〈石川〉 1963年、私は愛知県刈谷の地で明治より代々続く小さな豆腐屋の4代目として生まれました。両親は来る日も来る日も朝から晩まで作業場に立ち、私も物心ついた頃から店番や豆腐作りを手伝い、育ちました。 しかし、当時はちょうど日本が高度経済成長期に突入していく頃。少し前まで農業をしていた近所の人たちがスーツでビシッと決めて出勤していく姿を見ているうちに、私はいつしか豆腐屋の仕事によいイメージを持てなくなっていったのです。 そうして、将来はとにかく家業と離れた仕事がしたいと、両親を説得して東京の大学に進学。一人暮らしを始めたのでした。 念願叶って家業から離れ、充実した学生生活を送っていた私でしたが、しばらく経ったある日、アパートで一人夕食を食べていると、ふと両親の姿が目に浮かんできたのです。自分が食事をしているこの時にも、両親は身を粉にして働いているのだろう。そして一所懸命豆腐を作って得たお