小さな藻類のミドリムシはその名の通り、きれいな緑色の体をしています。 しかしこのほど、東京理科大学と株式会社ユーグレナの研究により、かつお出汁と赤色光で培養することで「赤色のミドリムシ」が誕生することが明らかになりました。 ミドリムシの体内に蓄積した赤色色素は「カロテノイド」という栄養価の高い成分であり、抗酸化作用や眼病予防の効果を持つことから食品としての利用が期待されています。 研究の詳細は2024年2月12日付で科学雑誌『Plants』に掲載されました。
余分な卵は保険かそれとも食糧庫か?余分な卵は保険かそれとも食糧庫か? / Credit:Canva多くの鳥たちは少し多めの卵を産みます。 3匹のヒナが理想的な種では4個の卵、4匹のヒナが理想ならば5個の卵というように、卵の数は想定するヒナの数に「プラス1」したものになります。 これまで、この「プラス1」された卵は孵化の失敗・病気・捕食などによるヒナ喪失の保険として機能すると考えられてきました。 しかし新たに行われた研究によって、ヤツガシラと呼ばれる鳥たちでは卵を「プラス1」する理由が普通とは違う可能性が示されました。 ヤツガシラはユーラシアとアフリカの両方に広く分布している雑食(肉食より)の渡り鳥であり、日本でも冬になると少数のヤツガシラが渡来することが知られています。 しかしヤツガシラにはもう1つ、高い兄弟食いの頻度が知られていました。 これまでの研究で、ワシやタカなど多くの鳥類で兄弟同
「時は金なり」という格言があるように、現代社会に生きる私たちは”時間”に追い立てられる日々を送っています。 今や誰もが時計に従って行動していますし、時間を気にせずに生活できる人はほとんどいません。 しかし時計を気にしすぎることが返って、「もうこんなに時間が経ってしまった」という時間の損失感や欠乏感を生んでしまいます。 多くの現代人がそうした問題を共有する中で、どうすれば”豊かな時間”を取り戻せるのか? フィンランド・トゥルク大学(University of Turku)は今回の新たな研究で、その答えを「自然」に見出しました。 研究者によると、自然の中で過ごすことで「時間の知覚」がゆっくりになることが示されたというのです。 自然が現代社会における”精神と時の部屋”として、私たちに時間を与えてくれるかもしれません。 研究の詳細は2024年3月5日付で科学雑誌『People and Nature
奴らは海から2回にわけてやってきたようです。 慶應義塾大学によって行われた研究によって、クマムシの持つ超耐性能力が長い進化の過程でどのようにして獲得されたのか、その謎の一端が解明されました。 遺伝子解析では海に住んでいたクマムシの主流な2グループが2回にわけて別々の時期に陸上へ進出したことが示されました。 またクマムシたちの備える一部の耐性遺伝子の数は、現在の生息地の乾燥レベルとは必ずしも一致せず、過去に起きた複雑な環境変化や進化の歴史を内包している可能性が示されました。 クマムシたちは驚異的な耐性を進化のどの段階でどのようにして獲得したのでしょうか? 研究内容の詳細は『Genome Biology and Evolution』にて公開されています。
ドラゴンボールに出てくる惑星ベジータは重力が地球の10倍あります。 そんな環境で育ったサイヤ人たちは、地球人よりも遥かに優れた身体能力を手にしていました。 どうやらそれと同じことが地球のバッタにも起こるようです。 独ブレーメン応用科学大学(BUAS)の研究で、重力室の中で育ったバッタはわずか2週間で脚の強度がパワーアップすることが明らかになりました。 重力室でトレーニングを積んだ悟空のように、バッタも過重力に晒されることで強靭なジャンプ力を手にできるようです。 研究の詳細は、2023年12月6日付で科学雑誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されています。
植物も助けを求めて人知れず悲鳴をあげているようです。 イスラエル・テルアビブ大学(TAU)の最新研究により、植物は水不足で乾燥したり、ハサミで傷つけられると、人の耳には聞こえない周波数の「悲鳴」をあげることが判明しました。 この悲鳴を人間の可聴域内に低く設定すると、プチプチを潰しているかのような破裂音になっています。 ただ昆虫や小動物には植物の悲鳴が普通に聞こえており、その音を介して何らかのやり取りが行われている可能性もあるようです。 研究の詳細は、2023年3月30日付で科学雑誌『Cell』に掲載されています。 Plants Really Do ‘Scream’ Out Loud. We Just Never Heard It Until Now. https://www.sciencealert.com/plants-really-do-scream-out-loud-we-just-
このほど、中国で1歳の女児の頭蓋内から胎児が摘出されていたことが明らかになりました。 中国・復旦大学病院によると、女児は頭部の肥大症と運動能力の発達に遅れが見られたため、両親に連れられて同病院を訪れたという。 医師チームは当初、頭部に単純な腫瘍があると判断してCT(コンピューター断層撮影)スキャンを行いましたが、驚くことに、女児の脳を圧迫する形で頭蓋内に「未発達の胎児の塊」が発見されたのです。 この胎児は、一卵性双生児として生まれてくるはずだった女児の片割れと見られています。 研究の詳細は、2022年12月12日付で学術誌『Neurology』に掲載されました。 In extremely rare case, doctors remove fetus from brain of 1-year-old https://www.livescience.com/in-extremely-rare
