博覧強記の料理人、美味の迷宮を東奔西走す! 日本の「おいしさ」の地域差に迫る短期集中連載。 前回は、食いだおれの街・大阪におけるうどんのトレンドについてでした。ついに「うどん編」の〆となる5回目。なのに舞台はお蕎麦屋さん……? うどん編⑤ 「東京鍋焼きうどん」に刮目せよ 学生時代に初めて出会った京都のきつねうどんに惚れ込んだ話は既にしました。きつねうどんの揚げは甘く煮付けられたものばかりと思っていた僕にとって、京都のきつねはそうではなかった、という点が最大の驚きでした。僕はその後長らく、こういうきつねうどんは京都ならではのもので、あとはせいぜい大阪に「きざみきつね」としてひっそりと存在しているくらいと認識していました。 しかし、どうもそれは思い違いだったようです。ある時、金沢にも同様のうどんがあることを知りました。金沢のそれは名称こそ「いなり」ですが、短冊に切った揚げと青ネギが入ったその姿