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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年4月24日午前(日本時間・以下同様)、X(旧Twitter)の小型月着陸実証機「SLIM」プロジェクト公式アカウントにて、SLIMが着陸地点で3回目の越夜(夜を越すこと)に成功したと発表しました。【最終更新:2024年4月24日12時台】 【▲ 3回目の越夜成功後にSLIMの航法カメラで撮影された月面の様子(非圧縮データ)。JAXAがXのSLIM公式アカウントを通して2024年4月26日に公開(Credit: JAXA)】 SLIMは2024年1月20日0時20分頃に日本の探査機として初めて月面へ軟着陸することに成功しました。ただ、2基搭載されているメインエンジンの1基で着陸直前に生じたトラブルによって想定外の速度や姿勢で接地することになったため、機体は太陽電池を西に向けて逆立ちしたような姿勢で安定しています。 着陸直後に電力を得られなかったSL
アメリカの民間宇宙企業ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は2024年4月10日(日本時間・以下同様)、同社の「Delta IV Heavy(デルタIVヘビー)」ロケットによる打ち上げミッション「NROL-70」でアメリカ国家偵察局(NRO)の偵察衛星を打ち上げることに成功しました。デルタIVヘビーは今回のNROL-70が最後の打ち上げミッションで、ULAが今後運用するロケットは新型の「Vulcan(ヴァルカン、バルカン)」へ置き換わります。 【▲ 発射施設で打ち上げを待つデルタIVヘビー(Credit: ULA)】 ■NROL-70打ち上げの様子 NROの偵察衛星を搭載したデルタIVヘビーは、2024年4月10日1時53分(アメリカ東部夏時間2024年4月9日12時53分)にアメリカ・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第37発射施設から打ち上げられました。ULAによると、発
宇宙の最も基本的な力の1つである「重力相互作用」には「重力子」と呼ばれる素粒子を媒介することで伝わるという説がありますが、今のところ重力子は未発見です。このため、重力子が量子力学の世界でどのような振る舞いをするのかは、理論的にしか分かっていません。 南京大学のJiehui Liang氏などの研究チームは、「分数量子ホール液体」と呼ばれる非常に特殊な状態に置かれた電子の中に、「カイラル重力子モード(CGM; Chiral Graviton Mode)」と呼ばれる振る舞いを示すものがあることを初めて実験的に観察することに成功しました。カイラル重力子モードは重力子そのものとは全くの別物であるものの、一部の性質が共通しているという特徴があります。 カイラル重力子モードは「分数量子ホール液体」に関わる研究で目標とされていた合成物の1つであり、重力子の性質を部分的にでも探ることができる手掛かりとなるか
木星の衛星「エウロパ」の内部には広大な海が広がっていると考えられていますが、表面を分厚い氷が覆っているため、直接の確認はできていません。では、この氷殻の厚さはどのくらいなのでしょうか? パデュー大学の脇田茂氏などの研究チームは、天体衝突によって形成されるリング構造が幾重にも重なった盆地地形が氷殻の厚さや硬さに関連しているという前提の下、国立天文台が運用する「計算サーバ」でシミュレーションを行いました。その結果、氷殻の厚さが少なくとも20km無ければエウロパに存在する多重リング盆地を説明できないことが分かりました。この研究結果は、あまりはっきりと分かっていないエウロパの構造に関する基本的な情報を与えているという点で重要です。 【▲ 図1: 多重リング盆地を作るような大規模衝突の想像図 (Credit: Brandon Johnson (AI生成) ) 】■「エウロパ」の氷の厚さはどれくらい?
