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2024年5月2日 田中 宇 国連安保理で3月28日、核兵器開発を続ける北朝鮮に対する経済制裁(国連決議1718)の延長案を、ロシアが拒否権を発動して潰した。国連の北朝鮮制裁は2006年から続いており、否決は初めてだ。 北制裁の体制は、昨年まで14年間、安保理の全会一致で延長され続けてきた。だが、今後はロシアが拒否権を発動し続けるだろうから、北制裁の体制はこのまま消失する可能性が高い。 米国側(米欧日韓)は今後も北を制裁し続けるが、国連北制裁の消失で、露中BRICSなど非米側は堂々と北と貿易できるようになる。北は非米側との経済関係を拡大でき、国家崩壊の可能性が大幅に減る。 (Russia Finally Says 'Nyet' To Continued North Korea Sanctions Enforcement) 非米側の諸国は、ウクライナ開戦前から北を制裁しない傾向だった。国連決
2024年4月30日 田中 宇 10年以上前から私にとって国際情勢は「自分の見立て・分析・理性が、世の中の常識・主流分析と正反対・大きく食い違っていても、間違っているのは自分でなく世の中の方である場合が意外と多い」というものになっている。 「常識と理性が対立したら、理性の方が正しい」という考え方は、子供や社員や国民に対する教育(洗脳)の観点からよろしくないが、事実である。「教育」自体が、理性を潰す洗脳行為である。 (どっちが妄想なのか?) 私にとって「世の中の方が間違っていた」最初の案件は、911やイラク戦争前後からの「テロ戦争」だった。アルカイダやISは米諜報界が育て、米国の敵を演じさせられてきたが、世の中の常識(正しい見方)は、ISカイダを本物の敵として心底恐れ、米国に頼って退治してもらうべき、というものだった。 ハマスはイスラエルが敵として育て、今ではパレスチナ問題を丸ごと潰してエジ
2024年4月20日 田中 宇 この記事は昨日の続きです。 4月19日のイスラエルからの攻撃に対し、イランは「とりあえず、すぐには」反撃しないことにした。ゆくゆく反撃する可能性を残しているが、イスラエルがあらためてイラン本土に対してすごい攻撃をしてこない限り、イランはイスラエルを攻撃しないだろう。イランは「今朝イスラエルが攻撃してきたが、全部迎撃した。勝った」と豪語している。 イスラエルは依然として、シリアでイランが展開している軍事施設を攻撃している。今後もするだろう。昨日はレーダー網を空爆した。 イランは、シリア内戦でアサドを支援する名目で、イスラエルに隣接するシリアとレバノンに、傘下のシーア派民兵団の施設を展開し、イスラエルに脅威を与えている。 (Futures Reverse All Losses, Oil Slides After Iran Plays Down Israeli A
2024年4月7日 田中 宇 4月1日、イスラエル軍が、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館(の別館)を、戦闘機からのミサイル発射で破壊した。建物内で会議をしていたイラン軍(国軍より強い革命防衛隊)の最高幹部の一人、ムハンマド・ザヘディ(Mohammad Reza Zahedi)と、その部下たちが殺された。 (Multiple IRGC Generals Reported Killed In Israeli Attack On Iranian Embassy In Syria) ザヘディは、シリアとレバノンに展開する民兵団ヒズボラに武器弾薬を供給する担当だった。ヒズボラはイランの多数派と同じシーア派イスラム教徒だ。イランは、ヒズボラに武器を供給してシリアの米傀儡勢力(ISアルカイダ)やイスラエルを攻撃させ、シリアのアサド政権を助けてきた。 イスラエルとヒズボラは昔から断続的に戦闘してき
2024年4月2日 田中 宇 この記事は「欧露冷戦の再開」(田中宇プラス)の関連です。 3月22日の午後8時、モスクワ郊外のクロックスシティホール(Крокус-Сити-холл、6600人収容)で、ロシアの人気ロックバンド「ピクニック」の満員コンサートの開始直前に、武装して迷彩服を着た4人のテロリスト(タジク人の男)たちが押し入って銃を乱射し、火をつけてホールを炎上させた。144人が死亡し、550人が負傷した。 (Russian FSB Chief Says US, UK, and Ukraine Could Have Been Involved in Moscow Terror Attack) 事件後、実行犯たちは自家用車で逃走した。露当局は早期(事前?)に犯人たちの車を割り出し、高速道路上の監視カメラでナンバープレートを判読するデータベースから車を追跡した。犯人たちの車は、モスクワ
