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2015年に「重力波」の観測に成功して以降、現在の天文学は重力波を宇宙の観測手段とする段階に入っています。岐阜県飛騨市に設置された大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」は、重力波の詳細な観測を行うため、他国の重力波望遠鏡と連携していました。 しかし、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」でKAGRAの装置の一部が損傷を受けたことが判明し、詳細な被災状況が2月5日に報告されました。現時点では具体的な時期は未定なものの、KAGRAは2025年1月の共同観測期間終了前までに観測運転を再開することを目標としています。 【▲図1: 神岡鉱山坑道内に設置されたKAGRAの一部(Credit: 東京大学宇宙線研究所 & 国立天文台)】■「重力波」は本格的な天文観測の手段となりつつある1915年にアルベルト・アインシュタインが提唱した一般相対性理論では、重力に関する様々な現象が予言されていました
米国の民間宇宙企業スターラボ・スペース(Starlab Space)は現地時間2024年1月31日、同社の商業宇宙ステーション「Starlab(スターラボ)」の打ち上げにスペースXの「Starship(スターシップ)」を利用すると発表しました。スターラボ・スペースによると、スターラボはスターシップを使えば1回で打ち上げることが可能だということです。 【▲ 民間宇宙企業スターラボ・スペースが開発中の商業宇宙ステーション「スターラボ」のイメージ図(Credit: Starlab Space)】地球低軌道(LEO)に投入される予定のスターラボは微小重力環境を利用した科学実験を行うことが可能で、4名が恒久滞在できるとされています。スターラボ・スペースは具体的な打ち上げ時期を明言していませんが、発表の中で「国際宇宙ステーション(ISS)の運用終了前に打ち上げる予定」と述べています。 アメリカ航空宇宙
スミソニアン協会のThomas Wattersさんを筆頭とする研究チームは、火星の「Medusae Fossae Formation(メデューサエ溝状層、以下MFF)」と呼ばれる地域に氷(水の氷)を含む厚い堆積層が存在する証拠を示した研究成果を発表しました。堆積層の厚さは最大で3.7kmに達し、火星全体を深さ1.5~2.7mで覆えるほど大量の水が氷として存在する可能性があるようです。研究チームの成果をまとめた論文はGeophysical Research Lettersに掲載されています。 【▲ 火星のメデューサエ溝状層(Medusae Fossae Formation:MFF)の位置を示した図。MFFはオリンポス山(Olympus Mons)の南西、赤道(Equator)のすぐ南に位置している。画像の色は標高に応じて着色されている(Credit: ESA)】欧州宇宙機関(ESA)によると
私たちの宇宙について、広い目線で見れば天体や物質の分布が均質であるという「宇宙原理」が広く信じられています。しかし近年の観測では、宇宙原理に反すると思われる巨大構造物(宇宙の大規模構造)がいくつも見つかっています。 セントラル・ランカシャー大学のAlexia Lopez氏は、地球から約92億光年離れた位置(※)に、直径が約13億光年にも達する巨大構造物「ビッグ・リング(Big Ring)」を発見したと、アメリカ天文学会(AAS)の第243回会合の記者会見で発表しました。Lopez氏は2021年にも同様の巨大構造物である「ジャイアント・アーク(Giant Arc)」を発見していますが、両者は非常に近い位置と距離にあります。これは宇宙原理に疑問を呈する発見です。 ※…この記事における天体の距離は、光が進んだ宇宙空間が、宇宙の膨張によって引き延ばされたことを考慮した「共動距離」での値です。これに
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年1月25日、日本の探査機として初めて月面に軟着陸した小型月着陸実証機「SLIM」および小型プローブ(探査ロボット)「LEV-1」「LEV-2(愛称:SORA-Q)」の月面着陸結果・成果等に関する記者会見を開催しました。 JAXAによると、SLIMは2基搭載されているメインエンジンのうち1基を降下中に喪失するトラブルに見舞われたものの、最終的に着陸目標地点から約55m離れた地点へ接地しており、大きな目的だった精度100mのピンポイント着陸技術実証を達成しました。また、放出されたLEV-1とLEV-2も月面に到達して活動を行ったことが確認されており、LEV-2のカメラで撮影されたSLIMの画像が公開されています。【最終更新:2024年1月25日18時台】 【▲ 小型月着陸実証機「SLIM」から放出された探査ロボット「LEV-2(SORA-Q)」のカメ
