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食品に食べられるデータを埋め込む技術、大阪大学がフード3Dプリンタで実現 大学ジャーナルオンライン編集部 大阪大学大学院の佐藤宏介教授らの研究グループは、フード3Dプリンタを用いて食品の内部に特殊なパターンを形成することで、食べられるデータの埋め込みを世界で初めて実現した。食の安全性向上や新たな食体験の開拓が期待される。 研究グループは今回、フード3Dプリンタでクッキーを作成する際、内部の特定の位置へ異なる色の生地を配置したり空間をつくったりして、内部に空間コード(2次元コード、ARマーカーなど)を形成する技術を開発。生地焼成時に内部のパターンが表面に現れず、食感や強度にも大きく影響しない内部構造設計技術を確立した。これは、豚肉ミンチでも成功した。 さらに、食品内部構造の透過撮影技術により、人の目には見えないデータの読み出しを実現。背面から光を照射して内部の空間コードを表面に浮かび上がらせ
しじみを煮込むとスープが白濁するが、なぜ白くなるのか、これまで明らかとされていなかった。しじみ産地として知られる宍道湖を有する島根県で、白濁の原因物質がタンパク質のトロポミオシンであることが解明された。島根大学の研究グループが、しじみ汁を対象にタンパク質を分離して検出するなどの手法を用いて突き止めた。 そこで、SDS-PAGE(ポリアクリルアミド電気泳動)の実験でしじみ汁からタンパク質を分離し、さらにMALDI-TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)による分析を行った結果、このタンパク質がトロポミオシンであることが突き止められた。 牛乳の白濁はカゼインというタンパク質がカルシウムを結合していることが関係しており、豚骨スープの白濁にはタンパク質に加えて脂質も関与している。しじみのトロポミオシンでも調べてみたが、カルシウムなどのイオンや脂質は無関係だった。 他方、はまぐり、ホタテ
2025年度入試科目、一部の有力国立大学が公表するも私立大学では公表進まず 神戸 悟(教育ジャーナリスト) 東京大学が7月15日に2025(令和7)年度入試の出題教科・科目を公表し、新課程入試における東京大学の個別試験の国語、数学、地歴公民などの出題科目・範囲が判明しました。予想された通りの科目もあれば当初予想とはやや異なる部分もありました。これに先立つ5月20日に公表した大阪大学や7月22日公表の筑波大学、9月16日公表の北海道大学の出題教科・科目を参考にして、他大学も早々に決定して公表するものと見られていましたが、現状では特に私立の有力大学で公表の動きが遅いようです(2022年10月11日現在)。過年度生への経過措置を含めて慎重になっているものと考えられます。確かに既公表大学の一部の教科・科目は、高校における履修の現状を認識しているとは思えない設定もあります。これから公表する、検討中の
2022年9月26日より、立命館大学は約5,000人の学部生・大学院生を対象に、英語授業においてAI自動翻訳サービス「Mirai Translator®」の試験導入を開始した。学校法人立命館と株式会社NTTドコモとの連携協定のもと、株式会社NTTドコモのグループ会社である株式会社みらい翻訳がサービスを提供する。大学の正課の英語授業で利用に一切の制限を設けず「Mirai Translator®」を導入するのは日本初(みらい翻訳調べ)。 今回の試験導入は、AI自動翻訳ツールを大学の英語授業で利用することで、学習成果や学生の心理面などにどのような変化が生じるかを検証する。英語スキル不足による学習への不安感を払しょくさせ、本来習得すべきプレゼンテーション能力の向上や、アウトプット精度の向上など、社会で使える英語スキルを、学生自身が能動的に体得することを目指す。 試験導入期間は2022年9月26日~
