「俺はとても優しいのに女はそれに気づかない。女は顔がいいだけで優しくない男を選ぶ」という感じの言説をたまに見かける。 僕はこういう物言いがすごく苦手だ。「優しさ」を甘く見ている気がする。他人に害を与えないことが優しさではない。他人を傷つけないのは「当たり前」のことだ。優しさとは「他人の立場になって、その人がしてほしいことを考える」ことだと思う。そもそも「俺は優しい」という自己認識そのものが少し危ない。優しさとは主観的なものではなく、他人からそうジャッジされるべき客観的なものだ。 僕自身も、優しくありたいとは常に思っているが、上手くいっているとは言い難い。「自分に厳しく、他人に優しく」を信条としているものの、辛い時ほど自分を優先してしまう。優しさは、基本的に自分の身を削っていくものじゃなかろうか。だから僕は気軽に「優しい」と口にできない。これはある程度の覚悟を持って発すべき言葉だと思います。