新型コロナウイルスが令和5年5月8日に「5類感染症」に位置づけられてから、1年が経過しました。令和6年3月末には治療薬や入院の公費支援が終了し、猛威をふるったコロナ禍から徐々に日常を取り戻しつつあります。そのようななか、JT生命誌研究館名誉館長の中村桂子さんは「ウイルスとは何かを考えることが、これからの生き方にとって大事」と話します。今回は、生命科学研究の草分け的存在である中村さんが、ウイルスとの向き合い方をまとめた著書『ウイルスは「動く遺伝子」』より、一部ご紹介します。 生きものの世界は思いがけないことばかり 「2020年1月20日に横浜港を出港したクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号に乗り、25日に香港で下船した80代の男性が、新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)していたことが、2月1日に確認された」というニュースを聞いた時は、それほど大変なことが起きたとは思いませんでした。 け