バラバラに見えるメロンの網目模様に、共通の統計的法則が存在 山梨大学が発見 大学ジャーナルオンライン編集部 マスクメロンの網目模様が、ある共通した幾何学的法則に従うことを、山梨大学の島弘幸教授らの研究グループが初めて発見した。 メロンの網目は、成長途中で果肉が膨張することによって表皮にひび割れが生じ、ひびの隙間を埋めるように内部から分泌された物質(スベリン)が固まることで形成される。このようなひび割れ模様は、干上がった田んぼの泥や、老朽化したコンクリートなど、内部からの圧力による類似した破断プロセスで多くの自然現象にも観察できる。果たしてそこに、何か共通した法則は潜んでいるのだろうか。 結果として、本グループは、市販の複数のマスクメロンの網目模様のきめ細やかさを統計的に解析することで、網目で囲まれた果皮断片の面積が、共通の確率分布に従うことを初めて見出した。破片面積分布(ある面積の破片が、
もし、東京五輪が開催されなかったら、新型コロナウイルスの感染者はどう推移していたのか。東京財団政策研究所が新型コロナ感染に関する公開データから世界42カ国の事例を参考に推定したところ、国内の感染者数が半減していたとする結果が出た。 加重平均には新型コロナ関連の公開データから予測因子を抽出し、世界42カ国の事例を参照したところ、東京五輪閉会日時点の人口100万人当たりの7日間平均感染者数109.2人は、推定値の50.6人に対して115.7%多くなっていた。東京五輪期間中の累積感染者数14万3,072人は、推定値の8万9,210人より61.0%多かった。 東京五輪では選手や関係者を外部と遮断するバブル方式が採用されたが、研究グループは選手や関係者が例外措置として入国したことや選手の感染対策ルール違反が大きく報道されたことなどから、一般市民の感染対策順守に影響が出てローカルな感染が増えた可能性が
東北大学大学院医学系研究科の下川宏明客員教授らの研究グループは、低出力パルス波超音波治療がアルツハイマー病に有効で安全であることを動物実験と治験によって世界で初めて明らかにした。超音波で自己治癒能力を活性化する画期的な治療法で、超音波照射機器は厚生労働省から先駆的医療機器指定制度の対象品目に選ばれた。 認知機能の低下は動物実験で血管を拡張させる一酸化窒素が脳内で低下することが原因と分かっている。低出力パルス波超音波治療を受けたマウスは、脳内で一酸化窒素が増加していた。研究グループは低出力パルス波超音波治療が微少血管の内皮細胞で一酸化窒素合成酵素の発現を促し、結果として微小な血流循環障害を改善させたとみている。 この研究結果を基に東北大学病院で早期アルツハイマー病の患者22人を対象に治験したところ、同様の結果が出た。さらに、治療回数を重ねるたびに有効となる症例が増えることも分かった。 研究グ
大学4年生の6割強が大学院進学を希望し、進学を希望しない学生の4割近くが家庭の経済状態や奨学金返済に対する不安を理由に挙げていることが、文部科学省の全国調査で分かった。調査結果は大学生や大学院生らの修学支援策を検討する文科省の有識者会議初会合で報告された。 それによると、大学院への進学を希望する学生は全体の62.3%。人文・社会系の学生は25.8%にとどまったものの、理工・農学系の学生は84.5%に達した。奨学金利用の有無で進学希望に差は見られなかった。 大学院への進学希望を持たない学生のうち、54.6%は「過去に進学を考えたことがある」と答えた。進学を希望しない理由では「大学院で学修・研究を深めたいという気持ちがない」「早く社会に出て仕事の経験を深めたい」とする声が多かったが、38.1%は家庭の経済状態や奨学金返済に対する不安を挙げている。 大学院に在学中、授業料納付を免除され、修了後の