重い恒星の寿命の最期に、その中心核が「中性子星」となるのか、それとも「ブラックホール」となるのかは、中心核の質量によって決まると考えられています。ですが、その境界線がどこにあるのか、理論的にも観測的にも正確な位置はよくわかっていません。 マックスプランク電波天文学研究所のEwan D. Barr氏らの研究チームは、ミリ秒パルサー「PSR J0514-4002E」の詳細な観測を行い、PSR J0514-4002Eに伴星があることを発見しました。興味深いことに、伴星の質量は太陽の2.09~2.71倍であり、ちょうど中性子星とブラックホールの境界線に位置しています。発見者が “天の川の謎の天体(a mysterious object in Milky Way)” と表現している正体不明の伴星は、天文学や物理学において注目されるでしょう。 【▲図1: ミリ秒パルサーPSR J0514-4002E
惑星内部のように極端な高圧環境では、物質の性質は大幅に変化します。多くの物質は電気を通す金属のような性質を持つようになりますが、一部の物質は電気を通さない絶縁体になるなど、傾向に当てはまらない場合もあります。 ニューヨーク州立大学バッファロー校のStefano Racioppi氏などの研究チームは、高圧で絶縁体になることが知られている金属「ナトリウム」について、電子の配置をスーパーコンピューターを使って計算することで、絶縁体になる理由を探りました。その結果、従来の考えとは異なり「高圧電子化物(High-Pressure Electrides)」となることが絶縁体になる理由であることが判明しました。高圧環境下での物質の性質には謎が多く、このノウハウは他の物質の研究でも生かされるでしょう。 【▲図: 鉱物油中に保存された金属ナトリウム。他の金属と同じく、よく電気を通す導体で、不透明です(Cre
惑星の外観について、「天王星は空のような薄い青色」「海王星は海のような深い青色」というイメージが一般的と思われます。しかし、公開されている天体の画像は様々な事情で補正がかけられていることもあるため、実際に人間の目で見た状況を正確に反映しているとは限りません。 オックスフォード大学のPatrick Irwin氏などの研究チームは、独自開発した惑星の色モデルに「ハッブル宇宙望遠鏡(HST)」と「超大型望遠鏡(VLT)」の観測データを適用し、天王星と海王星の肉眼的に最も正確な“真の色” を確定しました。その結果、天王星と海王星の “真の色” は緑色を帯びた淡い青色であり、海王星のほうがわずかに青色が強いことを除けばほとんど区別できないほどそっくりであることがわかりました。 今回の研究は、長年の天王星と海王星のイメージを変えるだけに留まらず、天王星の極地と赤道の環境の違いといった、観測が難しい遠方
宇宙誕生の直後、非常に小さな質量の「原始ブラックホール」が生成されたという説がありますが、その実物は現在1つも発見されていません。では仮に、恒星が原始ブラックホールを捕獲し、中心部に保持した場合、どのようなことが起こるのでしょうか? マックス・プランク天体物理学研究所のEarl P. Bellinger氏などの研究チームは、太陽の中心部に原始ブラックホールがあると仮定した場合にどのような影響があるのかをシミュレーションしました。その結果、原始ブラックホールが小さい場合には、太陽に観測可能な変化を及ぼすことなく存在できることが分かりました。また、条件によっては恒星に変化をもたらすことも分かったため、恒星の観測を通じて、間接的に原始ブラックホールの数を推定することができるようになるかもしれません。 【▲図1: 恒星の中心部に原始ブラックホールが存在するホーキング星の模式図(Credit: Ma
土星の衛星「エンケラドゥス」のプルームに含まれる物質は、NASA(アメリカ航空宇宙局)の土星探査機「カッシーニ」によって分析されており、その中には生命との関連が指摘されている炭素化合物がいくつか見つかっています。一方で、プルームを分析した機器の1つである「INMS(イオン・中性質量分析器)」のデータから推定される分子の種類の組み合わせは無数にあるため、これまでの研究では議論の余地が少ないいくつかの物質が同定されているのみでした。 JPL(ジェット推進研究所)のJonah S. Peter氏、Tom A. Nordheim氏、およびKevin P. Hand氏の研究チームは、INMSのデータを分析し、無数に考えられる分子の組み合わせの中から最も妥当と思われるものを決定しました。今回の研究で一番注目されるのは、アミノ酸の源として重視されている「シアン化水素」を発見したことです。他に発見された多
ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)は現地時間2023年12月22日にロッキード・マーティン(Lockheed Martin)の実証衛星打ち上げミッション「Fly the Lightning」を実施しました。 【▲ ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられたアルファロケット(Credit:Firefly)】ファイアフライの「アルファ」ロケットは、日本時間2023年12月23日2時32分に米国カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられました。ロケットの第1段エンジンは打ち上げから約2分30秒後に燃焼を終了し、第1段と第2段を分離。第2段エンジンは予定されていた2回のうち1回目の燃焼を開始し、フェアリングの分離にも成功しました。 ファイアフライはX(旧Twitter)の公式アカウントにて「アルファは軌道に到達し、第2段機体のエンジンは予定通り
soraeでは今年も宇宙開発や天文に関する注目のニュースをお伝えしてきました。そこで、2023年にお伝えしたニュースのなかから注目された話題をピックアップしてみたいと思います。今回は2023年7月で科学観測開始1周年を迎えた「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」で観測された天体の数々から一部をピックアップしてみたいと思います! ※本記事は2023年12月21日時点での情報をもとにしています ▼死にゆく恒星が残した惑星状星雲と超新星残骸【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測された惑星状星雲「環状星雲(M57)」(Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, M. Barlow, N. Cox, R. Wesson)】こちらは「こと座(琴座)」の方向約2500光年先の惑星状星雲「環状星
soraeでは今年も宇宙開発や天文に関する注目のニュースをお伝えしてきました。そこで、2023年にお伝えしたニュースのなかから注目された話題をピックアップしてみたいと思います。今回は再び活発になりつつある月探査の動きに注目してみたいと思います! ※本記事は2023年12月21日時点での情報をもとにしています ■インドの月探査ミッション「チャンドラヤーン3号」が同国初の月着陸に成功【▲ チャンドラヤーン3号のローバー「Pragyan」に搭載されているカメラで2023年8月30日に撮影されたランダー「Vikram」(Credit: ISRO)】2023年の月探査最大のトピックはインド宇宙研究機関(ISRO)の月探査ミッション「Chandrayaan-3(チャンドラヤーン3号)」です。日本時間2023年8月23日21時32分、チャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)は月の南極点から約600km離
鉄より重い元素が、宇宙でどのように生成されるのかはよくわかっていません。生成過程を調べるヒントの1つは古い年代の恒星に含まれている元素の比率で、生成過程を考察する上で注目されます。 ミシガン大学のIan U. Roederer氏などの研究チームは、天の川銀河にある42個の恒星の元素存在量を詳しく調べ、元素の生成過程を推定しました。その結果、「r過程」によって原子量260以上(※1)の原子核が大量に生成され、その後の自発核分裂で銀や重いランタノイド(※2)などの中程度の重さの元素が生成されたことが分かりました。これは重い元素の生成過程を調べる上で重要な発見です。 ※1…原子核に含まれる陽子と中性子の合計数を原子量と呼びます。 ※2…ランタン(原子番号57)からルテチウム (原子番号71) までの元素の総称。液晶ディスプレイや永久磁石など、先端産業に欠かせない用途を持つ元素が多数含まれています
