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円安とは
www.newsweekjapan.jp/murakami
「円安」は構造的な現象で、簡単には変わらない? 写真は、植田日銀総裁 REUTERS/Carla Carniel <為替市場では1ドル150円付近の円安が定着し、今後も「円安が続く」との見方がメディアでは一段と増えている。また、「円が紙くず」になるまで通貨安が避けられない、という極端な論もあるが、そうした見方を検証する......> 為替市場では、2月中旬から、1ドル150円付近での円安が定着しつつある。為替市場の先行きを予見するのはかなり難しいのだが、22年からの円安が長期化していることが影響してか、今後も「円安が続く」との見方がメディアでは一段と増えているようにみえる。 「円安」は構造的な現象で、簡単には変わらない? 1ドル90円台にある購買力平価(IMF試算)との比較でみても、円は歴史的にはかなり割安に位置付けられるが、それでも「円安」は構造的な現象なので簡単には変わらないとの見方が
過去1年半の円安が進む中で、長年凍結していた企業による値上げ・賃上げという、当たり前の動きがようやく戻りつつある...... Eugene Hoshiko/REUTERS <1ドル150円台の大台に入り、円安はもう止まらないとの見方もメディアでは散見されているが......> 為替市場では、10月中旬から1ドル150円付近の円安水準での推移が続いている。1年半に渡り円安が続いているため、円安の負の側面が経済メディアでは依然としてクローズアップされることが多い。 ただ、23年の日本株(TOPIX)は年初来リターンが+23%(11月10日時点)で、米国株(S&P500 +15.0%)を上回っている。円安ドル高が進むと、米国株対比で日本株がアウトパフォームする関係は、2022年から23年11月までほとんど変わっていない。円安でも輸出が以前ほど伸びなくなっているが、円安が企業の売上・利益を押し上げ
<岸田政権の内閣改造を経て、支持率反転は見込めそうもない。岸田政権への支持率が低下が続いても日本株は上昇しているが、その背景を探りつつ、日本経済の今後を展望する......> 岸田政権は、9月13日に内閣改造を行った。いくつかの大臣や主要官邸メンバーの交代があったが、主要な経済官庁では閣僚の交代はなく、経済政策についてはこれまでの対応が概ね続くことが確認された。 今回の内閣改造は、世論の支持率上昇を狙った政治対応とされている。ただ、直後の世論調査をみると、支持率が上昇(朝日新聞など)、支持率が変わらず(読売新聞など)、支持率が低下(産経新聞)と、まちまちの結果となっている。 岸田首相が、本気で支持率上昇を目指したのか筆者は知る由もないが、今回の人事をうけて、6月から低下している内閣支持率は当面変わらなさそうである。民間人登用など大胆な人事もなく、女性閣僚の数が増えたことがやや目立つ程度で、
<円安は「衰退日本の象徴」と強調するメディアもあるが、2022年以降の通貨安は日本経済全体にとって、依然としてプラスの影響が明確だろう。円安は「衰退日本の象徴」というよりは、途上にある日本経済の正常化を後押しする、最後の一押しであると位置付けられるだろう......> 為替市場において、ドル円相場は1ドル145円付近での推移が続いている。8月末には米国の経済指標の発表後に、一時1ドル147円台まで円安が進む場面があった。 2022年から米FRBの利上げや金利上昇で円安が進む度に、これが「日本円の価値(購買力)」の低下である点を強調するメディアは、円安が日本衰退の象徴であるとのニュアンスを醸し出し、「円の実力を高めるのが望ましい」などと主張する。 こうした論者は、理由は様々なのだろうが、日本のモノやサービス価格が諸外国対比で割安になっていることを心情的に許容できないのかもしれない。ただ、超円
次期日銀総裁候補・植田和男氏は、黒田体制の金融政策に成果がありこれを継続する考えを示した REUTERS/Issei Kato <新総裁候補に指名された植田氏が指摘した、女性、高齢者を中心に雇用拡大がみられたというのは、これまで就業を諦めていた方々に職の機会が見つかったことを意味する......> 日銀の黒田総裁が交代する大きな節目を迎えつつあるが、日本の金融市場は落ち着いている。新総裁候補に指名された植田和男氏が国会の聴取において、黒田体制の金融政策に成果がありこれを継続する考えを示したこと、などが市場の安心材料になった。 植田氏は、かつて量的緩和政策に懐疑的な見解を示していたが、考えはやや変わったのかもしれない。黒田日銀が行ってきた金融政策の成果を認識した上で、未完と位置付ける2%インフレ安定の実現を目指すと明言した。 バーナンキ氏や黒田総裁と同様に適切な政策運営への期待 2010年以