TOP > コラム > 時代に先駆け、データサイエンス&文理融合型の学びを推進。 イノベーションの源泉となる『総合知』を創出する 「人間の時代」をけん引する文化情報学部の学びとは 2005年の開設以来、“データサイエンスを用いて文化を研究する”文理融合型の学びを推進してきたのが、同志社大学文化情報学部だ。なぜいま文化なのか、学部長の下嶋篤教授と、同学部のデータサイエンス教育を設計してきた宿久洋教授にその狙いを聞いた。 そしてこうした人間の本質を理解するには、古来から現在、未来へと続く、人間の叡智(=文化)を研究することが必須であると考えています。本学部が、データサイエンスのターゲットとして『文化』に目をつけた理由はここにあります」と下嶋教授。 そもそもデータサイエンスは、統計学や情報学などの知識を活用し、データから新たな価値を引き出す学問。同学部では、サブカルチャーや歴史、ファッション、メ
佐賀大学理工学部の冨永昌人教授らの研究グループは、京都大学の白井理教授らとの共同研究で、皮膚に貼るだけの超高感度なアルコールガスセンサを開発した。 研究グループは、アルコールと特異的に反応する酵素を用いて、酵素の反応を直接的に電気信号に変換できる高効率検出デバイスを開発した。このデバイスは、約30ppb(ppb=10億分の1、1ppbは1立方メートル中に1立方ミリメートルの気体を含む状態)のアルコールガス濃度を検出できる。実際に手首にデバイスを貼り付けて、アルコール(15%日本酒、おちょこ約一杯の22.3 mL)を飲酒したところ、手首から放出されるアルコールガスを検出し定量することができた。 検出部分は、定期的な交換が必要だがディスポーザブルタイプになっており(携帯型血糖値センサのようなイメージ)、生分解性のセルロース材とカーボン材から構成され環境負荷の低い素材を用いている。 今後、高感度
マスクの使用実態と付着する細菌・真菌の検証、世界で初めて近畿大学が解析 大学ジャーナルオンライン編集部 近畿大学医学部の朴雅美講師らの研究グループは、マスクの使用状況や生活習慣と、マスクに付着する細菌・真菌との関連性を世界で初めて解析。衛生的で正しいマスク着用法の啓発に活用できるとしている。 研究グループは、ボランティア109人にマスク使用に関するアンケート(素材、使用日数など)より使用実態を調査。マスクの内側・外側に付着した細菌と真菌を培養し、菌の数・種類を調べた。 その結果、細菌の数はマスクの内側で多く、真菌の数はマスクの外側で多かった。また、マスクの使用日数が長いほど、真菌の数は有意に増加したが、細菌の数は増加しなかった。さらに、公共交通機関の利用有無や、うがいの習慣などの条件が菌の増減には影響しなかった。 今回検出された細菌・真菌の大部分は通常病気を起こさない菌だが、黄色ブドウ球菌
近年、国立大学に新設される学部で文理融合を標榜する学部が増えています。2023年度も金沢大学(融合学域スマート創生科学類)、静岡大学(グローバル共創科学部)などの新設が予定されています。これらに加えて、一橋大学(ソーシャル・データサイエンス学部)も文理融合と言って良いでしょう。ところで、今年の6月から中央教育審議会の大学分科会に新しい部会(大学振興部会)が加わりましたが、そこでの論点は文理横断・文理融合教育です。今や国家政策となりつつある文理融合系学部です。 大学振興部会の第1回の議題は文理横断・文理融合教育 文部科学省の教育政策を審議する中央教育審議会には、いくつかの分科会が設けられています。その中で主に大学など高等教育政策は、大学分科会が担っています。その大学分科会のもとには様々な部会やワーキンググループが設けられていますが、今年の6月から新たに大学振興部会が加わりました。 大学振興と
