財務省が反論しようとしている積極財政論とは、財政支出の拡大を要求する議論であって、政府債務の増大を要求しているのではない。政策的な効果があるのは、あくまで財政支出であって、政府債務ではないからだ。 念のため確認しておくと、「財政支出の拡大」と「政府債務の増大」は、同じことではない。財政支出が拡大しても、税収が増えて財政が黒字化すれば、政府債務が減少することもあり得るからだ。 だから、例えば、不況による税収減で政府債務が増大しても、政府支出をいっさい拡大しなければ、それは「積極財政」とは言わない。これは、「積極財政」の定義の問題である。 したがって、政府債務の増大が成長につながっていないことを示したところで、積極財政論者への反論になるはずもないのである。 「政府債務」の規模は直接操作できない そもそも、政府は、財政支出の規模を直接操作することはできるが、政府債務の規模は直接操作できない。なぜ