小笠原 啓 日経ビジネス記者 早稲田大学政治経済学部卒業後、1998年に日経BP社入社。「日経ネットナビ」「日経ビジネス」「日経コンピュータ」の各編集部を経て、2014年9月から現職。製造業を軸に取材活動中 この著者の記事を見る
東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生していたことが日経ビジネスの取材で分かった。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった。 これまで東芝は、原子力事業については一貫して「順調」だと説明し、WHの売上高や利益、資産状況については明らかにしてこなかった。5月に発足した第三者委員会もWHの減損問題については踏み込んでいない。 本誌(日経ビジネス)が独自に入手した内部資料によると、WHの実情は東芝の説明とは大きく乖離している。経営陣の電子メールなどを基に、東芝とWHが抱える“秘密”を明らかにしていく。
俳優の高倉健さんが11月10日に亡くなっていたことが発表された。 死因は悪性リンパ腫。83歳だった。 私自身は、高倉健さん(以下敬称略)について、特別な思い入れを抱いている人間ではない。 同世代の男の多くが、この人のかなり熱心なファンであったことを思えば、むしろ冷淡な組だったと言っても良い。 それでも、40歳を過ぎた頃から、この人の演技(というよりも、演じている役柄に対してかもしれない)に、共感を抱くようになった。 その「共感」については、あとで詳しく説明する。 とにかく、ひとことでは説明しにくいタイプの俳優だった。 映画は私の弱点だ。 演技も苦手分野だ。 大学に入って間もない頃、まわりにいた映画通の毒気にあてられて、 「オレは映画なんか見ない」 と、変な決意を固めて以来、映画とは縁の遠い人生を送って、ここまで来てしまった。 バカな意地を張ったものだと思う。 わがことながら、自分のケツメド
急激な環境変化に直面した時、新しい環境に適合できない生物は死に絶える。その暴力的な力を前に生物は無力だ。いや、その選択圧を利用して進化してきたのが生物の歴史とも言える。 今から6550万年前に衝突した巨大隕石によって地球の環境は激変し、興隆を極めた恐竜は死に絶えた。そして僅かに生き延びた哺乳類が我々の祖先となった。 いきなり大昔の恐竜の話を持ち出したのにはわけがある。日本メーカーが世界をリードしてきたデジタルカメラが存亡の危機に瀕しているからだ。カメラを愛して止まない1人の日本人として、これは看過できない問題だ。 コンデジ市場は4年で7割も萎む CIPA(カメラ映像機器工業会)は3月3日、デジカメの世界出荷統計を発表した。そのデータを見て、私は暗澹たる気持ちになった。 青い棒グラフが、レンズ一体式のコンパクト型デジカメ(コンデジ)の出荷台数を示している。右肩上がりで伸びてきた市場はリーマン
3月8日、サッカーJ1浦和vs鳥栖戦が開催された埼玉スタジアムのコンコース内にある横断幕が掲示された。 横断幕は、最も熱心なサポーターが集うことで知られるゴール裏への通路である209という番号のついたゲートに掲示されていた。写真を見たい人は、「浦和 JAPANESE ONLY 横断幕」ぐらいなキーワードで画像検索すれば抽出されるはずなので、確認してみてほしい。 横断幕には「JAPANESE ONLY」(←「日本人以外入場お断り」ということ)という文字が大書されていた。 すぐ隣には大きな日章旗が並列されており、その二つのワンセットの垂れ幕は、大人ならアタマを下げないとぐぐり抜けられない高さに、ちょうど暖簾(のれん)のようなカタチで設置された。 で、その二つの垂れ幕をくぐりぬけた先には、大きな旭日旗が、スタジアム席の鉄柵を覆うように広げられている。 こうしてくどくどとゲートの風景を描写している