コーヒー・カフェインと認知症予防に強固な関連性、新潟大学が日本人高齢者で調査 大学ジャーナルオンライン編集部 新潟大学大学院の中村和利教授らの研究グループは日本人の中高年のコーヒー、緑茶、カフェインの摂取量と認知症リスクとの関連を調査し、コーヒー高摂取と認知症低リスク、およびカフェイン高摂取と認知症低リスクの強固なエビデンスを得た。緑茶の効果は明確ではなかった。 解析の結果、コーヒー摂取量が多いほど認知症の発生率は低下し、摂取最大の一日3カップ以上摂取のグループの発生率は飲まないグループの0.53倍だった。この関連性はどの年代でも見られ、女性より男性で顕著だった。また、緑茶摂取量が多いほど認知症の発生率は小さくなる傾向は見られたが、統計学的に確かな低下ではなかった。 さらに、カフェイン摂取量が多いほど認知症の発生率は低下し、摂取最大のグループ(中央値449mg/日)の発生率は最小のグループ
コロナ禍でゆがんだ社会の絆が恐怖や偏見、対立を助長する 京都大学の提言 大学ジャーナルオンライン編集部 京都大学大学院医学研究科の鄭志誠研究員と藤野純也さん(博士課程学生:当時)は、社会の絆(きずな)の2面性を新型コロナウイルス感染拡大下の実態と関連づけて調べ、人々の絆や共感といった一見ポジティブとみなされやすい概念が社会にもたらしうる負の側面を示した。 本研究者らは分析的文献レビューと質的調査により、社会の絆や共感がもつ両側面をコロナ禍の体験と関連づけて分析を行った。その結果、コロナ禍においても、人々のつながりを大切にする態度や共感的な表現は、ソーシャルメディア等を通じて孤独感を和らげ、社会の絆を高めていたが、他方で人々とのつながりが同調圧力を生み、過剰に自分の状態(例:コロナ陽性)に対するうわさや中傷を恐れたり、自分とは異なるグループ(例: 非ワクチン接種者)への偏見や攻撃的行動を誘発
大阪大学大学院の境慎司教授とウィルダン・ムバロク氏(博士後期課程)らの研究グループは、アニサキスなどの線虫表面を生きたまま、スーツを仕立てるように柔軟な薄膜でコートする方法を開発。アニサキスはがんの「匂い」を探知してがんを探索できるため、この薄膜で抗がん物質を輸送させれば、新たながん治療法の開発が期待できる。 研究グループは、このがんの「匂い」を検知してがん部位へ移動する能力を活用する研究を開始。アニサキスを、がん細胞を殺傷する物質の輸送体とするため、匂い検知能力や運動性に影響しない、厚さ0.01mm程の柔軟なゲルの薄膜を20分程度で線虫表面に形成させる方法の開発に成功した。 実験では、血液中のブドウ糖から過酸化水素を生成できる酵素(グルコースオキシダーゼ)を組み込んだゲル薄膜で線虫をコートし、がん細胞を含む培養液に入れたところ、24時間後にがん細胞を死滅できた。また、紫外線透過防止素材を
現在の高校1年生が大学入試を受験する2025(令和7)年度入試。その入試科目は今年度中に公表されることになっています。すでに国立大学協会が「情報Ⅰ」を原則として課すことを1月に公表しています。東京大学も3月に大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の利用教科・科目を公表していますが、配点、選択パターンや個別試験科目などはまだ公表されていません。ただ、大阪大学など有力な大学が詳細な情報を公開するなど動きも見られます。現段階でのポイントについて見ていきます。 早稲田大学人間科学部は共通テスト「情報」が選択可能共通テストの出題教科・科目や試験時間、現行の教育課程履修者(2025年度入試では旧課程履修者)の経過措置はすでに発表されています。また、国立大学協会からも「情報」を加えた6教科8科目受験を原則とすることが公表されています。各大学がこれらを受けて、どのような入試科目となるか注目されていますが、
九州大学、ひきこもりの血液バイオマーカーを発見 ひきこもり者の識別も可能に 大学ジャーナルオンライン編集部 九州大学の研究チームは、九州大学病院が擁する世界で唯一の「ひきこもり研究外来」で解析を行い、ひきこもり者を特徴づける血中成分を報告した。 本研究チームでは、九州大学病院に世界初のひきこもりを専門とするひきこもり研究外来を立ち上げており、今回、ひきこもり者と健常者の血液メタボローム解析を行い比較検証することで、ひきこもり者に特徴的な血中成分(バイオマーカー)を探索した。その結果、ひきこもり者の血中では、健常者と比較してオルニチン、アシルカルニチンが高く、ビリルビン、アルギニンが低いことがわかった。また、男性のひきこもり者においては、血清アルギナーゼが有意に高いことを発見した。 これら血液データと臨床データをもとに、機械学習判別モデルを作成したところ、ひきこもり者と健常者の識別、ひきこも
