女性たちが、発言の機会も自由な経済力も乏しかった明治・大正・昭和初期。そうした不自由な時代にあっても、装いも遊びも恋愛も思い切り謳歌し、生きることの楽しさを肯定した女性たちもいた。そんな女性たちの姿をファイリングし続けるライター、石井絵里による連載企画がスタート。第一回は独特の語り口とにこやかな笑顔でお茶の間の人気者となった“小森のおばちゃま”こと、映画評論家・小森和子氏(1909年~2005年)。没後10年が経とうとしている今、彼女の人生を振り返ることで見えてくる女性の生き様とはー。 猪俣勝人氏(脚本家・映画監督 1911年~1979年)の『世界映画名作全史』によると、19世紀末に発明された映画は、20世紀の訪れを迎える頃には、すでに娯楽のひとつとして受け入れられるようになっていました。映画が文化としての立ち位置を確保すると、そこには当然、確かな審美眼と批評眼を持ち、愛情を持って作品を語