望遠鏡やカメラのような光学機器では、光を反射や屈折させるだけでなく、不要な光を遮断することも重要です。光を99%以上吸収する黒色物質はいくつか開発されていますが、非常にもろい構造をしているなどの理由で、過酷な宇宙空間での使用に耐えられるか疑問視されていました。 上海理工大学のJianfei Jin氏などの研究チームは、非常に頑丈な超黒色膜(ウルトラブラックフィルム)を開発しました。これは炭化チタンアルミニウムと二酸化ケイ素を交互に重ねたもので、紫外線から近赤外線までの幅広い波長の光を平均99.4%吸収します (※)。また、これまでの黒色物質と違い、熱や摩擦といった物理的なダメージに強く、ほとんど吸収率が低下しません。これらの性質から、この超黒色膜は宇宙のような過酷な環境でも使用できる可能性があります。 ※…平均吸収率について、論文では99.4%となっている一方、プレスリリースでは99.3%
初期の天の川銀河は、複数の小さな銀河が合体して誕生したと言われています。近年、恒星の位置や運動方向に関する大規模なデータが揃ったことにより、合体した銀河の痕跡を具体的に知ることができるようになりました。 マックス・プランク天文学研究所のKhyati Malhan氏とHans-Walter Rix氏の研究チームは、大量の恒星が記録されている「ガイア」と「スローン・デジタル・スカイサーベイ」のデータを組み合わせて分析し、合体した銀河の痕跡を探りました。その結果、今から約120~130億年前という極めて初期の時代に天の川銀河と合体したと推定される、2つの銀河の痕跡を発見することに成功しました。両氏はこれらの銀河をヒンドゥー教の神話に因み「シャクティ(Shakti)」と「シヴァ(Shiva)」と名付けています。 【▲ 図1: 天の川銀河におけるシャクティ (ピンク色) とシヴァ (緑色) に属する
ほぼ全ての巨大な銀河の中心部には「超大質量ブラックホール」があると考えられていますが、その中には最大で太陽の数百億倍という途方もない質量を持つものがあります。こうしたブラックホールもより小さなブラックホールが合体して生じたと考えられていますが、そのメカニズムを考えると「合体しているはずのないブラックホールが合体している」という奇妙な矛盾に突き当たります。これは「ファイナルパーセク問題」と呼ばれています。 スタンフォード大学のTirth Surti氏などの研究チームは、ジェミニ北望遠鏡による観測データから、活動的な銀河「4C+37.11(B2 0402+379)」にある超大質量ブラックホールの性質を分析しました。その結果、4C+37.11の中心部にある超大質量ブラックホールは、総質量が太陽の280億倍であることを突き止めました。4C+37.11の中心部にあるブラックホール同士はお互いにわずか
天の川銀河にある恒星の約97%は、最終的に「白色矮星」という天体を残します。白色矮星は核融合反応が停止した “死んだ星” であり、持っていた熱を徐々に放出し冷えていきます。しかし近年、この説明が当てはまらず、数十億年も冷却が停止していると見られる白色矮星が次々と見つかっています。白色矮星の熱は年齢を推定する指標となっているため、 “年を取らない” プロセスがあることは重要です。 ウォーリック大学のAntoine Bédard氏、ビクトリア大学のSimon Blouin氏、およびプリンストン高等研究所の程思浩氏の研究チームは、白色矮星の内部をモデル化した研究を行いました。その結果、固化した小さな塊が浮上することによって生じる重力エネルギーによって、白色矮星の表面温度が80億年以上も一定に保たれるほどの熱が発生することを突き止めました。この結果は、白色矮星の年齢を指標とした様々な研究に影響を与
木星の衛星「エウロパ」は、内部に広大な海が広がっていると考えられている天体の1つです。海には表面の氷が分解して生じた酸素が供給されていると考えられているため、酸素呼吸を行う生命がいれば貴重な供給源となっている可能性があります。しかし、エウロパの酸素発生量は推定するためのデータが乏しく、推定される最小値と最大値との間で1000倍もの幅がありました。 プリンストン大学のJ. R. Szalay氏などの研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の木星探査機「ジュノー」の観測データに基づき、エウロパ表面での酸素発生量を推定しました。その結果、酸素発生量は毎秒6~18kgであると推定されました。これは比較的少ない発生量となり、酸素呼吸を行う生命にとっては不足であるかもしれません。 【▲図: エウロパの表面では、氷の分解による酸素が発生し、海に供給されていると考えられています。今回の研究は、酸素の推