2024年3月6日 田中 宇 印度は、2年前のウクライナ開戦以来、米国側と非米側の両方の利権や協力関係に乗っかり、良いとこ取りしてちゃっかり独自の繁栄と台頭を続けている。昨秋には年率8%以上の経済成長をした。 (India ‘easily’ world’s fastest-growing economy – IMF) 印度は、昔から中国と国境紛争で対立・戦争しており中国敵視だ。その点で米国やG7、AUKUSから仲間と見なされ、クワッド(米日豪印)など米国側の中国包囲網に参加し、経済的・軍事外交的な利得を得ている。 また印度は昔から、イスラム主義のパキスタンと対立・戦争してきた。近年はヒンドゥ第一主義を掲げるモディ首相らBJPが権力を握り、イスラム敵視を国是に定め、アヨドヤのモスクをヒンドゥ寺院に作り替える案件や、国内ムスリムへの弾圧を続けている。 印度は、パレスチナ問題においてもイスラム敵
2024年3月3日 田中 宇 「紅海危機」の長期化が必至になっている。この危機は、昨年10月から続くイスラエルによるガザの虐殺に対抗して、イエメンを統治するシーア派イスラム主義の武装政治組織であるフーシ派が11月以来、イエメン沖の紅海を航行するイスラエル友好諸国(英米欧)の船舶を無人機などで攻撃し続け、欧米のタンカーなど商船が紅海を通れなくなっている事態だ。 (Reports Say Israeli Ship "Galaxy Leader" Hijacked By Houthi Terrorists) (Houthi: Yemen to introduce ‘military surprises’ in Red Sea operations) 米英軍が紅海に出向き、イエメンの海岸地帯のフーシ派拠点を攻撃しているが、ゲリラ出身のフーシ派の兵器の多くは可動式で逃げ足が早い。フーシ派の兵器は2-
2024年2月25日 田中 宇 イスラエルが3月後半に、ガザ最南部のラファに対する本格的な空爆や地上侵攻を開始する見通しになってきた。イスラエルは、イスラム世界が断食月(ラマダン)入りする3月10日までにハマスが人質全員(150人ほど)を解放しない場合、ラファ攻撃を開始すると宣言している。 イスラエルはすでに散発的にラファ周辺を空爆している。ハマスは少しずつしか人質を解放しておらず、3月10日までの全員解放はなさそうなので、イスラエルは3月15-25日ぐらいにラファを本格侵攻する可能性が高い。 (Israel Sets Timeline To Start Of Rafah Offensive, Issues Hamas An Ultimatum) 最南部のエジプト国境に面するラファと、その隣のハンユニスには150万人以上の避難民を含め、200万人以上のガザ市民のほとんどがいる。超過密状態だ
2024年2月22日 田中 宇 2月16日、ロシアの反体制・野党活動家のアレクセイ・ナワリヌイが、西シベリアの北極圏にある監獄で死亡した。ナワリヌイはもともと、リベラル派が極右とかネオナチと非難する民族主義者・ナショナリストで、2007年ごろから野党人士として有名になり、プーチン(メドベージェフ)政権を汚職理由で辞任要求する反政府運動を強めた。 (Russian Opposition Leader Alexei Navalny Dies In Jail) 政府側から反撃的な汚職捜査を受けて有罪にされたものの、2013年のモスクワ市長選への出馬を許されて28%という意外に高い得票を得て、ロシアを代表するプーチン批判者として欧米で注目されだした(その後は露国内での人気が落ち続けた)。 2020年に露国内を飛行機で移動中に体調が悪化して瀕死になり、ドイツに移送されて治療したが、体調悪化は露当局か
2024年2月13日 田中 宇 この記事は「印度に来た」の続きです。 最近12日間の旅行をした南印度は、意外と居心地が良かった。昼間は30度以上に暑くなるが、全く蒸し暑くない。快晴の日が多く、湿度が低いので日差しが鮮やかで、夏の北海道やロシア北欧カナダのようなクリアな感じがある。緑が豊かで景色が美しい。 朝晩は20度ぐらいで涼しく、半袖で肌寒いときもあり、海岸などの散歩にうってつけだ。未明から人の動きがある。印度人は日本人同様、ご来光(日の出)を見るのが好きだ。 都会は渋滞や排気ガスがすごくてつらいが、田舎は良い。田舎の食堂は大体ベジタリアンで肉がないが、コメや大豆、小麦を組み合わせた何種類かの主食に、カレー系などいろんな汁物を混ぜて手で食べる。60-200円ぐらい。あちこちに出店がある立ち飲みのチャイも甘くて美味しい。 印度の貧乏旅行は世界有数の苦行とされているが、南印度はそんなことない