黒田総裁のトーンダウンは、日本銀行や政府の政策転換を意味するだろうか? REUTERS/Kim Kyung-Hoon <円安批判の声は、メディアなどで肥大化しているようにみえる。黒田総裁のトーンダウンは、日本銀行や政府の政策転換を意味するだろうか?> 為替市場において、4月13日には1ドル126円台まで円安ドル高が進み、今週19~20日にかけて2日間で大きく動き、一時は129円台まで円安が加速した。米10年金利が2.9%台まで上昇するなどの、米国の金利上昇がドル高円安を促す主要因になっている。こうした中で、125円台よりも円安が進み、20年ぶりの円安になったと日々報じられている。 円安は負の側面が注目されやすい 日本銀行による「円安をプラスである」とのスタンスは当面変わる可能性は低い点などを、筆者はこれまでのコラム等で指摘してきた。このため、FRBの利上げ前倒し姿勢の強まりがもたらす米金利
メディアなどが醸成する円安批判の世論が、岸田政権の今後の経済政策運営を左右するリスク...... Franck Robichon / REUTERS <ウクライナ危機の中で円安が進んでいるためか、「悪い円安」が進んでいるなどとメディアで報じられているが......> ウクライナ危機によって金融市場にショックが走り、2月後半から世界の株価や金利が日々大きく変動して金融市場は混乱した。3月21日時点で、米欧株市場は、ウクライナ侵攻が始まった時点(2月24日)の水準を超えてリバウンド、ロシア・ウクライナの地域間の紛争が長引いても世界経済全体への影響は限定的との見方が広がりつつある。 ただ、ロシア関連資産損失への懸念がくすぶり、米国の銀行間貸出金利が高止まるなど、限定的ながらも資金の目詰まりがみられ、また米欧社債市場における信用スプレッドも広がっている。ロシア・ウクライナの紛争が世界経済の成長を阻
岸田政権下で日本経済は再び長期停滞期に戻るのか...... Yoshikazu Tsuno/REUTERS <本来であれば米英で現在起きているインフレ上昇は、金融財政政策をしっかり行えば日本のデフレは克服することができる、ことを示す事例だが......> 2021年まで3年連続で大きく上昇していた米国の株式市場は、2022年最初の取引日こそ最高値を更新したが、その後に急落した。S&P500指数は1月24日のザラ場において、最高値から約12%下落しており、米国株市場の様相は大きく変わった。米国株の急落を受けて、日経平均株価は27日には2020年12月以来の最安値である26000円台まで大きく下落している。 FRBが急ピッチに引き締め政策を行う可能性 FRB(米連邦準備理事会)が利上げを早期に開始する姿勢を昨年末から強く打ち出していることが、米日の株価下落を引き起こしたとみられる。そして、FR
金融市場の関係者は岸田首相の所信表明演説に批判的だったが...... Eugene Hoshiko/Pool via REUTERS <総選挙がきっかけで株高が起きるかどうかは、時の政権がどのような経済政策を行うかどうか次第だが...... > 10月31日に投開票される衆議院選挙が、19日に公示された。各種世論調査によれば、早期解散を決めた岸田文雄新首相の支持率はほどほどの高さとなっており、連立与党が大きく議席を失うリスクは限定的だろう。岸田首相率いる与党は安倍・菅政権が残したレガシーを活かせる立場にある。菅政権が進めたワクチン接種政策の恩恵もあり、10月に入って新型コロナ患者数が劇的に減っていることが大きな追い風になるとみられる。 一方、共産党との共闘体勢を強めてきた野党第一党である立憲民主党への国民の支持率はほとんど高まっていない。立憲民主党を支持してきた主要労働組合の一部が、同党へ