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年12月25日、小型月着陸実証機「SLIM」の月周回軌道投入に成功したと発表しました。SLIMは早ければ日本時間2024年1月20日に月着陸を実施する予定です。【最終更新:2023年12月26日14時台】 【▲ 月周回軌道に到着した小型月着陸実証機「SLIM」の想像図(Credit: JAXA)】月面へのピンポイント着陸技術を実証するために開発されたSLIMは、JAXAのX線分光撮像衛星「XRISM」とともに「H-IIA」ロケット47号機に相乗りする形で、2023年9月7日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。打ち上げから約1か月後の2023年10月4日には地球を公転する月の重力を利用して軌道を変更する月スイングバイが実施されており、SLIMは月を一度離れてから再び接近する軌道上で2か月半余りに渡って飛行を続けていました。 JAXAによると、
Image Credit: Michael Osadciw/University of Rochester sorae - 動き続ける星々。太陽は数万年ごとに別の恒星と接近している? こちらは、soraeが2020年5月25日の記事内で紹介した『赤色矮星(中央)と褐色矮星(右側)から成る連星「ショルツ星」を描いた想像図』です。 2015年に発表された研究結果によると、ショルツ星は今からおよそ7万年前に太陽から約0.8光年のところを通過していったとされています。研究者は、ショルツ星が長周期彗星の起源と考えられている太陽系のオールトの雲の外部領域をかすめていった可能性を指摘しています。 ※太陽から最も近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」までの距離が約4.24光年 小さく暗いショルツ星は最接近時でも10等程度の明るさだったとみられていますが、赤色矮星では強力なフレアが発生することがあり、ショルツ星
NASA(アメリカ航空宇宙局)の小惑星探査機「Psyche(サイキ)」には「深宇宙光通信(DSOC; Deep Space Optical Communications)」と呼ばれる実験的な光通信装置が搭載されています。将来的な宇宙探査ミッションでの需要が見込まれる大容量のデータ送信を想定した実験であり、初の通信は2023年11月14日に行われました。 Psycheから地球までの距離が約3100万kmとなった2023年12月11日、NASAのJPL(ジェット推進研究所)によって、深宇宙光通信実験装置の性能をテストするため、ネコの動画を含む15秒間のビデオ映像の送信テストが行われました。その結果、最大267Mbps (※1) という高速な通信速度を達成しました。これは従来の深宇宙探査機に対する通信と比べて100倍も高速であり、JPLによればほとんどのブロードバンドインターネット接続よりも高速
土星の衛星「エンケラドゥス」のプルームに有機物が含まれていることが検出されて以降、氷天体の下には広大な海があり、そこに生命がいるのかもしれない可能性が真剣に検討されています。しかし、プルームの噴出速度は約400m/sと高いため、生命活動によって発生するバイオシグネチャー分子が検出時に変質してしまう可能性が指摘されていました。 カリフォルニア大学サンディエゴ校のSally E. Burke氏などの研究チームは、エンケラドゥスのプルームを再現した、アミノ酸を含む氷の粒を加速して衝突させる実験を行いました。その結果、最速で4.2km/sでもアミノ酸はほとんど変質しないことが明らかにされました。今回の研究は、将来的な氷天体の探査ミッションでバイオシグネチャー分子を検出するための基礎的な研究となりそうです。 【▲図1: エンケラドゥスの南極地域から噴出する水のプルーム(Credit: NASA, J
アメリカ航空宇宙局(NASA)は2023年12月12日付で、惑星探査機「ボイジャー1号(Vayager 1)」に搭載されているコンピューターの一部で問題が起きていることを明らかにしました。エンジニアチームが解決に向けて取り組んでいるものの、探査機との通信には往復で2日近くを要することもあり、対策が決まるまでに数週間かかる可能性もあるようです。【最終更新:2023年12月13日11時台】 【▲ アーティストによる惑星探査機「ボイジャー」のイメージ図(Credit: Caltech/NASA-JPL)】問題が起きたのはボイジャーに搭載されているコンピューターの1つ「フライトデータシステム(Flight Data System:FDS)」です。FDSは科学機器で収集された観測データや探査機の状態に関する工学データを収集し、サブシステムの1つ「テレメトリ変調ユニット(Telemetry Modul