フィギュアスケートの安藤美姫選手が、この4月に女児を出産したのだそうだ。 当稿では、出産の経緯には触れない。子供の父親を詮索することもしない。 スポーツ選手について何かを書く人間は、原則として、競技以外の話題には踏み込まないのが本筋だと思うからだ。 なので、私としては、お嬢さんの誕生に関しては、「おめでとう」という言葉を述べるにとどめておく。 それ以上の言及は失礼というものだ。 ここでは、彼女の出産の扱われ方について書く。 主旨としては、一人のアスリートが婚外子を産んだことについての、世間の反応を記録しておきたいということだ。 私はあきれている。 出産は、最大限に尊重されてしかるべき個人のプライバシーだ。 そもそも他人が口をはさんで良い事柄ではないし、仮に関心を抱いたのだとしても、おもてだった形での追求はつつしむべきだ。 なのに、報道は一向に沈静化しない。 どうかしていると思う。 私が高校
羽鳥:2005年には北米大陸横断に挑戦したわけですけど、その1年後くらいには「その次はユーラシア大陸だ」と決めていました。ただ、せっかく走るからには、自分が走ることで高齢の方に元気を与えることができたらいいなと。それで70歳を過ぎるまで待って挑戦したんです。もちろん自分はアスリートでもなく普通の人間ですが、そんな自分が果たして毎日40キロ以上も走り続けて最後にゴールできるものなのか、これはまったく分からなかった。 ですが、そういう未知の世界に挑戦する姿というのを社員たちに見せたいという気持ちもありました。いろんな困難に立ち向かってゴールできたときには、社員たちにも勇気を与えることができるんじゃないかという思いでした。夢を掴むために必要なのは何なのか、毎日こつこつと積み重ねることがいかに大切か。それを1人でも多くの人に見て感じてもらえたら、という気持ちでしたね。
今回は、日本の林業・製材業が抱える問題を紹介し、木質バイオマス発電が果たす役割について考察する。バイオマス発電は、林業が再生するための切り札になるとともに、再エネ発電がもつもう一つの大きな可能性を示すものである。 木材生産額はピーク時の2割に まず、日本の林業の状況を概観する。2010年の日本の木材需要は、7025万立方メートルである。内訳は、製材用材35%、パルプ・チップ用材45%、合板用材13%、その他7%である。長期的にみると、戦後復興期、高度成長期に増加し、1973年にはピークとなる1億1800万立方メートルに達した。しかし、2度の石油危機で減少に転じ、バブル崩壊後でさらに減少した。リーマンショック後の2009年は6300万立方メートルとボトムを記録する。2010年は回復したがピーク時の6割弱に留まる。製材用材の8割は建築用であるが、ピーク時の3分の1しかない。木造住宅の着工戸数は
この半年ほど、文楽協会と橋下徹大阪市長の間のやりとりをなんとなく観察していたのだが、事態は、どうやら、最終局面に到達しつつある。 違法ダウンロード刑罰化法案について、私が当欄に原稿を書いたのは、手遅れになってしまった後のことだった。この点について、私は、ちょっと後悔している。もう少し早い段階で、何かできることがあったのではなかろうか、と、そう思うと残念でならない。 なので、文楽については、状況が流動的なうちに、思うところを文章にしておきたい。 役に立つかどうかは分からないが、コラムの連載枠を与えられている人間は、せめて、人々に考える機会を提供するべく、できる限りの努力を払わねばならないはずだからだ。 橋下市長は、補助金をカットする決意をすでに固めているように見える。 報道によれば、文楽協会とその技芸員が、市長への非公開の面会を求める方針を固めたことについて、橋下市長は、以下のように反応して
今週はAKB48の総選挙について書く。 最初に白状しておくが、私は、彼女たちについて、ほとんどまったく系統だった知識を持っていない。細かい情報や名前を別にしても、AKBとその周辺で起こっているあれこれについて、うまく整理することができずにいる。有り体に言えば、ごく普通の50代の男が持っていそうな、典型的な感想を抱いているに過ぎない。 つまり、 「なんだありゃ?」 という感じだ。 その、十分に把握できていない対象をネタに、プロの原稿書きが署名入りの記事を書くことは、普通に考えて、愚の骨頂だ。おそらく、無知よりももっとひどいものを曝すことになる。偏見とか、感覚の古さとか、自らの恥だとかを。 とはいえ、今回に限っては、自分がわからずにいることも含めて、とりあえず、私の目にAKB48現象がどんなふうに映っているのかということを書かないと、話が先に進まないと考えている。 理由は、このまま放置すると、