コロナ禍後の経済正常化を加速させるための政策判断が、今後10年の日本経済の行方を大きく左右する Behrouz Mehri/REUTERS <米国では財政政策が経済復調を大きく後押ししているが、日本の状況はどうか...... > 6月24日米国では、バイデン大統領と約20名の超党派議員グループの間で、8年間で約1.2兆ドル規模のインフラ投資案が合意された。これは、バイデン政権が掲げていた米国雇用計画のインフラ投資(約1.36兆ドル)が、やや規模が縮小して実現するプロセスが進んだと評価できる。 バイデン政権が打ち出した、雇用計画と家族計画は、総額2兆ドル以上の広範囲に渡る歳出拡大プランである。これを実現させるために、まず多くの米国民が望んでいるとされているインフラ投資について共和党を含めた超党派で合意をまとめた。 そして、共和党議員の賛同を得ることが難しい、低所得世帯や子育て世代に対する所得
<アメリカが緊縮的な経済政策を基本に据える政策思想から開放される、歴史的な転換点を迎えつつある> 米国の株式市場は、セルインメイ(SELL IN MAY)が警戒された5月も最高値近辺を維持して推移した。インフレ率上昇やビットコインの急落などで市場心理が揺らぐ場面はあったが、ワクチン接種とともに経済成長率が上振れるとの根強い期待が、一部のバリュエーション指標で見れば割高の領域とも言える米国株市場を支え続けているとみられる。 政治的には、バイデン政権が、4月までに急ピッチのワクチン接種を実現させたことで、新型コロナの患者数は順調に低下した。それが経済活動再開の動きを後押しして、世の中の雰囲気を明るくしたことが大きく、米国民の政権に対する評価は総じて悪くない。4月にいわゆるハネムーン期間を過ぎたが、「コロナからの回復」という成果のおかげで、バイデン政権の政治基盤は強まった可能性がある。 第2、3
新型コロナ感染者は桁違いに少なかった日本だったが...... REUTERS/Tom Brenner <感染症を克服して経済正常化に至る局面に入りつつあるアメリカ、いっぽう日本での対応の遅れや不手際が顕著となっている...... > 3月25日のコラムでは、(1)2兆ドル規模の米国救済計画によって拡張財政政策が強化、(2)政策発動を後押しした要因として一流の経済学者の間で政府債務残高が財政政策の制約にならないとの見解が米国で主流になりつつある、などを紹介した。 バイデン政権は、3月31日に米国雇用計画を発表 その後、ホワイトハウスは米国雇用計画と称した財政プランを3月31日に発表した。新型コロナ対応と経済復調を後押しするための米国救済計画などと異なる性格を持つ財政政策である。具体的には、バイデン政権が2期続くことを想定してか8年間に及ぶ、道路などのインフラ整備や税優遇を通じた環境投資後押
バイデン政権が打ち出したアメリカンレスキュープランが成立した...... REUTERS/Tom Brenner <総額約1.9兆ドル(GDP比9%)の経済対策「アメリカンレスキュープラン」成立。大規模な財政政策に対する考え方が変わってきている......> 前回(2月25日)コラムでは、米国においてバイデン政権が打ち出すアメリカンレスキュープランの多くが実現する可能性を述べた。その後、上下院で多数派を形成する民主党の賛成で可決して、3月11日のバイデン大統領による署名で成立した。 大規模な財政政策発動の便益と弊害 アメリカンレスキュープランは、総額約1.9兆ドル(GDP比9%)の経済対策で、1年前のコロナ危機直後にトランプ政権が繰り出した対応と同規模の財政政策が発動された。内訳は、消費刺激が期待される現金給付(約4000億ドル)、失業給付拡大(約2000億ドル)、教育支援・児童手当控除(
バイデン政権が打ち出したメニューの多くが実現するとの期待が、金融市場では高まっている......REUTERS/Jonathan Ernst <米国における、戦時対応に匹敵する大規模な財政政策発動によって、2021年以降米国経済の成長率は加速する可能性が高い。しかし、日本の財政政策は......> 米国株は2月に入り史上最高値を更新、更に米国の債券市場では長期金利(10年物国債利回り)が、年初の1%前後から2月22日には1.4%近くまで上昇した。このため、金利上昇が大型ハイテク銘柄の株価などを押し下げる場面が増えている。 バイデン政権のアメリカンレスキュープラン実現への期待が高まる ただ、最近の米欧での長期金利上昇は、先行して上昇していた株式市場が想定していた世界経済の正常化を、債券市場が遅れて織り込み始めたため起きていると筆者はみている。株高と金利上昇は、ワクチンが普及すること、そしてバ
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