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小田嶋の検索結果1 - 40 件 / 71件

小田嶋に関するエントリは71件あります。 社会政治小田嶋隆 などが関連タグです。 人気エントリには 『小田嶋隆さん、お疲れ様でした。そしてありがとう。』などがあります。
  • 小田嶋隆さん、お疲れ様でした。そしてありがとう。

    日経ビジネス電子版で「『ア・ピース・オブ・警句』~世間に転がる意味不明」、日経ビジネス本誌では「『pie in the sky』~ 絵に描いた餅べーション」を連載中のコラムニスト、小田嶋隆さんが亡くなりました。65歳でした。 小田嶋さんには、日経ビジネス電子版の前身である日経ビジネスオンラインの黎明(れいめい)期から看板コラムニストとして、支えていただきました。追悼の意を込めて、2021年11月12日に掲載した「晩年は誰のものでもない」を再掲します。 時の権力者だけでなく、社会に対して舌鋒(ぜっぽう)鋭く切り込む真のコラムニスト。その小田嶋さんがつむぐ1万字近い原稿を、短い言葉でどう表現するか。記事タイトルを短時間で考える担当編集者にとっては、連載の公開前日は勝負の1日でもありました。 再掲載するコラムは療養中の病室から送っていただいた原稿です。「晩年」という言葉やそれを何も考えずに使う社

      小田嶋隆さん、お疲れ様でした。そしてありがとう。
    • 死ぬこと以外かすりキス?

      なんと、黒川弘務東京高検検事長が辞意を表明した。 2020年に入ってからというもの、毎日のようにびっくりすることばかりが続いていて、何かに驚く感受性自体が、たとえば去年の今頃に比べて、50%ほど鈍化した気がしているのだが、それでも今回のこのニュースには仰天した。 黒川氏は、5月21日発売の「週刊文春」誌がスクープしている新聞記者との賭け麻雀の事実関係を認めて、辞意を漏らしたもののようだ。 してみると、3日前(18日)に政府が検察庁法の改正案の今国会での可決成立を断念した理由も、安倍総理が説明していた「国民の皆様のご理解なくして前に進めて行くことはできない」という筋立ての話ではなかったことになる。 「ネット世論が政治を動かした」 というわたくしども野良ネット民の受け止め方も、こうなってみると、ぬか喜びというのか、勘違いだった可能性が高い。 政府が法改正を断念した理由は、あらためて考えるに、黒

        死ぬこと以外かすりキス?
      • 招待客1万人の口を封じることはムリ

        今回は、「桜を見る会」の話をするつもりでいる。 このあまりにもベタで生煮えな話題を、あえていま騒動の渦中にあるタイミングでまな板に載せることにした理由は、私自身が「桜を見る会」まわりの問題を重視しているからというよりは、いまのうちに取り上げておかないと、来週の今頃にはすっかり風化しているだろうと考えたからだ。 桜は満開から3日後には早くも散り始める。この種の話題は、風化が早い。 そう判断したからこそ、官邸は中止の決断を急いだのだろう。 「なあに、さっさとテントを畳んで撤収すれば、じきにいつまでも跡地で騒いでいる連中の方が間抜けに見えるようになる」 という判断だ。 そして、その彼らの判断は、おそらく間違っていない。 メディアは3日で飽きるだろうし、野党が粘ったところで国民の関心はどうせ1週間ももたない。われわれは匙を投げるだろう。 「やめるって言ってるんだからもういいじゃないか」 と、そうい