昨年から高騰をつづけてきた養殖用のウナギの稚魚(シラスウナギ)の取引価格が、さらに値上がりして過去最高を更新した。原因は稚魚の深刻な不漁にある。乱獲による資源の枯渇も懸念されている。ヨーロッパ産のウナギはついに国際条約で絶滅危惧種に指定された。ニホンウナギもそのリスト入りするのは時間の問題だろう。かば焼きも値上がりして、ウナ丼はいよいよ食卓から遠のいている。 1キロ250万円、暴騰するシラスウナギ 現在はシラスウナギ漁の最盛期だ。資源を保護するために漁期が設けられ、解禁日は毎年12月1日、地域的に2~4月まで漁がつづけられる。ところが、シラスウナギの主要な産地の宮崎、鹿児島などでは捕獲量は過去最低。極度の不漁といわれた過去2年間と比べても、ほとんどの産地で半分以下だ。国内で消費されるウナギの99%は養殖であり、ウナギ生産には大打撃だ。水産庁は異例の事態を重視し、近く自治体関係者や研究者らを
今週は時期がぴったりなのでバレンタイン商戦の行方について書こうと思っていたのだが、なんだか出鼻をくじかれている。 発端はツイッターだ。 お察しの通り、入り浸りなのだ。困ったことだ。せっかく2ちゃんねるから足を洗って真人間に一歩近づいたのに、予後がこれではなんにもならない。 SNSへの依存は、単純なネット依存と比べて、「やりとり」への依存を含んでいる分だけタチが悪いかもしれない。 単純なネット依存は、活字中毒とそんなに変わらない。どっちにしてもこっちのキャパシティー(容量)に限度がある以上、たいしたことにはならない。 が、コミュニケーションへの依存には限度がない。 われわれは、ラッキョウを剥くサルみたいに、コール&レスポンスの泥沼にはまってしまう。とても厄介なことだ。 タイムラインを漂流してきたのは、ジャストミートなバレンタイン情報ではない。バレンタインデーに向けて「女子力」を高めるという設
スティーブ・ジョブズ氏が亡くなった。 先月だったか、彼が米アップルの経営から退く意思を表明した際に流れてきた画像を見て、ある程度の心構えはできていた。「ああ、この痩せ方はただごとではないぞ」 と、その時に、遠くない時期に訃報が届くであろうことを、私は半ば予期した。 が、実際に訃報に接してみると、感慨はまた別だ。直接に面識の無い、いわゆる有名人の死にこれほど深い喪失感を感じるのは、もしかしたらジョン・レノンが死んだ時以来かもしれない。 ジョブズは、私とほぼ同世代(満年齢で1年3カ月、日本流の学年で言うと2学年ジョブズが上ということになる)なのだが、個人的にはあんまりそういうふうに感じたことは無い。ずっと見上げてきた存在だったからかもしれない。 彼の名前をはじめて聞いたのは、1980年代のはじめ頃だ。 当時出入りしていたコンピュータゲーム雑誌(「遊撃手」)の編集部には、「AppleII」が何台
東日本大震災から半年が経過しようとしている。 個人的には、3月11日からの半年間で、時代がすっかり変わってしまった感じを抱いている。 震災以前の出来事は、たった1年前に起きた事件であっても、遠い昔の記憶であるように感じられる。不思議な感覚だ。 震災を契機として、具体的に何が起こって、われわれの精神のどの部分がどんなふうに変化したのかについては、今後、長い時間をかけて、じっくりと検証しなければならないのだと思う。が、細かい点はともかく、わたくしども日本人の時代認識が、震災を機に変わってしまったことは確かだ。 一例をあげれば、「戦後」という言葉が死語になりつつある。 これまで、昭和が終わって元号が平成に変わっても、二十世紀が二十一世紀に移っても、「戦後」という時代区分は不動だった。で、その言葉は、つい半年前まで、国民の間に広く共有されていた。 それが、震災を経てみると、「戦後」は、にわかに後退