2024年2月8日 田中 宇 国連の国際司法裁判所(ICJ)が1月26日、イスラエルがガザ戦争で、人道犯罪を禁止したジェノサイド条約に違反する虐殺行為=人道犯罪を犯したと認定する判決を出した。ICJは、イスラエルに対してガザでの即時停戦を命じた。 (Prevention and Punishment of the Crime of Genocide in the Gaza Strip) (Summary of the Order of 26 January 2024 (判決要旨)) この判決により、イスラエルは正式に「人道犯罪国」になった。日独と同じ「極悪」な国になった。イスラエルは日独みたいに、世界に向かって永久に「土下座」と「反省」を強要される国になった、はずだ。パレスチナ人の大勝利、なはずだった。 (International Court Says Israel Has Likely
2024年1月26日 田中 宇 1月15-19日のダボス会議は、地球温暖化や次のパンデミックなどインチキを口実に反対派を潰す全体主義の世界支配を加速する欧米の(リベラル)国際エリートたちが、米欧の草の根右派や非米側によって退治されていく流れの始まりになった観がある。 (‘Laughable’: Heritage Foundation Leader Bashes World Economic Forum During Davos Event) ダボス会議を主催するWEF(世界経済フォーラム)は、もともと企業家たちの独創性を国際政治に活かすためにダボス会議を始めたが、途中から、ネオコン的な隠れ多極主義の実現に協力し始めた。 温暖化対策やコロナ超愚策や諸々の「大リセット」は、人類の大多数を占める草の根の人々を怒らせることが究極の目的だ。WEFは、ダボス会議に集めた国際エリートたちが全体主義的な世
2024年1月21日 田中 宇 EUの大統領にあたる欧州委員長のフォンデアライエンが、先日行われたダボス会議の講演で「今後の2年間の最大の懸念事項は、戦争でも気候変動でもなく、ニセ情報(disinformation and misinformation)についてだ」と述べた。 私がこの発言に関して分析が必要だと思った点は、ウクライナ戦争や地球温暖化問題よりも「ニセ情報の取り締まり」が重要だと言っていることと、「今年」とか「いま」でなく「今後2年間」と言っていることだ。 (Watch: EU President Demands Globalist Control Over All Information) 近年のニセ情報をめぐる話は、正邪や善悪が逆転していて説明が複雑になる。EU政府が「ニセ情報」と呼んできたものの多くは、実のところニセ情報でなく、それと正反対の「正しい情報」だ。真のニセ情報
2024年1月19日 田中 宇 前からずっと紹介したいと思いつつ、他の事象にかまけてやれてなかったことに、ちょうど1年前にゼロヘッジが出した「ニュージーランドは、欧米諸国が庶民を細かく統制する(全体主義)体制作りの実験場なのか」と題する記事のことがある。以下は、要約というより、この記事をもとに私が考察したことだ。 (Is New Zealand A Beta Test For Western Governments Micromanaging The Populace?) ニュージーランドは昨年10月の選挙で政権転換するまでリベラル派の労働党政権で、2017年から昨年始めまでジェシンダ・アーダンが首相をしていた。アーダンは就任後、他の欧米諸国のリベラル派の政権がやっている地球温暖化対策や新型コロナ対策、インターネット検閲強化など、リベラル主義のふりをした(実は頓珍漢・超愚策・トンデモな)全