          招待客1万人の口を封じることはムリ
        • 12月3日を「日本語が死んだ日」に

          「桜を見る会」の名簿データが消去された話を聞いて、私は、一も二もなく 「データの一滴は血の一滴」 という言葉を思い浮かべた。 で、早速そのフレーズをタイプした勢いで原稿を書き始めた次第なのだが、冒頭の10ラインほどに到達したところで、 「ん? なんだかこのテキストは、むかし書いたおぼえがあるぞ」 ということに思い当たった。 原稿執筆中にデジャブに襲われるのは、実のところ、そんなに珍しいなりゆきではない。 たとえば、武者小路実篤先生の晩年の作品には、同じフレーズや描写が、かなりの頻度で登場する。 武者小路先生ご自身が、自分でわかっていて自己模倣をやらかしていたのか、それとも無意識のうちに同じ文章を繰り返し書く症状を獲得するに至っていたのかは、いまとなっては誰にもわからない。 ともあれ、ある程度年齢の行った書き手は、いつしか、昔書いたのと同じ文章を書いている自分自身に遭遇することになっている。

            12月3日を「日本語が死んだ日」に
          • 小さなウソを容認すると起こること

            「ニューオータニの宴会場で800人の立食パーティーをやって、一人アタマ5000円で済むのか」 という話題が、この1週間、様々な場所で行ったり来たりしている。 バカな話だと思う。 私の感覚では、無理に決まっている。これが無理でないのだとすると、この世界に「価格」というスタンダードがあること自体がおとぎ話になってしまう。 どんなに優秀な幹事を立てたところで、きょうび都内の一流ホテルで料理と飲み物を出すパーティーが、一人アタマ1万円以下の会費でペイできる道理はない。聞けば、当日は有名寿司店の寿司がふるまわれたというし、名前の知れたシャンソン歌手が歌う場面もあったのだそうだ。だとすれば、なおのこと5000円という会費はあり得ない。完全に不可能だとまでは断言しないが、近所のコンビニで売っている120円のシュークリームひとつで丸1週間食いつなぐことが困難であるのと同じほどにはバカげた話だと思う。 仮に

              小さなウソを容認すると起こること
            • 人の結婚に介入したがる彼らは何者なんだ?

              衆議院の代表質問で、心ない野次が飛んだようで、その時の様子が早速新聞記事になっている。 「心ある野次」といったようなものがあるのかどうかはともかくとして、今回のこの野次に関しては、野次を飛ばした行為そのものよりも、野次の内容をくわしく分析せねばならない。 記事によれば、1月22日の衆議院で、国民民主党の玉木雄一郎代表が選択的夫婦別姓の導入を求める発言をしたタイミングで、 「それなら結婚しなくていい」 という趣旨の野次が 「自民党席の女性議員から飛んできた」 のだという。 なるほど、心ない野次だ。 しかしながら、心ない野次を飛ばす人間にも、やはり心はあるわけで、今回は、その彼または彼女の「心」について考えてみたい。 選択的夫婦別姓については、これまで、ほかのところにも何回か寄稿したことがあって、その度に同じことを書いている気がしている。もっとも、夫婦別姓のような隅々まで論点のはっきりしている

                人の結婚に介入したがる彼らは何者なんだ?
              • 「日本人感」って何なんだろう

                Netflixの『13th -憲法修正第13条-』というドキュメンタリーを見た。 現在、この映画は、Netflixの契約者以外にもYou Tube経由で無料公開されている。 お時間のある向きは、ぜひリンク先をクリックの上、視聴してみてほしい。 世界中の様々な場所に、BLM(Black Lives Matter)のスローガンを掲げたデモが波及している中で、Netflixが、2016年に制作・公開されたこのオリジナル作品を、いまこの時期に無料で公開したことの意味は小さくない。 世界の裏側の島国でステイホームしている私たちとしても、せめて映画を見て考える程度のことはしておこうではありませんか。 ただ、視聴に先立ってあらかじめ覚悟しておかなければならないのは、1時間40分ほどの上映時間いっぱい、間断なく表示される大量の字幕を、ひたすらに読み続けることだったりする。この作業は、字幕に慣れていない向き

