日本に外国産のウシが導入されたのは明治時代に入ってからのことです。従って、江戸時代の浮世絵27点に描かれたウシは、純粋な在来牛であると思われます。 まず、毛色をみてみると黒毛が最も多く、24点に描かれています。白黒斑のウシは4点、褐毛が1点です。これらから、在来牛は現在の黒毛和種のような黒毛のウシが最も多かったことがわかります。黒毛のウシの中で鼻梁に縦線が描かれているものも9点ありますが、これはウシの毛色ではみられないもので「作」と呼ばれるウマの白徴と似通っています。牛馬の毛色を混同したとも考えられますが、鼻梁が光線によって輝いている様から発展した表現と考えられます。特に黒牛を正面から描いた時の定型化した表現として多く用いられ、歌川派のなかでも初代豊国と師弟関係にある初代国貞(三代豊国)、国芳、芳虎の手によって描かれています。 白黒斑のウシは、4点中2点が車町(牛町)で牛車をひいていた