無視すべきだ。 常識的に考えれば当然そうなる。 論評してみたところで彼らが耳を傾ける道理は無いのだし、私が関わることでポジティブな変化が起こることも考えにくいからだ。獅子が全力を尽くすのはウサギまでだ。それ以下のサイズの生き物を追いかけることは、労力の無駄であるのみならず、百獣の王たる者の沽券に関わる。だから、獅子はネズミを追わない。君子もまたかくあるべきだ。その通り。賢い人間は炎上中の物件には近づかない。 なのに、なぜだろう、私はそれを無視することができない。 困った性分だ。 ここまでのところで、半分ぐらいの読者は、ピンと来ているはずだ。 「ああ、オダジマはまた2ちゃんねるのネタをいじくりまわすハラなのだな」 と。 「どっちにしても獅子ってガラじゃないし」 その通り。今回はフジテレビの「韓流推し」に対して、主にネット上で展開されている反発の動きについて書いてみようと思っている。 無視する
九州電力によるいわゆる「やらせメール」問題は、発覚以来、拡大し続けているように見える。以下、これまでに報道されたところを、時系列に沿って列挙してみる。 ・6月26日:佐賀県のケーブルテレビ局が、運転停止中の玄海原発(2号機と3号機)の再稼働について理解を求める県民向けの説明番組(←経産省主催)を放送した。 ・7月2日:日本共産党の党機関紙「しんぶん赤旗」が、26日の放送で紹介された視聴者からのメールの中に、九電の関係者の働きかけによる「やらせメール」が含まれていた旨を報道。 ・7月4日:佐賀県議会原子力安全対策等特別委員会において、共産党の議員が「やらせメール」問題を追及。これに対し、参考人として呼ばれた九電の中村明・原子力発電本部副本部長は、「(社内や関係会社に)どうこうしろと言った事実はございません」と「やらせ」疑惑を否定した。 ・7月6日:九電の社内調査で、同社幹部が再開賛成の意見を
暑い。 エアコンの起動を半ば封印されている今年の夏の暑さは、また格別だ。 東電の「でんき予報」をアタマから信じ込んでいるわけではない。若干疑っている。なにより、棒グラフという形式がうさんくさいと思っている。何も信じられない。日付さえ。 「でんき予報のホームページだと今日は水曜日になってるけど本当だろうか?」 「さあな。陰謀かも知れないぞ」 東電は、今後30年ほど、何を言っても疑われる。そこのところは覚悟してもらわないといけない。 「東京電力です。検針に参りました」 「ほほう、メーターに盗聴器を仕込むつもりだな?」 直接顧客と対面する部門の社員さんは大変だと思う。恨みは経営陣にぶつけてほしい。ぜひ。 東電情報の信頼性はともかく、野放図にエアコンを回すことには、やはり抵抗がある。日中、一人でいる時は、特にそうだ。自分一人のために、全空間を冷やすのだと思うと、どうしても気がひけるのだ。自分がこん
「スーパークールビズ」について、私の周辺にいる同世代の男たちは、異口同音に反対の意を表明している。 「くだらねえ」 「ポロシャツとか、何の罰ゲームだよ」 意外だ。 就業経験の乏しい私には、どうしてポロシャツが罰ゲームなのか、そこのところの機微がよくわからない。 「どうしてダメなんだ?」 彼らは説明する。 「あり得ないんだよ。単純な話」 「ポロシャツで会社行くくらいなら、いっそフーテンの寅で行く方がまだマシだってことだよ」 「でも、お前だって普段着からネクタイってわけじゃないだろ?」 「だからさ。たとえば、お前がどこかの編集者と打ち合わせをするとして、パジャマで出てこいって言われたら、その通りにするか? しないだろ?」 「……話が違わないか?」 「いや、違わない。オフィスでポロシャツを着るってことは、自由業者の生活経験に換算すれば、パジャマでスターバックスに行くぐらいに、赤面なミッションだと
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