中学校三年生の夏休みに書いた論文です。 「聖諦へ〜太宰治と井原西鶴」 目次 I.はじめに II.西鶴から見た人間太宰治 (1)倫理−「武家物」より− (2)滑稽、おどけ−「町人物」「雑話物」−より (3)“聖諦”へ−西鶴以後ー III.終わりに 参考文献 要旨 一般的に、太宰治という人は、破滅へ向かってまっしぐら、下降指向の人生を歩んだ人だと受け取られているようである。 しかし、それに疑問を持った私は、太宰の二人のライバルである井原西鶴と、イエス・キリストから見た、上昇指向の太宰治を検証してみようと思った。ただ、イエスはあまりにも重い存在なので、文学上のライバルである西鶴に重点をおくことにする。紙数も力量も足りないからである。 太宰は、もともと誠実、正義といったものに対する、厳しい倫理観を持っていた。 ところが、彼のいわゆる「前期」において、その倫理に反する事件が次