【▲ 火星の地表を舞うレゴリス粒子の想像図(Credit: NASA/AI. SpaceFactory)】 アメリカ航空宇宙局(NASA)の副長官(当時)であったJames Reuter氏は、2023年5月にワシントンで開催された「Humans to Mars Summit」の席上、2040年までに火星への有人飛行を実現することがNASAにとって重要な目標であると発言しました。言葉通りならあと16年以内に実現されることになる有人火星探査ですが、火星行きの有人宇宙船の開発、長期間のミッションで宇宙飛行士が直面する心理的・生理的・物理的影響の克服など、多くの難題が予想される中、人類が目的地である火星で安全に居られるためにも解決すべき課題が残されているようです。 【▲ 2023年に開催されたHuumans to Mars Summitの様子】 (Credit: Space.com) こうした課題
地球の公転軌道は長い時間の中で少しずつ変化することが知られており、過去に起きた極端な気候変動の原因となっているのかもしれません。しかし、公転軌道の変化を数学的に解析することは困難であり、過去の公転軌道を正確に予測できるのは5000万~1億年前までが限界であると考えられてきました。 しかし、オクラホマ大学のNathan A. Kaib氏とボルドー大学のSean N. Raymond氏によれば、地球の公転軌道を正確に予測できる期間はさらに約10%ほど短くなるようです。これまでの計算ではあまり考慮されていなかった、太陽系の近くを恒星が通過したことで巨大惑星の軌道が乱される影響を考慮した両氏は、5000万年より短い期間であっても正確な軌道予測が困難であることを突き止めました。 【▲図1: 恒星HD 7977の接近を考慮した地球の公転軌道の変化の計算結果。1点1点が、特定の時点での公転軌道の性質 (
人類の活動は確実に地球環境を変えてきました。これを踏まえ、新しい地質年代として「人新世」を創設することが提唱され、2009年から国際地質科学連合の作業部会で議論が行われてきました。正式に地質年代として登録されるには、全部で3段階の議論が必要です。 国際地質科学連合の下部組織である第四紀層序小委員会にて2024年2月1日から6週間かけて審議と投票が行われた結果、人新世の創設は過半数の反対票で否決されました。ただし、この決定は人類が地球環境を変えたことを否定するものではなく、むしろ人新世という地質年代の重要性を鑑み、人類による環境改変を過小評価しないための否決であると言えます。 【▲図1: カナダ東部にあるクロフォード湖の湖底堆積物は、今回の案で人新世の基準となる地層として選ばれていました(Credit: Whpq (WikiMedia Commons / CC BY-SA 4.0) )】 ■
スペースワンは日本時間2024年3月13日、「カイロス(KAIROS)」ロケットの打ち上げを実施しましたが、機体が爆発して打ち上げは失敗した模様です。 打ち上げに関する情報は以下の通りです。 ■打ち上げ情報:カイロス初号機 ロケット:カイロス 打ち上げ日時:日本時間2024年3月13日11時1分【失敗】 発射場:スペースポート紀伊(日本) ペイロード:短期打上型小型衛星 カイロスはスペースワンが開発した3段式固体燃料ロケットで、今回は初号機による初飛行です。ペイロードには内閣衛星情報センターの「短期打上型小型衛星」が搭載されました。短期打上型小型衛星は日本の情報収集衛星に不測の事態が発生した際に、短期間で打ち上げ可能で一定期間代替できる小型衛星の実証研究を実施するために開発された衛星です。 カイロス初号機は3月9日に予定されていた打ち上げが一旦延期された後、日本時間2024年3月13日11
「UFO」というとオカルトか何かのイメージが強いかと思われますが、実際には国防や科学研究といった真面目な場でも議論の対象となります。ただし、UFOという用語に付きまとうイメージから、科学的な研究は敬遠される傾向にありました。 ユタ大学のR. M. Medina氏とS. C. Brewer氏、およびアメリカ国防総省のS. M. Kirkpatrick氏は、アメリカ合衆国で目撃された12万件以上に渡るUFOの目撃情報を分析し、UFOが現れる場所には地域的な偏りがあることを発見しました。特に西側地域は、UFOが目撃されるホットスポットです。この偏りは、目撃情報のほとんどが実際に何らかの飛行物体を目撃している可能性が高く、全くの捏造やデマはそれほど多くはないことを示唆しています。個々の正体は相変わらず “未確認” であるものの、その地域の特性から航空機である可能性が高いかもしれません。 【▲図1:
