学生時代、2月14日といえばチョコレートの海だった。私がモテてたわけではない。単に女子校に通っていただけだ。念のため重ねておくが、私が女子校でモテていたからではなく、チョコが女子校であふれていたためである。 だれでもいやというほどチョコを食わされた。朝登校してクラスに一歩足を踏み入れた時点で、すでに「祭りの前夜」のごとき興奮が大気に満ちているのだ。みんなが手作りのお菓子をタッパーウェアに入れ、そわそわしている。フライング気味にチョコをポロリしている者もいる。 授業を受けていても、甘ったるいにおいが充満しているので、あんまり腹が減らない。何も食べていないのに、すでに気分はお腹いっぱいである。そして昼休みになると、熾烈な祭りが繰り広げられる。それぞれがチョコを交換しまくり、食べまくる。私のように手ぶらでプロレスリング(教室)に入場してしまった場違いな者にまで「出どころ不明のガトーショコラ」が巡