世阿弥の言葉でよく知られた1つに「初心忘るべからず」というものがありますね。年度の初めでフレッシュマンが新しい環境に入っていくタイミングですが、この「初心忘るべからず」は、新人のみならずいろいろな世代、いろいろな年配の人間に通じるところがあるように思います。 世阿弥の言う「初心」が何かを突き詰めて難しく考えると、これはまた少し複雑なことになってしまいますので、ここでは「初心者だった頃」と簡単に考えることにしましょう。 ここで思うのは「初心者が取り組む内容が、実は一番難しい」あるいは「すべてを決定してしまう」という現実です。今年は久しぶりに大学で1~2年生対象のゼミナールを持ちまして、この原稿を書いている前日が初回だったので、いくつか思うことがありました。 東京大学に呼ばれて14年目になる今年から、指揮研究室の教育プロジェクトとしてトップエンドの水準でオペラの舞台を、実際の響きなど3次元的に