームです。どういう人かというと、駅のホームやら電車の中でひたすら敦盛を舞っている男性です。 スーツ姿でかなり頭髪が薄い、おそらく定年間近と思われる年配の方ですが、その舞いにはただならぬキレがあります。 初めて彼を見かけたとき、俺は思わず声をかけてしまいました。 かけずにはいられませんでした。 「人生、五十年ですか」 明らかに五十歳を超えてい
劇場版「けいおん!」を視聴してきた。 新宿、ピカデリー。 封切りからしばらく経ってはいたが、相当な人の入りであった。 さすがは「けいおん!」である。いつまでも沈まぬ太陽の如く、すさまじい人気ぶりとしか言いようがない。 開場時間になった。 アナウンスに従い、俺は予約していた座席につく。 わくわくしてきた。 今回の劇場版、どのような話なのかはまったくわからない。なにやらイギリスへ行くらしいだとか、かつひょんなことからIRAに入ってゲリラ活動に従事するらしいだとか、いやいやヘリフォードでSASの入隊試験を受ける(そして冬山を登る最終試験で、民家の老夫婦にスープを飲ませてもらう)のだとか、さまざまな流言が飛び交っており、そこから真実を見極めるのは難しいと思われた。 だが、それももはや、どうでもいい話だ。 唯、澪、律、紬、梓。 これから、また彼女たちに会えるのだ。 己の精神が果てしなく高揚するのを感
twitterでひっそり吉田戦車さんをフォローしている。 知り合いでもないのに「さん」付けなど馴れ馴れしいことこの上ないが、情報化もきわまった感のあるこのご時世、なにかの拍子にご本人がここを読むことがあるかもしれない。 その際、うっかり呼び捨てで表記していていたらお気を悪くされるであろう……そんな配慮が「いやいや自意識過剰だろ」という思いを上回った結果としての「さん」付けである。 で、氏の最近のツイートにより「逃避めし」なる書籍が発売されているらしいことを知り、さっそく本屋に走る。 いったいどんな内容の本なのか想像もつかないが、「逃避」という後ろ暗い言葉と「めし」というぞんざいで男臭い言葉のハーモニーが、なんとも言えぬ情緒を醸し出している。 さんざん探したあげく、紀伊國屋書店の普段まったく訪れることのない「料理」カテゴリの棚にあるのを見つけて購入。 読了。 おもしろい。 一人暮らし時代から
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