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――不登校のきっかけは? 学校で「これがイヤだった」という明確な理由はないんです。ただ、小さな「イヤだな」はたくさんありました。引っ越しをしたことで、環境になじめなかったこと、走りまわる男子や、噂話や悪口を言う女子が怖かったこと。そうしたことが重なって、小学2年から不登校になりました。 親はなんとしてでも学校に行かせたかったようで、教室に入れなくなってからは、別室登校を勧められました。保健室登校や職員室登校など、いろいろ試しました。完全に学校に行かなくなってからも、親の勧めのままに、フリースクールや適応指導教室などにも通いました。 でも、ダメだったんです。行こうとすると苦しくなって、体が動けなくなってしまって。親とは毎朝「今日は行くの、行かないの、どっちなの!」という問答をくりかえしていました。 高校は通信制高校に進んだのですが、これも私が望んだことではありませんでした。親戚から「この先ど
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の経済大国でありながら、7人に1人が貧困にあえぎ、母と子のひとり親世帯では半数以上が貧困に苦しむ。 日本は先進国の中で、「貧困率」の高い国のひとつとして知られている。なぜ豊かな日本で貧困率が高いのか。 貧困といっても衣食住にも困る「絶対的貧困」と、社会全体の中で見ると相対的に貧困層に属する「相対的貧困」がある。日本が高いのは当然ながら「相対的貧困」のほうで、社会全体もさほど深刻な問題ではない、という意識があるのかもしれない。実際に、貧困率というよりも「格差」と考えればわかりやすいのかもしれない。 なぜこのような貧困が、豊満国ニッポンに現れるのか。貧困問題がいろいろ報道されている割には、貧困の実態がわかっていない可能性もある。いま、日本社会が直面している貧困について考えてみたい。 貧困はもっと深刻? 貧困率というデータは、
日本では、月は古代から愛され、和歌、俳句や数々の物語に現れるばかりではなく、新月、三日月、上弦の月、朧月、清月、雨月、薄月、霽月など変わりゆく様子をとらえた呼び名がたくさんある。その語彙の多さこそが人々の月に対する想いの深さの証拠だ。 そして、月のその魅惑的な引力について考えるとき、『竹取物語』を思い浮かべる人は少なくないだろう。あの物語ほど、月の謎を最大限に表現している作品はない、などと夜に洗濯物を干しながら物語の世界へと引き込まれていく私(もはや洗濯物はそっちのけ)……。 ラスボス「帝」にだって手加減はしなかった 以前、『竹取物語』(作者不詳)について書いたとき(「かぐや姫」に隠された恐怖の裏ストーリー)は、前半で展開されるユーモアたっぷりの求婚者たちへの難題や、作者不詳の当時の権力者の描き方に感心するあまりに、かぐや姫の冷酷な側面しか紹介していなかった。姫へのお詫びの気持ちも込めて、
大学受験を控えた子どもがいたある夏のこと。フランス人の知人女性に「夏休みはどんな予定があるのですか?」と尋ねられた。 「どこにも行きません。子どもが受験生なので」と答えると、彼女は心底驚いたという顔をした。そして、「あなたは厳しい母親ですね」と言う。 「厳しい母親」と言われて、意味がわからなかった。子どもが受験勉強に励んでいるのに、自分だけ旅行に出掛けようという気持ちにならない。受験生に留守中の家事をさせるのも負担になると思うからなのだが。 旅行も我慢=子どもへのプレッシャー? 彼女が言葉を続ける。 「母親の自分はバカンスを我慢して、子どもを応援している。あなたはそうして、子どもに無言のプレッシャーを与えているのではないかしら」 「そういうつもりはないけれど……」と答えつつ、知人の指摘を新鮮に感じた。フランス人は「バカンスのために働く」と言われる。そのバカンスをあきらめて子どもの受験をサポ
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でも、すでに子どもが大きくなっていて「今さら読み聞かせは無理」という場合も多いことと思います。そういうときは、もうあきらめるしかないのでしょうか? いえ、いえ、そんなことはありません。読み聞かせ以外にも効果的な方法がありますので、今回はそれを紹介いたします。 子どもが好きな分野の本から入る まず1つめは、子どもが好きな分野の本から入ることです。たとえばサッカーが好きで読書はあまりしないという子がいたら、サッカーに関する本がイチオシです。サッカーの歴史、サッカーの戦術、サッカーの練習方法、有名選手の伝記など、子ども向けの本がたくさん出ています。サッカー少年が活躍する物語もたくさん出ています。ネットで検索すれば、すぐ見つかります。もちろん、文字の本が無理なら漫画でもいいでしょう。 いわゆる本ではありませんが、専門雑誌もお薦めです。たとえばサッカーが好きな子ならサッカーの専門雑誌です。雑誌はビジ
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この春、京都精華大学はマリ共和国出身のウスビ・サコ教授を名誉ある学長に任命した。これは歴史的な動きである。文部科学省によると、サコ教授はアフリカ系として日本の大学の学長となった最初の人物となった。京都精華大学は漫画やアニメの学部で知られ、漫画家やアニメ作家を目指す学生たちに人気がある。 51歳のサコ教授が、西アフリカでも最も発展の遅れた国の1つであるマリの高校を卒業してから、世界有数の先進国の大学で誰もが望む地位に就くまでの道のりは決してまっすぐとは言えず、挑戦に満ちたものだった。しかも、その第一歩は、慣れ親しんだ西アフリカから中国という、まったく馴染みのない環境へ飛び込むことだった。 中国語を必死で覚えたのに… 1960年代以降、中国共産党の「第三世界」同盟は、アフリカ諸国と友好関係を築き維持することを目指した。この目標達成のため、中国はマリを含むアフリカ数カ国の学生に対し給付型奨学金を