1989年10月、アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ガリレオ(Galileo)」が打ち上げられました。木星に到達するのに十分な速度を得るために、ガリレオはまず太陽系内を何度か周回し、地球や金星をフライバイ(接近通過)して加速する必要がありました。 【▲ ガリレオ探査機が600万km離れた場所から見た地球と月(Credit: NASA)】フライバイを行った時、ガリレオは本来の目的である木星探査に先立って地球を観測しました。その時、カール・セーガン(※1)率いる科学者グループは、ガリレオに搭載された観測機器から得られたデータを用いて地球上に「生命」を発見したのです。今からおよそ30年前のことです。 ※1…カール・セーガン(Carl Sagan、1934 - 1996):アメリカの天文学者。バイキング、ボイジャー、ガリレオなどの惑星探査計画に携わり、『コスモス』やSF小説『コンタクト』
宇宙には高エネルギーな粒子である「宇宙線」が飛び交っていますが、その中でも非常に極端なエネルギーを持つものは「超高エネルギー宇宙線(UHECR; Ultra-High-Energy Cosmic Ray)」と呼ばれています。超高エネルギー宇宙線がどこで発生しているのかは明らかになっていません。 超高エネルギー宇宙線の観測を行う「テレスコープアレイ実験」の国際研究チームは、2垓4400京電子ボルト(244エクサ電子ボルト、39ジュール)(※1) という桁違いに高エネルギーな宇宙線の観測に成功したと発表しました。この宇宙線は、観測史上2番目に高エネルギーな宇宙線であることなどを理由として「アマテラス粒子(Amaterasu particle)」と名付けられました。陽子であると仮定した場合、アマテラス粒子の速度は光の速さの99.99999999999999999999926%に相当します。 ※1
こちらは南天の「コンパス座」の方向約1万6000光年先にある天体です。紫色に着色された星雲が、まるで夜空に伸ばした人間の手のような形をしているのがわかりますでしょうか。 【▲ パルサー風星雲「MSH 15-52」。X線観測衛星「チャンドラ」とX線偏光観測衛星「IXPE」で取得したデータをもとに作成(Credit: X-ray: NASA/CXC/Stanford Univ./R. Romani et al. (Chandra); NASA/MSFC (IXPE); Infared: NASA/JPL-Caltech/DECaPS; Image Processing: NASA/CXC/SAO/J. Schmidt))】 「宇宙の手(Cosmic Hand)」とも呼ばれるこの天体は、パルサー風星雲「MSH 15-52」です。パルサー風星雲(パルサー星雲)は高速で自転する中性子星の一種「パルサ
アメリカの民間宇宙企業アストロボティック社は現地時間2023年10月31日、同社の月着陸船「Peregrine(ペレグリン)」が打ち上げ施設のある米国フロリダ州ケープカナベラルに到着したと発表しました。 アストロボティックが開発したPeregrineは最大120kgのペイロードを搭載できる月着陸船で、月面への輸送コストは1kgあたり120万ドルとされています。Peregrineの初飛行となるミッション「Peregrine Mission One(PM1)」の打ち上げでは、こちらも初飛行となるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の新型ロケット「Vulcan(ヴァルカン、バルカン)」が使用されます。PM1のPeregrineを搭載したVulcanロケットは、早ければ2023年12月24日にケープカナベラル宇宙軍基地第41発射施設から打ち上げられる予定です。
米宇宙企業ヴァージン・ギャラクティックは日本時間11月3日未明、宇宙船「スペースシップツー “VSS Unity”」による同社5回目の商業宇宙飛行ミッション「Galactic 05」を実施しました。6名のクルーを乗せたVSS Unityは高度80km以上の宇宙空間(※)へ到達した後に、無事地上へ帰還しています。【2023年11月3日13時】 【▲ Galactic 05ミッションで準軌道飛行中のヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップ・ツー “VSS Unity”」(Credit: Virgin Galactic)】 ヴァージン・ギャラクティックによると、空中発射母機「ホワイトナイトツー “VMS Eve”」に吊り下げられたVSS Unityは、日本時間2023年11月3日0時ちょうど(米国山岳部夏時間11月2日9時)に米国ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカを離陸。高度
