はじめに これまでファンタジージャンルの小説について、様々なことを語ってきました。例えば、ファンタジー小説について語る1 愛好家が少ないのはなぜ?では、ファンタジー小説の愛好家が少ない理由を考えました。また、ファンタジーが逃避文学ではない理由では、よく「逃避文学」と言われがちなファンタジージャンルについて、それは誤解ではないかという意見を述べました。 最近、アーシュラ・K・ル=グウィン『いまファンタジーにできること』を読み、ファンタジーについて新しい発見を得ました。今回はそれについてご紹介したいと思います。 目次 はじめに 前提条件 ファンタジーランドは中世である ファンタジーは善と悪の戦いに関わるものである 人間中心主義から離れること おわりに 前提条件 ル=グウィンは前掲書のなかで、ファンタジーについて広く前提とされているいくつかのことに、いらいらすると言っています。それらの前提は作家