長時間労働がメンタルヘルスに悪影響を与えるといわれるが、残業自体ではなく、長時間労働による睡眠不足と不規則な食事がメンタルヘルスを害していることが、東京医科大学精神医学分野の渡邉天志医師、志村哲祥医師らの研究で明らかになった。 その結果、長時間労働は心身のストレス反応に直接影響しないことが分かった。しかし、長時間労働が食事の不規則さや睡眠時間の短縮を招き、それらがうつや心身のストレス反応を引き起こしていた。 研究グループは労働時間の短縮が実現しても、睡眠不足や不規則な食事が続けば症状が改善しないが、長時間労働が続いても睡眠時間が確保され、食事が規則正しく摂取できれば、メンタルヘルスへの影響を限定的な範囲に抑えられるとみている。 ただ、今回の研究では因果関係の証明はできていない。研究グループは後続の研究で因果関係の解明を期待している。 論文情報:【International Journal
神戸大学大学院の内匠透教授らの国際共同研究グループは、特発性自閉症の原因が胎児の時の造血系細胞のエピジェネティック(注)な異常であり、その結果が脳や腸に見られる免疫異常であることを明らかにした。 自閉症発症における免疫障害の重要な発達段階と免疫系の広範な関与を考慮し、研究チームは共通の病因が広範な免疫調節不全の根底にあり、異なるタイプの前駆細胞にあると仮定した。免疫細胞のもとになる血球系細胞に注目、さらに、胎児の時の造血に関わる卵黄嚢(YS)と大動脈-生殖腺-中腎(AGM)に焦点をあてて解析を行った。 研究グループは、自閉症モデル動物のBTBRマウスを用いてAGM血球系細胞を解析し、免疫異常の病因としてHDAC1(ヒストン脱アセチル化酵素1)を同定した。また、YS血球系細胞の解析により、ミクログリア(中枢神経系グリア細胞の一つで中枢の免疫を担当)発達異常の病因として同じくHDAC1を同定し
難聴リスクにノイズキャンセリング機能が有用、地下鉄騒音下のイヤホン音楽聴取で実験 大学ジャーナルオンライン編集部 順天堂大学と電気通信大学の研究グループは、各種イヤホン装着時の音楽聴取の実験から、地下鉄の騒音環境下での音楽聴取は難聴リスクを高めるが、ノイズキャンセリング機能によって難聴リスクが回避できることを明らかにした。 実験では聴力が正常な成人23名を対象とした。4種類のイヤホン(A)耳置き型、(B)ヘッドホン、(C)インサート型、(D)ノイズキャンセリング機能付きインサート型を用いて音楽を聴取し、一番聞き心地の良い音量(最適リスニングレベル)を任意で調整してもらった。静寂な環境条件下と地下鉄内で録音した環境騒音(80dB)下でそれぞれの音楽の最適リスニングレベルを計測した。 その結果、地下鉄の背景雑音下で最適リスニングレベルは、A、B、Cでは静寂下に比べて増加、AとBではCとDに比べ
大阪大学のグループは、絶食により脂肪組織のオートファジー(細胞内の不要な構造物の分解機構)が活性化することで、肝臓での脂肪蓄積とケトン体産生が誘導されることを明らかにした。同グループによる以前の研究で、老化した脂肪組織でもオートファジーが過剰となり脂肪肝を引き起こすことが判明していることから、今回、絶食と老化で共通するしくみが明らかになったといえる。 個体が飢餓にさらされると、脂肪組織が減少し、代わりに肝臓に脂肪が取り込まれて緊急時の栄養としてのケトン体産生に利用されることは以前から知られていたが、この背景にあるメカニズムが初めて突き止められた。一方、老化した脂肪細胞でオートファジー活性が増加し、脂肪肝の一因となる現象が、本来は絶食時に必要なケトン体産生のために存在するしくみであることも同時に明らかとなった。すなわち、脂肪細胞の老化は、絶食時のメカニズムを通常時にまで生じさせてしまう状態で