太陽活動に伴う「太陽嵐」は、大規模なものでは現代の文明に致命的な影響を与えかねません。そのような活動は過去何度も繰り返されてきたと見られていますが、過去の太陽活動を知るのは容易ではありません。 エクス=マルセイユ大学のEdouard Bard氏などの研究チームは、年代測定で重要な「炭素14」の濃度を調べる研究を行ったところ、紀元前1万2351年からの1年間という非常に正確な年代の範囲内で、炭素14の発生量が顕著に増大した「三宅イベント(Miyake event)」があることを突き止めました。他の角度からの調査も合わせると、紀元前1万2351年の三宅イベントは知られている中で最大の太陽嵐の痕跡であると見られています。今回の研究と校正によって得られた年代測定は精度が高く、これほど細かく年数を書くことができるという点も重要です。 【▲図1: 太陽から放出される大量の荷電粒子は、地球の磁気圏と相互
インド宇宙研究機関(ISRO)は10月21日、開発中の有人宇宙船「Gaganyaan(ガガンヤーン)」で使用される緊急脱出システムの飛行試験を実施しました。緊急脱出システムは予定通りに作動し、ガガンヤーンの有人宇宙飛行に向けた一歩となる今回の試験は成功裏に終了したということです。【2023年10月24日10時】 【▲ インドの新型有人宇宙船「Gaganyaan(ガガンヤーン)」の緊急脱出システム飛行試験のために打ち上げられた「TV-D1」ミッションの試験用ロケット(Credit: ISRO)】ガガンヤーンはインド初の有人宇宙船として開発が進められている3人乗りの宇宙船で、クルーが搭乗するクルーモジュール(Crew Module:CM)とエンジンや太陽電池を搭載したサービスモジュール(Service Module:SM)で構成されます。打ち上げには「LVM3(Geosynchronous S
恒星から極めて近い距離を公転する「ホット・ジュピター」は多数の恒星に存在することが分かっていますが、太陽はホット・ジュピターを持たない例外的な恒星の1つです。なぜ存在しないのでしょうか? JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宮﨑翔太氏と大阪大学の増田賢人氏の研究チームは、太陽のような年齢の古い恒星にはホット・ジュピターが少ない傾向にあることを突き止めました。これは太陽系にホット・ジュピターが存在しない理由となるとともに、太陽と似た恒星の中では、太陽系がそれほど少数派ではない可能性を示唆しています。 【▲ 図1: 典型的なホット・ジュピターの想像図。発見時は常識外れに見られていたホット・ジュピターですが、現在では発見そのものは珍しくないほどの多数派となっています(Credit: NASA, JPL-Caltech, R. Hurt)】■ “常識外れ” から多数派となった「ホット・ジュピター」天
正体不明の「暗黒物質(ダークマター)」を仮定せずに宇宙の重力の謎を説明できるとされる「修正ニュートン力学」は興味深い仮説ですが、あまり多くの支持を受けてはいません。特に、恒星や銀河程度のスケールと比べて距離が短い太陽系程度のスケールにおける修正ニュートン力学の効果は、これまでに説明されたことがありませんでした。 ハミルトン大学のKatherine Brown氏とケース・ウェスタン・リザーブ大学のHarsh Mathur氏の研究チームは、修正ニュートン力学の下で太陽系外縁天体の公転軌道のシミュレーションを行った結果、軌道に偏りが生じたことを明らかにしました。これは、短い距離における修正ニュートン力学の効果を示した初めての事例であるとともに、太陽系外縁部に未知の惑星があるとする「プラネット・ナイン」仮説を否定するものです。 ただし、結果の前提となるデータ量の限界から、この結果が偶然生じたもので
スペースXは日本時間2023年10月13日に、「ファルコン・ヘビー」ロケットの打ち上げを実施しました。搭載されていたアメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査ミッション「Psyche(サイキ)」の探査機はロケットから正常に分離されたことを、スペースXとNASAがSNSや公式サイトにて報告しています。 打ち上げに関する情報は以下の通りです。 ■打ち上げ情報:ファルコン・ヘビー(Psyche)ロケット:ファルコン・ヘビー 打ち上げ日時:日本時間2023年10月13日23時19分【成功】 発射場:ケネディ宇宙センター(アメリカ) ペイロード:小惑星探査ミッション「Psyche(サイキ)」探査機 Psycheは火星と木星の間に広がる小惑星帯を公転する最大幅280kmの小惑星「16 Psyche(プシケ)」の周回探査を目的としており、低コスト・高効率な探査を目指すNASAの「ディスカバリー計画」14
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