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そこで、早速これまでに読んだり聞いたりしてきた(しかしさほど詳しいわけでもない)発達障害の知識を総動員して、お話を聞かせてもらったのでした。 「おとなたちには、わからない。」シリーズ。今回は、5歳で発達障害の診断を受けて特別支援学級に通ってきた、高橋涼音さん(仮名)のお話です。 「特殊学級」→「特別支援学級」の1期生 涼音さんが発達障害の診断を受けたのは、2002年のこと。当時、発達障害という言葉を知る人は、まだ少なかったでしょう。看護師である涼音さんの母親が発達障害の知識をもっていたことから、早い時期での診断に結び付いたのでした。 涼音さんの幼少期は、なかなか波乱に満ちていました。小学校低学年のときは、一時保護所(児童相談所に付属する施設。18歳未満の子どもを預かる)で生活していたこともあります。これは、同じアスペルガー症候群でも自閉傾向が強かった妹さんの家庭内暴力のためでした。 一時保
なぜ東大ランキング上位には男女別学校が多いのか 2018年の高校別東大合格者ランキングの上位20校のうち75%は男子校か女子校である。因果関係は別として、結果として男女別学校の生徒の学力が高い傾向にあることは、日本だけでなく海外でも多数報告されている。 少なくとも日本において、考えられる理由は2つ。1つは、もともと名門校と呼ばれるような学校に男子校・女子校が多いこと。もう1つは男子校・女子校という教育環境に、それぞれの性の能力を引き出す力があること。 拙著『開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす』でも触れているが、戦前まで、小学校を卒業するとその先はすべての学校が原則的に男女別学校だった。戦後、GHQの指導の下、共学化が進められた。ただし、GHQの指導がゆるかった東日本の一部の地域では男女別学校が存続した。また、私学においてはGHQの指導の対象外だったので、その多くが男女別学を存続し
日本人にとって、「コメ」はなくてはならない主食と言われている。昨年の一汁一菜ブームも、コメはデフォルトの「主食」として想定されていた。しかし、現実には、1962年度に年間1人当たりの消費量がピークを記録して以来、コメの消費量は減り続けている。 この問題は長年くり返し報道され、議論されてきたにもかかわらず、その傾向は一向に変わることなく、2016年度には1962年度の約半分、約54キロにまで減少している。なぜ、食事に不可欠なはずのコメの消費量は、減り続けているのだろうか。 1人分を調理するのは面倒くさい その原因としては、「食生活の多様化によって主食の選択肢が増え、相対的にコメの割合が減った」「女性の社会進出が進み、外食・中食に頼る傾向が強くなった」などの見解が代表的だ。もちろん、この2つの要因は、大きな関係があるだろう。 しかし、食卓の現場はもう少し事情が複雑である。 飲食関係の企業に勤め
「ロンドンに行ったら、自由時間に地下鉄に1区間でも乗ってみようと思ったんです。でも、ちょっと乗るだけで800円近く取られるというのはひどいと思いませんか?」 日本から添乗員付きのいわゆるパッケージツアーでイギリスにやって来た60代の男性はそういぶっていた。ロンドン市内での移動時に利用者が日本円にして毎回800円も払って地下鉄に乗るとは到底思えない。では、どうしてこのような事態が起きるのか、そのカラクリを改めて調べてみることにした。 多くの駅で有人窓口が廃止 「ホテルの近くに駅があるんで、そこから隣の駅まで乗って、歩いて帰って来よう、とかそんなことを考えながら駅に行ったんです」 世界最古の地下鉄ってどんなものなのかな、と思いながら、「ロンドン滞在のイベントの1つ」と計画していたこの男性。切符の買い方を駅員に聞いたら「1駅乗るだけでも4.90ポンド(約760円)」と言われたという。 「そんなに
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ここ5年間ほど、「道徳的か否か」を善悪の判断基準として、相手を徹底的に攻撃する人々の動きが目立つ。攻撃対象は刑事罰の対象となる犯罪者ではない。マナーが悪いとか、不倫をした、といった程度の人を犯罪者のように扱い、社会的生命を失うまでバッシングする。 私は現代日本社会に跋扈するこのような人々を、「道徳自警団」と名づけた。犯罪ならば警察官が取り締まるが、不道徳行為は犯罪ではないので、取り締まらない。警察に代わって不道徳者を取り締まるので、道徳自警団だ。相手が犯罪者でなければ、警察は何もしない。そこで道徳自警団は、自分たちでテレビ局や政治家の事務所に抗議の電話をしまくって、相手が謝罪したり、辞任したりするまで”合法的に”追い込む。犯罪者を摘発するのではなく、不道徳者を目の敵にするのが、道徳自警団の特徴だ。 不倫も、飲酒も、公私混同も許せない 道徳自警団は週刊誌がかぎつけた「不道徳」ネタを、ネット上
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春はもうすぐ。入園・入学を控えた子を持つ読者の方も多いだろう。では、わが子の通う幼稚園や小中学校の、教育内容の基準が今春から段階的に変わっていくことをご存じだろうか。幼稚園の「教育要領」と小中学校の「学習指導要領」が2017年3月に改訂され、2018年度から移行が始まるのだ(全面実施は小学校で2020年度、中学校で同2021年度から。その間は移行期間とされ教科ごと、学校ごとの対応が求められる)。 政府は今回の新要領で、「小学校の外国語教育の教科化」のほか、全体として「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を重視した学びの展開を目指している。知識偏重の教育から思考力や判断力、表現力を育む教育へのシフトである。 新要領に改訂された背景 なぜ今、改訂が必要だったのだろうか。文部科学省は改訂の理由について、情報化やグローバル化によって社会が人間の予測を超えて変化する中で、「新しい時代
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