(著書解題8) バートランド・ラッセル著『西洋哲学史』(碧海純一・解題) 『日本バートランド・ラッセル協会会報』第9号(1969年2月)pp.4-5. * 筆者は当時,東大法学部教授,ラッセル協会常任理事 『西洋哲学史』(1945年)は,私の手元にあるアレン・アンド・アンウィン社の初版本で916ページに及ぶ浩翰な大著である。本書の価値については,実にさまざまな意見があるが,本書は,ラッセルの数多い著作の中でも出色のもののひとつであるにとどまらず,西洋哲学史の概説書としても全くユニークな,傑出したものだと私は信ずる。 本書が出版されたのは第二次大戦後のことであるが,その執筆は,主として,第二次大戦中ラッセルがアメリカに滞在していたときに行われたものと考えられる。のちに,「バートランド・ラッセル事件」として有名になった訴訟事件(1941年にラッセルが,ニューヨーク市立大学教授に任命されるはずだ