痩せた土地でも生育するサツマイモ、根圏に有用微生物を引き寄せている可能性 大学ジャーナルオンライン編集部 名古屋大学と広島大学の研究グループは、サツマイモが根圏の微生物相をコントロールすることで、痩せた土地でも生育を可能としているかもしれないことを明らかにした。 そこで、本研究では、サツマイモが維持しているアグロバクテリウム由来遺伝子の機能の解明を目指した結果、サツマイモが痩せた土地でも生育できる謎の一端に辿り着いた。アグロバクテリウム由来の遺伝子のうち、IbACS遺伝子が生産するアグロシノピンAが、根圏の微生物相を大きく変化させることを発見したという。つまり、IbACS遺伝子は、アグロシノピンAの生産によって土の中の特定の微生物を誘引する機能をもち、この土壌微生物相のコントロールが、サツマイモの痩せた土地での生育の鍵を握っている可能性があるとしている。 次には、通常のサツマイモとIbAC
慶應義塾大学のグループは、「脱細胞」の技術を用いて、世界で初めてブタの体内で部分切除した腎臓の一部を再生させることに成功した。「脱細胞」とは、臓器から細胞成分を除去し、コラーゲンを主体とした骨格のみを残す手法をいう。「脱細胞」された骨格は、臓器の自己再生機能を呼び起こす足場構造となることが期待されている。 再生したネフロン周囲では腎臓の幼若な細胞が見出されており、再生メカニズムに幼若細胞が寄与している可能性があるとみている。また、本研究で用いた脱細胞化腎臓(腎臓骨格)には、細胞が無くても、細胞の機能を保つ足場として重要な細胞外マトリックスの残存が認められており、多数のシグナル分子となるタンパク質も検出された。腎臓骨格内に残るシグナル分子を含む細胞外マトリックスが、細胞の遊走や生着を促し、腎臓の自己再生・修復を誘導している可能性が示唆されたとしている。 外から細胞を入れることなく足場構造のみ
海洋研究開発機構、東京大学、水産研究・教育機構の研究者らは、魚の眼球中の水晶体の窒素同位体比分析を行うことで「魚の生活史」を紐解く手法を開発した。 特に、魚の眼球中の水晶体は、魚が卵の中にいる頃から形成が始まり、成長とともに木の年輪のように付加的に層を形成し、それが一生を通して保持される。水晶体を玉ねぎの皮のように剥いて成長層ごとに採取し、蓄積されているフェニルアラニンの窒素同位体比を分析すれば、魚の生活史を時系列的に明らかにできると考えたのが本研究である。 今回、この手法を用いて、三陸沖で採取された約1歳のマサバの稚魚期からの生活史を解読することを試みた。その結果、計34層のサンプルが得られ、時系列窒素同位体比分析により、仔稚魚期を窒素同位体比の低い亜熱帯海域(伊豆半島沖付近)で過ごし、成長と共に窒素同位体比の高い亜寒帯海域(三陸沖方面)へ移動するとされるマサバの典型的な回遊ルートを復元
宮崎大学、慶應義塾大学、千葉大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行が日本で起きた2020年1月から2021年5月と、流行以前の日本における自殺の理由の変化を分析。男性では主に仕事のストレスや孤独感、女性では家庭・健康・勤務問題による自殺が増加。自殺理由は男女で大きく異なっていた。 分析では、7つの大項目(家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、男女問題、学校問題、その他)の全てで超過死亡のある月を認めた(超過死亡割合最大は2020年10月)。女性では、家庭問題、健康問題、勤務問題、その他の問題で各5ヵ月連続の超過死亡を認め、男性では学校問題での超過死亡はなかった。 小項目別では、男性は「経済・生活」で失業、「勤務」で仕事の失敗、仕事疲れ、職場の人間関係、職場環境の変化、「その他」で孤独感・後追い・犯罪発覚等で主に超過死亡が見られた。 同じく女性では、「