アルファベットの発明は紀元前1800年頃まで遡り、イスラエルの古代民族「カナン人」によって使用され始めました。 このカナン人の文字体系(以下、原カナン文字)は、今日世界で使われているほぼ全てのアルファベットの原型となっています。 一方、原カナン文字の発見例はきわめて稀であり、過去に断片的な単語が見つかっているに過ぎませんでした。 しかしこのほど、イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学(HUJ)らの研究により、約3700年前の象牙の櫛(くし)の表面に、意味の通った原カナン文字の文章がついに発見されたのです。 研究者いわく「これはカナン人が書いた文章を世界で初めて目にした瞬間である」とのこと。 その記念すべき最初の文章は「私の髪と髭からシラミを取り除きたまえ」でした。 研究の詳細は、2022年11月9日付で学術誌『Jerusalem Journal of Archaeology』に掲載されていま
「科学者や医者たちの総意」を強く拒む人はいるものです。 最近では、新型コロナウイルスのワクチン接種について、世界中でそのような人たちが持論を述べてきました。 ところが、アメリカ・ポートランド州立大学(Portland State University)マーケティング学部に所属するニコラス・ライト氏ら研究チームは、それら科学に反対する人々は、自分の知識や能力を過大評価していると発表。 反科学の人たちは自分の知識が最高ランクだと信じているにも関わらず、テストを行うと、実際の知識は最低ランクだと明らかになったのです。 研究の詳細は、2022年7月20日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。 Science opponents believe their knowledge ranks among the highest, but it is actually among
今年、アメリカの中・東部で17年周期の「素数ゼミ」が大量発生する予定です。 バージニア工科大学の調べでは、各地域ごとに数百万単位で出現し、それが5月中旬〜6月下旬まで続くと見られます。 とんでもない数のセミがいっせいに大合唱するため、深刻な騒音が懸念されています。 Expect Trillions of Brood X Cicada To Invade the US After Hibernation For 17 Years https://www.sciencetimes.com/articles/29254/20210122/expect-trillions-brood-x-cicada-invade-hiding-17-years.htm
なんで重いものと軽いものが同じ速度で落ちるの? 変じゃない?重力の説明を聞いた際、軽いものと重いものの落ちる速度が一緒だと言われて、なんだか釈然としない気分を味わった人はいないでしょうか? これはガリレオ・ガリレイがピサの斜塔で実験したという逸話が有名です。鉄の玉と木の玉を落としたところ、どちらも同じ速度で落下したと言われています。 ガリレオ・ガリレイ(左)とピサの斜塔(右)。 / Credit:canva 羽根がゆっくり落ちるのは空気抵抗があるからで、真空で実験すれば鉄球と同時に落ちる、なんて説明も聞き覚えのある人が多いでしょう。 しかし、なぜそんなことになるのでしょうか? たとえば、軽い子供なら簡単に抱き上げられますが、お相撲さんを抱き上げるというのはちょっとイメージできません。 それは子供とお相撲さんでは、地球に引っ張られている力が異っているからではないのでしょうか? 重力は重いもの
本当にすべての物体が引き合っているの?アイザック・ニュートン(ゴドフリー・ネラー画)。 / Credit:Wikipediaりんごが木から落ちるのを見るまでもなく、地球上のあらゆる物体は地面に向かって引っ張られています。 それはずっと古代から人々の疑問でした。 アリストテレスは「万物には本来あるべき場所へ戻ろうとする力が働くのだ」と考えました。 彼は鳥が巣へ戻るのも、地面から持ち上げた物が地面に戻っていくのも、同じ原理によるものだと考えたのです。 しかし、太陽や月をはじめとする天体は、空を移動し続けていてあるべき場所があるようには見えません。 物体を地面に引き寄せる力とはなんなのか? それはずっと長い間人類にとっての謎だったのです。 この問題に大きな転機を与えたのが、17世紀の偉大なる科学者アイザック・ニュートンです。 ニュートンは物体に働く「力」というものを明確に定義することで、力の作用
高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……? 宇宙と脳の不思議な類似性Credit:ニューヨークタイムズ多くのヒトにとって、脳と宇宙の関連性を意識させられたのは、2006年に『ニューヨーク・タイムズ』に掲載された一対の画像でした(上の図)。 この画像の左側はマウスの脳内のニューロンを赤く染色したもの、右側には宇宙に分布する銀河の大規模構造をシミュレートした結果が映されています。 両者の構造が非常に似通っているという事実は衝撃的であり、多くの人々の記憶に脳と宇宙の神秘的な関係を刻みました。 以前から両者の構造が似ている理由は、構成割合の類似性が原
アメリカ・ウッズホール海洋生物学研究所により、イカは自らの力で遺伝子編集できることが判明しました。 一般的には生物の細胞の核内で生じるRNA編集を、「核外」で行うことができるというのです。 こうした特徴は他の生物には見られず、地球上でイカのみと思われます。 研究の詳細は、3月23日付けで「Nucleic Acids Research」に掲載されました。 イカの神経細胞はセントラルドグマから逸脱していた私たちの体をつくるタンパク質は、DNAにコードされた設計図を、様々な種類のRNAが仲介することによって生成されます。 このDNAを出発点としたRNAの仲介を介して行われる一連のタンパク質生成過程は「セントラルドグマ(中心教義)」と言われており、現代の分子遺伝学の中心となっている原理です。 この一連の過程の中で、最も際立っている存在がRNAです。 Credit: kenq セントラルドグマにおい
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