1991年に製作され、シネフィルのあいだでは幻の名作とされているという映画『スキンレスナイト』が、32年ぶりに劇場公開される。 本作には、ムーンライダーズの前身であり、1970年代前半に短期間のみ活動したバンド・はちみつぱいの代表曲“塀の上で”が、象徴的に使用されている。 “塀の上で”を「異常に好き」だという音楽ディレクター / 評論家の柴崎祐二が、音楽とその時代を鍵に本作の魅力を紐解く。連載「その選曲が、映画をつくる」、第6回。 ※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。 ピンク映画 / アダルトビデオの監督が手掛けた、幻の自伝的作品 望月六郎監督は、しようもない男を描くのが巧い。ちょっと巧すぎるくらいに。その巧さは、ときにあからさまなほど反時代的でもある。自らのしようもなさに無自覚で、夢見がちで、周りに迷惑をかけるのも厭わない、そういう「あの時代の男た