竹中優子『輪をつくる』角川文化振興財団,2021年 壮大な二元論に組み込まれた固有名詞が、まず面白い。 人類を二分する際に、「森口博子を知る者と知らない者」という二分法は間違いなく粗い。森口博子を知っているのは基本的には日本人の一部に過ぎないだろう(ガンダムの主題歌の関係でいくらかの国際的な知名度はあるかも知れないが…)。日本国民のうち森口博子を知っている人の割合は想像がつかないのだけれど、約半数だとしても五千万人程度であり、残りの人類と張り合うには心許ない。 ただ、なんとなく、一首の起点のようなものはわかる気がする。 例えば、職場などの集団にいて、森口博子を知っている人と知らない人に二分されることはあり得る。その線引きは、世代的なものになるかも知れないし、趣味的な差異の表出になるかもしれないし、芸能人の解像度の違いがあらわれたものになるかも知れないが、いずれにせよ、そういう状況は存在し得