「ブラックホール」は現代物理学が破綻する領域であるため、それを回避するための理論的な提案がいくつも出されています。代表的な回避策の1つは「グラバスター(Gravastar)」です。 ライプツィヒ大学理論物理学研究所のDaniel Jampolski氏とLuciano Rezzolla氏は、「アインシュタイン方程式」を解くことで現れるグラバスターについて研究し、「グラバスターの中にグラバスターがある天体」が存在可能であることを示しました。この入れ子構造は何重にも可能であるため、両氏はこの天体を「ネスター(Nestar)」と名付けました。 ネスターが実際に存在するかどうかは分かりませんが、この研究結果は重力に関する数学的な視野を広げることに繋がるでしょう。 【▲図: 今回の研究で予言されたネスターは、グラバスターの入れ子構造となっています。 (Credit: Daniel Jampolski
キヤノン電子株式会社は2024年2月22日、同年2月17日に「H3」ロケット試験機2号機で打ち上げられた小型光学衛星「CE-SAT-IE(シーイー・サット・ワンイー)」により初めて撮影された画像を公開しました。 【▲ 小型光学衛星「CE-SAT-IE」の副光学系として搭載されたキヤノン製のコンパクトデジタルカメラ「PowerShot S110」により撮影された画像(Credit: キヤノン電子)】こちらは副光学系カメラとしてCE-SAT-IEに搭載されているキヤノン製のコンパクトデジタルカメラ「PowerShot S110」で撮影されたカリフォルニア湾の様子です。カリフォルニア湾は2005年に「カリフォルニア湾の島々と自然保護区域」として世界自然遺産に登録されました。画像は約1000kmに及ぶカリフォルニア湾と保護地域群が地球の輪郭と共に写し出されています。 キヤノン電子が開発した小型光学
太陽系には、分厚い氷の下に地球を超える規模の海が存在すると予想されている天体がいくつもあります。このような環境は生命の存在を予感させますが、果たして液体の水の存在が “保証” されれば生命がいるかもしれないと考えていいのでしょうか? ウェスタンオンタリオ大学のCatherine Neish氏などの研究チームは、天体表面に豊富な有機化合物を有し、地下に海があるかもしれないと推定されている土星の衛星「タイタン」について、地表から地下へと輸送される有機化合物の量を推定しました。その結果、有機化合物の輸送量はグリシン換算で7500kg/年以下と、生命の維持には到底足りない量であると推定されました。 有機化合物が豊富なタイタンでさえ生命の維持が困難であることを示した今回の研究は、他の天体ではより条件が悪い可能性を示唆しています。 【▲図1: タイタンの内部構造の想像図。氷の地殻の下には分厚い海が広が
アメリカの民間企業インテュイティブ・マシーンズとアメリカ航空宇宙局(NASA)は日本時間2024年2月29日、インテュイティブ・マシーンズの月着陸ミッション「IM-1」の月着陸船「Nova-C(ノバC)」が月面で撮影した新たな画像を公開しました。同日に開催されたテレカンファレンスでは着陸時のより詳しい状況が語られています。【最終更新:2024年2月29日12時台】 IM-1はインテュイティブ・マシーンズ初の月着陸ミッションで、着陸船のNova-Cにはアメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月輸送サービス(CLPS)の下で選定された6つのペイロードと民間の6つのペイロード、合計12のペイロードが搭載されています。 IM-1ミッションのNova-Cは日本時間2024年2月15日にスペースXの「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットで打ち上げられた後、日本時間2024年2月23日8時24分に月面
どの恒星の周りも公転していない「自由浮遊惑星」はどのように生成されるのでしょうか?従来の理論では惑星系内の破滅的なダイナミクスの結果であると考えられていますが、その場合には自由浮遊惑星は単独で存在することになります。 メキシコ国立自治大学のLuis F. Rodríguez氏、Laurent Loinard氏、そしてLuis A. Zapata氏の研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の観測で2023年に発見されたばかりの連星関係にある自由浮遊惑星の候補、全42組を「VLA (カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群)」で観測しました。その結果、唯一「JuMBO 24」の観測に成功し、連星関係の自由浮遊惑星であるという追加の証拠が得られました。このような連星関係の自由浮遊惑星の生成は従来の形成論ではうまく説明できないため、興味深い観測対象として注目されています。 【▲図1: 連