2024年1月11日 田中 宇 イスラエルが、ガザ戦争の第3段階に入ろうとしている。第1段階は、ガザ北部(市街地)を激しく空爆して市街を壊滅させ、市民を無差別にどんどん虐殺して恐怖のどん底に陥れ、市民の8割以上(190万人)を北部から南部に避難させた。 イスラエルは、ハマスのトンネル網を水没させる口実でガザ市街地の地中に大量の海水を注入して地盤を軟弱にし、市街地の再建を困難にした。その一方でハマスは、戦略的に重要なトンネル網を潰されたのに大して弱体化せず勢力を保っている。 (Israel’s Gaza withdrawal, a prelude to full-out war) イスラエルは40年前からハマスを敵として育ててきた。イスラエルの目的は表向き、ハマスを完全に潰すことだが、実は違う。ガザを住めない場所にして、市民(パレスチナ人)をエジプトなど外部に追い出す民族浄化をやり、ガザを空
2024年1月2日 田中 宇 私は以前から、ウクライナ戦争が長期化すると指摘してきた。この戦争は、米国側と非米側の世界的な強い分裂状態を作って固定化するために米中枢(諜報界の隠れ多極派。バイデンの大統領府はその配下)がロシアを挑発して起こしたものだ。分裂状態が長引くほど、非米側は露中主導で米覇権に頼らない新世界秩序を完成し、世界が多極化・非米化していく。 米中枢がそんな自滅的なことをするはずない(米中枢に多極派なんかいない)と思う人でも、この戦争が米国側と非米側の強い分裂を引き起こし、長引くほど非米側が強くなることは認めざるを得ない。 (ロシアでなく欧州を潰してる) そして、この戦争の構図が長引きそうなのも動かぬ事実だ。プーチンが昨春、習近平に「ロシアはこの戦争を5年間以上続ける」と伝えていた、と報じられている。マスコミでは「プーチンは、この戦争で劣勢だけど5年は戦える国力があるから見捨て
2023年12月4日 田中 宇 米国がマイダン革命以来ウクライナにロシア敵視・国内露系住民殺しをやらせ、それが昨年2月末のロシアの正当防衛的なウクライナ開戦につながった。 開戦後、世界は、ロシアを敵視する米国側(G7やNATOなど)と、米国側のロシア敵視に追随せず対米自立の傾向を強める非米側とに、決定的(おそらく不可逆的)に分裂した。 非米側は、米国が単独覇権主義・文明の衝突戦略(中露イスラム潰し策)を強めて911テロ事件を(自作自演的に)起こした2000年前後に、中国とロシアが結束する上海協力機構(上海ファイブ)を作った。非米側は、米国がリーマンショックでドル崩壊した直後の2008年にはBRICSを立ち上げた。 非米側はこれまでも四半世紀かけて、米国覇権から自立した自前の世界体制の構築を試みてきた(米国側はこれを軽視・無視して報じていない)。非米側が独自の世界体制を構築する動きは、ウクラ
2023年11月25日 田中 宇 ガザの戦争は、ハマスが数十人の人質を釈放する見返りに、イスラエルが11月24日から4日間の停戦に入った。11月29日に停戦期間が終わった後、戦争が再開されるのか、それとも停戦状態が維持されて何らかの和平につながっていくのか。 パレスチナを支持する人々は、イスラエルが追い詰められて停戦せざるを得なくなったんだと言っている。イスラエルはガザをいくら攻撃しても人質を救出できず、市民を殺戮して戦争犯罪を重ねるばかりなので、もう戦争を続けられない、これはハマスの勝ちなんだ、とイランなどが言っている。 (Iran claims Israeli 'surrender' in Gaza hostage deal) (Scott Ritter: Hamas Winning Battle for Gaza) 私はそう見ない。今回のガザ戦争のイスラエルの目標は、ガザ市民を全員エ
2023年11月16日 田中 宇 11月13日から15日にかけて、イスラエル軍がガザ最大の「シファ病院」などいくつかの病院に突入し占拠した。10月7日にハマスがイスラエルを攻撃してガザ戦争が始まった直後から、イスラエル軍(IDF)は、ガザのいくつかの病院がハマスの軍事拠点として使われているとして、シファなど病院群に対して空爆や射撃を繰り返してきた。 (Israeli Troops Storm Gaza's Largest Hospital After Doctors Warn Of 'Catastrophic Consequences') 病院は戦争時に攻撃してはならない施設として国際法で守られている。だがハマスはそれを逆手に取って病院群の地下や建物内に軍事拠点を作る「人間の盾」作戦をやっており、病院を攻撃するのは国際法違反でないとイスラエルは言っている。 11月13日にIDFがランティシ
