■曲作りを楽しむ天才に共感 ビートルズはぼくの世代、とりわけ音楽に携わるものにとって避けて通れないランドマークである。しかし20代の自分に、その衝撃はすぐにはやってこなかった。ラジオで聞いたヒット曲「抱きしめたい」(1963年)はいい曲で好きだったが、そのあまりにもアイドル的な人気や、失神するロンドンの女の子のニュース映像を、ぼくは横目で見ていたものだ。 ところがアルバム「ラバー・ソウル」(65年)から見方が変わった。そこには予想外の新しい音楽が詰まっていたのだ。そして「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(67年)とBBCのテレビ映画用に制作され、後にアルバムとして編集された「マジカル・ミステリー・ツアー」(67年)で、ぼくは彼らの魔法にすっかりやられてしまった。音楽はマジカルな力を秘めたもの、と思うようになったのだ。 その力の秘密が著者とポールのやりとりから解明さ