水道使用量で「空き家」発見 東京大学と磐梯町、LIFULLが簡易モデルを構築 大学ジャーナルオンライン編集部 東京大学空間情報科学研究センター、磐梯町および株式会社LIFULLは、磐梯町が保有する過去5年分の水道使用量のデータを利用して新たな空き家候補(空き家予備軍)を発見する簡易的なモデルの有効性を検証した。 そこで今共同研究では、水道使用量のデータのみを利用する簡易的なモデルを利用し空き家予備軍を発見するだけでなく、新たに空き家の可能性があると発見された物件に対して、固定資産台帳・住民基本台帳を結合し、「所有者や連絡対象者となる人を特定するための」基本的な情報の突合を行った。これによって、住宅や事業用としての活用物件の新たな候補として、自治体の空き家バンクへの登録を促すアプローチが可能となった。 外観目視(2020年度に実施した空き家実態調査)で空き家と判定した結果と比較すると、今回の
文部科学省科学技術・学術政策研究所が2018年度に大学の博士課程を修了した人の1年半後を追跡調査したところ、人文系は年収100万円以上200万円未満が最多となるなど、仕事で食べていけない博士を量産している実態が明らかになった。 それによると、博士課程修了1年半後の進路は大学などが51.7%、民間企業が27.2%、公的研究機関が8.4%、非営利団体が7.3%。大学などが最も多かったが、大学では雇用形態が不安定な契約職員や任期制研究員の比率が高かった。 学問分野別に見ると、工学の76.2%、保健の74.1%、農学の66.0%が正社員や正職員だったが、人文は41.0%、教育や芸術などその他は49.5%にとどまり、不安定な立場に置かれる博士が目立っている。 年収は保健、工学、理学、社会で高い傾向にあり、保健は30%以上が1,000万円を超えていた。これに対し、人文は最も多い層が100万円以上200
東京医科歯科大学大学院の藤原武男教授らの研究グループは、東京医科歯科大学病院への入院患者を対象とした研究で、糖尿病、関節リウマチ、脳梗塞の既往が新型コロナウイルス感染症のスーパースプレッダーのリスクとなることを見出した。 研究グループは2020年3月から2021年6月までに、中等症から重症の新型コロナウイルス感染症で東京医科歯科大学病院に入院し、1回以上RT-PCR検査を行った患者379名を対象に、スーパースプレッダーの特定要因を検討した。 電子カルテ情報から、既往症(高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・癌・慢性腎不全・脳梗塞・心疾患・呼吸器疾患・アレルギー)を調査・分析した。その結果、上記の既往を3つ以上重複して有する患者では、既往のない患者よりウイルスコピー数が87.1倍高かった。 また、糖尿病患者は17.8倍、関節リウマチ患者は1,659.6倍、脳梗塞患者は234.
15世紀のトンガが太平洋に落下した隕石による大津波で大損害を受けたことが、神戸大学大学院海事科学研究科のクリストファー・ゴメス教授と、仏ソルボンヌ大学、英ケンブリッジ大学の共同調査で分かった。 付近の海底にクレーターが存在することから、大津波を引き起こしたのは太平洋に落下した隕石と推定される。隕石衝突時の影響についてシミュレーションしたところ、最大30メートルの高さを持つ大津波がトゥイ・トンガ島を襲ったと考えられる。 当時、トゥイ・トンガ島にあったトゥイ・トンガ王国がトンガ群島を統一していたとされるが、15世紀中ごろに重大な危機が発生して群島間の人々の移動が停止し、文化的にはっきりとした変化が起きている。研究チームはこの変化を引き起こしたのが、これまで確認されていなかった大津波だとみている。この結論は赤い波によって多数の大きな岩が島に堆積したとする地元の伝承と一致する。 論文情報:【Fro
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