2023年11月8日 田中 宇 10月7日に始まったイスラエルとハマスとのガザ戦争は、1か月たった今、長期化の様相が強くなっている。 当初、イスラエル軍(IDF)がガザ北部(ガザ市街)に地上軍を本格侵攻して短期の市街戦でハマスを掃討するシナリオが報道されていたが、現実はそうでなく、IDFは少しずつ戦線を強化している。 本格的・大々的な地上侵攻をすると、トンネル網などを作って入念に市街戦の準備をしてきたハマスの罠にはまり、IDFは多数の戦死者を出して泥沼にはまるのでやれない。ハマスは開戦直後、ガザ北部の百万人の市民を南部に大量避難させたが、これは「市街戦の戦場を用意する」策略であり罠だった。 (US Official Says Israel Has Not Come Close to Destroying Hamas Leadership) イスラエルは短期決戦でハマスを潰せず、長期化が確定
2023年10月22日 田中 宇 イスラエルが地上軍をガザに侵攻するかどうか瀬戸際の状態が続いている。イスラエルは、地上侵攻すると言ってから2週間近く挙行していない。数日前に戦車部隊をガザの近くに結集したが、そこで止まっている。 ガザ停戦を求める声が世界的に強まっている。寸止め状態で時間が経つほど、政治状況が米イスラエルに不利になる。病院空爆も、犯人はイスラエルなのに隠蔽工作を試みて失敗していく。 当初は地上侵攻を支持すると言っていた米バイデン政権はその後、侵攻するなと公言し始めている。地上侵攻しない可能性が増している。 (US pressuring Israel to delay Gaza invasion) (Israel Amassing Fleets Of Tanks On Northern Border Of Gaza - Ground Invasion Appears Immi
2023年10月10日 田中 宇 10月7日、ガザのハマスが、数百人の特殊部隊をイスラエルに侵入させ、ロケット砲などで2年ぶりの大規模攻撃を仕掛けた。イスラエルは攻撃を全く予期しておらず、完璧に作ったはずのガザ包囲の防護壁が簡単に破られた。警戒システムも作動しない部分があった。 イスラエルに侵入したハマスの軍勢は600人を殺し、ちょうど砂漠で開かれていた音楽イベントの参加者など約200人のイスラエル人と外国人を人質としてガザに拉致した。ハマスは無人機(ドローン)を飛ばしてイスラエルの戦車を撃破するなど新戦術を展開した。 (Top 10 Takeaways From Hamas' Sneak Attack On Israel) (Watch: Palestinians Use Drones To Attack And Cripple Israeli Tanks) イスラエル軍は報復としてガザ
2023年10月1日 田中 宇 ロシアとトルコにはさまれたコーカサス地域で、アルメニアとアゼルバイジャン(アゼリ)の領土紛争であるナゴルノカラバフ紛争が、25年ぶりに終わった。 9月19日にアゼリ軍がカラバフに侵攻し、カラバフを占領していたアルメニア人勢力(アルツァフ共和国政府)はロシアの仲裁で敗北を認め、9月28日にはアルツァフ政府が解散を決めた。 この紛争は、ソ連が崩壊してアルメニアとアゼリが独立国になった当初から、アゼリ領だがアルメニア人が多いナゴルノカラバフ地方を、アルメニアが占領して起きた。 アルメニア人は欧米露など世界に離散した民族(ディアスポラ)で、アルメニア本国には全体の3分の1(約300万人)しか住んでいない。隣国アゼリから領土を奪い、在外アルメニア人が本国に移住できるよう国土を拡張する武力闘争が、アルメニアにとってのカラバフ紛争の動機だった。 (Who is Nikol
2023年9月10日 田中 宇 9月9-10日に印度(バーラト)のニューデリーで開かれたG20サミットは、ウクライナ戦争を議題にするかどうか、ロシアを非難するかどうかで紛糾したが、議長の印モディ首相は初日のうちに、ウクライナ戦争のことを全く盛り込まない共同声明(首脳宣言)を出して採択・決定してしまった。 (G20 Split Over Ukraine Sign of Battle Between US Unipolarity, Rising Multipolar World Order) G20サミットは、正式名称が「金融と世界経済に関する首脳会合」であり、ウクライナ戦争や露敵視など国際政治は本来議題になり得ない。 だが、米国とその傀儡諸国(G7)は、昨年11月にインドネシアのバリ島で開いたG20サミットでも、今回のニューデリーでも、ウクライナ戦争が食糧や資源の国際流通に影響を与えているの