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年2月26日13時半頃、X(旧Twitter)の小型月着陸実証機「SLIM」プロジェクト公式アカウントにて、着陸地点が夜を迎えるため休眠状態に入っていたSLIMが夜を越してコマンド送信に応答したと発表しました。SLIMの運用は通信機器の温度が下がってから再開できるように準備が進められる予定です。【最終更新:2024年2月27日10時台】 【▲ 参考画像:小型月着陸実証機「SLIM」から放出された探査ロボット「LEV-2(SORA-Q)」のカメラで撮影された画像。大きく傾きつつ接地した状態のSLIMが右奥に写っている。画像は試験画像で、もう1機の探査ロボット「LEV-1」経由の試験電波データ転送により取得されたもの(Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)】SLIMは日本時間2024年1月20日0時20分頃に日本の探
地球はその歴史の中で、表面全体が氷河に覆われる「全球凍結(スノーボールアース)」が何度か起こったと推定されています。しかし、なぜ全球凍結が起きたのか、またどのように “解凍” されたのかについてのメカニズムはほとんど分かっていません。 約7億年前に起こったとされる全球凍結レベルの極端な氷河期「スターティアン氷期」の発生原因を、地質記録とシミュレーションによって調査したシドニー大学のAdriana Dutkiewicz氏などの研究チームは、火山からの二酸化炭素放出量が少なくて岩石の風化による二酸化炭素の吸収が多かったために、大気中の二酸化炭素濃度が現在の半分以下まで減少したことが原因であると推定した研究成果を発表しました。興味深いことに、この状況は遠い未来に地球で起こる状況と似ています。 【▲図1: 全球凍結した地球の想像図(Credit: Oleg Kuznetsov)】■赤道すら凍りつく
銀河の中心部には巨大なブラックホールが存在すると考えられています。そうなると必然的に生じるのが「銀河が先か、ブラックホールが先か」という疑問です。これまでは銀河が形成された後にブラックホールが誕生したというのが定説でした。 しかし、ソルボンヌ大学のJoseph Silk氏などの研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」による初期宇宙の観測データとシミュレーション結果を組み合わせた結果、銀河とブラックホールはほぼ同時に誕生し、ブラックホールが銀河の星形成を加速したとする研究結果を発表しました。これはウェッブ宇宙望遠鏡の観測で示された初期の銀河が予想より多く存在する可能性を裏付ける成果です。 【▲図1: 初期宇宙の銀河の活動の模式図。中心部のブラックホールの活動が活発化すると、その放射によって周りのガスが押しのけられ、恒星の形成が促されます(Credit: Roberto Molar C
こちらは、soraeが2020年10月24日の記事内で紹介した『惑星や準惑星、太陽、月の比較動画。サイズや自転の違いがよくわかる動画』です。この動画は、太陽系の8惑星と2つの準惑星(冥王星とケレス)、それに太陽と月を比較したものです。※上の動画はsoraeが解説付きで再編集したものです。 動画は地球の衛星である「月(Moon)」と準惑星の「冥王星(Pluto)」「ケレス(Ceres)」の比較から始まります。2006年まで惑星に分類されていた冥王星(直径約2370km)ですが、そのサイズは月(直径約3470km)よりも小さいことが一目でわかります。 視点がズームアウトするにつれて太陽に近い「地球(Earth)」「金星(Venus)」「火星(Mars)」「水星(Mercury)」と、太陽から遠い「木星(Jupiter)」「天王星(Uranus)」「海王星(Neptune)」「土星(Saturn
2015年に「重力波」の観測に成功して以降、現在の天文学は重力波を宇宙の観測手段とする段階に入っています。岐阜県飛騨市に設置された大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」は、重力波の詳細な観測を行うため、他国の重力波望遠鏡と連携していました。 しかし、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」でKAGRAの装置の一部が損傷を受けたことが判明し、詳細な被災状況が2月5日に報告されました。現時点では具体的な時期は未定なものの、KAGRAは2025年1月の共同観測期間終了前までに観測運転を再開することを目標としています。 【▲図1: 神岡鉱山坑道内に設置されたKAGRAの一部(Credit: 東京大学宇宙線研究所 & 国立天文台)】■「重力波」は本格的な天文観測の手段となりつつある1915年にアルベルト・アインシュタインが提唱した一般相対性理論では、重力に関する様々な現象が予言されていました
米国の民間宇宙企業スターラボ・スペース(Starlab Space)は現地時間2024年1月31日、同社の商業宇宙ステーション「Starlab(スターラボ)」の打ち上げにスペースXの「Starship(スターシップ)」を利用すると発表しました。スターラボ・スペースによると、スターラボはスターシップを使えば1回で打ち上げることが可能だということです。 【▲ 民間宇宙企業スターラボ・スペースが開発中の商業宇宙ステーション「スターラボ」のイメージ図(Credit: Starlab Space)】地球低軌道(LEO)に投入される予定のスターラボは微小重力環境を利用した科学実験を行うことが可能で、4名が恒久滞在できるとされています。スターラボ・スペースは具体的な打ち上げ時期を明言していませんが、発表の中で「国際宇宙ステーション(ISS)の運用終了前に打ち上げる予定」と述べています。 アメリカ航空宇宙
スミソニアン協会のThomas Wattersさんを筆頭とする研究チームは、火星の「Medusae Fossae Formation(メデューサエ溝状層、以下MFF)」と呼ばれる地域に氷(水の氷)を含む厚い堆積層が存在する証拠を示した研究成果を発表しました。堆積層の厚さは最大で3.7kmに達し、火星全体を深さ1.5~2.7mで覆えるほど大量の水が氷として存在する可能性があるようです。研究チームの成果をまとめた論文はGeophysical Research Lettersに掲載されています。 【▲ 火星のメデューサエ溝状層(Medusae Fossae Formation:MFF)の位置を示した図。MFFはオリンポス山(Olympus Mons)の南西、赤道(Equator)のすぐ南に位置している。画像の色は標高に応じて着色されている(Credit: ESA)】欧州宇宙機関(ESA)によると
私たちの宇宙について、広い目線で見れば天体や物質の分布が均質であるという「宇宙原理」が広く信じられています。しかし近年の観測では、宇宙原理に反すると思われる巨大構造物(宇宙の大規模構造)がいくつも見つかっています。 セントラル・ランカシャー大学のAlexia Lopez氏は、地球から約92億光年離れた位置(※)に、直径が約13億光年にも達する巨大構造物「ビッグ・リング(Big Ring)」を発見したと、アメリカ天文学会(AAS)の第243回会合の記者会見で発表しました。Lopez氏は2021年にも同様の巨大構造物である「ジャイアント・アーク(Giant Arc)」を発見していますが、両者は非常に近い位置と距離にあります。これは宇宙原理に疑問を呈する発見です。 ※…この記事における天体の距離は、光が進んだ宇宙空間が、宇宙の膨張によって引き延ばされたことを考慮した「共動距離」での値です。これに
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年1月25日、日本の探査機として初めて月面に軟着陸した小型月着陸実証機「SLIM」および小型プローブ(探査ロボット)「LEV-1」「LEV-2(愛称:SORA-Q)」の月面着陸結果・成果等に関する記者会見を開催しました。 JAXAによると、SLIMは2基搭載されているメインエンジンのうち1基を降下中に喪失するトラブルに見舞われたものの、最終的に着陸目標地点から約55m離れた地点へ接地しており、大きな目的だった精度100mのピンポイント着陸技術実証を達成しました。また、放出されたLEV-1とLEV-2も月面に到達して活動を行ったことが確認されており、LEV-2のカメラで撮影されたSLIMの画像が公開されています。【最終更新:2024年1月25日18時台】 【▲ 小型月着陸実証機「SLIM」から放出された探査ロボット「LEV-2(SORA-Q)」のカメ
重い恒星の寿命の最期に、その中心核が「中性子星」となるのか、それとも「ブラックホール」となるのかは、中心核の質量によって決まると考えられています。ですが、その境界線がどこにあるのか、理論的にも観測的にも正確な位置はよくわかっていません。 マックスプランク電波天文学研究所のEwan D. Barr氏らの研究チームは、ミリ秒パルサー「PSR J0514-4002E」の詳細な観測を行い、PSR J0514-4002Eに伴星があることを発見しました。興味深いことに、伴星の質量は太陽の2.09~2.71倍であり、ちょうど中性子星とブラックホールの境界線に位置しています。発見者が “天の川の謎の天体(a mysterious object in Milky Way)” と表現している正体不明の伴星は、天文学や物理学において注目されるでしょう。 【▲図1: ミリ秒パルサーPSR J0514-4002E
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