2023年8月19日 田中 宇 8月末に南アフリカでBRICSサミットが開かれるのを前に、BRICSをめぐっていろんなことが言われている。その一つは、BRICSがドルに対抗する共通通貨を作るかどうかという話だ。 (How Far West Are The BRICS?) 主催国の南アフリカの代表が、共通通貨は今回のサミットの議題になっていないと表明した。BRICSは反米組織でないし、非ドル化・ドル潰しをやりたいとも思ってない。新興諸国の国益に沿って動いているだけで、非ドル化でなく各国が自国通貨で貿易できるようにしたいだけだ、と南アは言っている。 なるほど。新興の諸大国が自国通貨で貿易決済すると、結果的に非ドル化が進む。言い方は違っても結果や現実は同じ。さすが外交官(=詭弁屋)。 (BRICS is not anti-West - South African envoy) 非ドル化は、単にド
2023年8月13日 田中 宇 西アフリカのサヘル(サハラ砂漠の南縁)にあるニジェールで7月26日、軍部がクーデターを起こし、米仏と親しかったバズム政権を転覆し、新たな軍事政権を作った。この政権転覆は、ニジェールが「テロ戦争」に失敗した旧覇権国の米仏を見限り、より信頼できるロシアに頼る体制に転換するために起こされた。2021年以降、近隣のマリやブルキナファソなどが同様の趣旨でクーデターによる政権交代をしており、近隣諸国に勧められてニジェール軍部も非米化に立ち上がった。 ニジェールは、近隣のマリやブルキナファソといった他のサヘル諸国と同様、911後の2002年から米国が自作自演的な「テロ戦争」を展開してきた。米軍は、サヘル各地でイスラム教徒を扇動して過激化させ、裏から武器や資金を流し込んでテロ組織に仕立て、米仏が地元の政府をしたがえて長期の低強度戦争を展開した。 (The Wagner Gr
2023年7月29日 田中 宇 新型コロナの大騒ぎは、習近平の権力を中国と世界で増強するために起こされたのでないか。偶然に発生した新型コロナが偶然に習近平の権力を強化する結果にたまたまなったのでなく、最初から意図的に、米諜報界を牛耳る隠れ多極派が動き、中国の武漢ウイルス研究所で米中共同で研究されていた新型コロナのウイルスを2019年秋に外部に漏洩させ、同時に習近平に対し、新型コロナの騒動を使うと中国での独裁と世界での覇権を強化できると入れ知恵したのでないか。 こういう話を書くと、また頓珍漢な妄想屋とか馬鹿だとか言われる。コロナや次のパンデミに関して「間違った情報」を流す人を潰す体制も強化されるので、そっちからも潰されていきそうだ。害悪な大間違いを書く馬鹿は潰されて当然だと、多くの人が思う。 だが同時に、そう思わずに、私の分析を合理的と考えてくれる人もいるかもしれない。そう思って、何か月も躊
2023年7月15日 田中 宇 来年の米大統領選挙は、トランプが勝って返り咲くか、民主党がまたぞろ選挙不正をやってトランプ勝利を阻止するかの2つの可能性に絞られた観がある。 共和党の候補はトランプで決まりだろう。デサンティスはトランプよりかなり劣勢だ。彼はトランプの副大統領候補になることも否定しており、フロリダ州知事を続けて「次の次」に備える。 共和党は、8月23日にウィスコンシン州で統一候補決定に向けた立候補者どうしの討論会を行うが、ここで明確にトランプをしのぐ議論をする候補が出てこない限り、共和党候補はトランプで決まりだと言われている。トランプは、自分が不利になりそうなら討論会に出ずに優勢を維持する気だ。 (DeSantis Says He Wouldn’t Run as Trump’s Vice President) (No Matter Who Shows, The Debates
2023年7月10日 田中 宇 ウクライナ戦争が始まって500日が過ぎた。この戦争は、ロシアを潰す策として米国が起こしたが、実際は欧州を潰している。フランスは暴動が拡大して内戦になっている。 米諜報界が中東で育成したイスラム過激派が、自由で素晴らしい(笑)移民政策に乗ってフランスに入り込んで破壊してきた。仏内戦は、20年以上前から断続しつつ激化してきた長期戦であり、今後もずっと続く。 (Most French blame liberal immigration rules for riots) (French Gun Control Failed, Leaving Law-Abiding Citizens Helpless As Nation Burned) EUは市場統合されて越境自由だから、EU全体が内戦傾向になる。独などEUは、露石油ガスの喪失とインフレで経済も壊滅。左右エリート政党
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