                  「日本人感」って何なんだろう
                • 荒れるアメリカがうらやましい理由

                  アメリカが大変なことになっている。 海外のニュースサイトやTwitter経由で流れてくる動画を見る限り、ほとんど内戦が勃発しているように見える。 こういう時は、頭を冷やさないといけない。 現地で暮らしている複数の日本人の証言に耳を傾けると、デモが暴徒化しているのはあくまでも一部のできごとであるようで、アメリカ全土に火が放たれているわけではない。報道メディアのカメラが、武装した警官隊と群衆との衝突のような、扇情的な映像をとらえるのは、彼らの責務でもあれば商売でもある。しかし、その映像をリビングの液晶画面越しに視聴しながら、全米がニュース映像そのままの混乱に陥っていると考えるのは、やはり早計だ。 とはいえ、トランプ大統領のTwitterを眺めていると、やはり心配になる。彼は、デモのために集まっている市民や、暴徒化しつつある一部の人々をむしろ煽りにかかっている。それどころか、この混乱に乗じて、全

                    荒れるアメリカがうらやましい理由
                  • 高校生の肘をサカナに旨い酒を飲む

                    毎年、この時期になると高校野球の話題を取り上げている気がしている。 しかも、毎度同じような立場(具体的には「高校生の苦行を見物するのは悪趣味だぞ」的な上から目線での決めつけ)から苦言を並べ立てる趣旨の原稿を書いている自覚がある。 読者の中には、オダジマが毎回繰り返し持ち出してくる甲子園関連記事に食傷している向きも少なくないはずだ。 「ああ、オダジマがまた高校野球にケチをつけている」 「きらいなら黙ってればいいのに」 「気に食わないコンテンツを無視できないのって、一種の病気だよな」 「うん。不幸にして不毛な不治の病だと思う」 大筋において、私のイチャモンのつけ方がおとなげないことは、認めなければならない。 にもかかわらず、自分の言いざまがくだくだしいことを承知の上で、それでも私は口をはさまずにいられない。 困った性分だ。 この問題(←毎夏、甲子園大会が開催されるたびに表面化することになってい

                      高校生の肘をサカナに旨い酒を飲む
                    • 「マルチアンチ」な彼らの正体

                      前回更新分の当欄コラムで、『13th -憲法修正第13条-』というNetflix制作の無料配信動画をご紹介したところ、その動画を見たという人々から様々な反響が寄せられた。 大部分は、 「見る価値のある映画だった」 「合衆国の歴史を見る目が変わった」 という感じのポジティブな反応だったのだが、一部には 「内容が一方的だ」 「プロパガンダ臭が強すぎる」 といった見方を伝えてきた人々もいる。 私個人としては、あの動画を「プロパガンダ」と断定してしまう評価には共感できないのだが、それはそれとして、自分の中に無い視点から作品を読み解く解釈を知ることができたのは収穫だった。ひとつの作品を、ネット上に散在する不特定多数の人々とともに同時視聴する経験の貴重さに、感銘を受けた。 ただ、作品の評価とは別に、先日来アメリカで吹き荒れているBLM(Black Lives Matter)の運動について、 「ここ10

                        「マルチアンチ」な彼らの正体
                      • 告発する人間を異端視する世界

                        先週から今週にかけて、似たような事件が3件続発した。 「似たような事件」とは言っても、細かく見て行けば、背景は微妙に違っている。個々の事件が明るみに出した問題点も、それぞれに異なっている。ところが、3つの話題を伝える報道記事をひとつのテーブルの上に並べてみると、あらまあびっくり、なんとも見事な「女性蔑視連続事件」とでも言うべきひとつのシリーズが出来上がってしまっている。ここのところがポイントだ。 つまり、われわれは、それぞれに異なった別々の出来事が、ほとんどまるで同じひとつの事件であるように見えてしまうメディア環境の中で暮らしている。このことは、われわれの感覚が粗雑になっているということでもあれば、メディアによる報道がそれだけ劣化してきているということでもある。 今回は、この1週間ほどに相次いで発覚した3つの炎上案件をひとまとめに扱うことで、それらの出来事に共通の背景を与えている「気分」に

                          告発する人間を異端視する世界
                        • Zoomに心を許さない理由

                          緊急事態宣言が出てからこっち、世の中の設定が、すっかり変わってしまったように見える。 にもかかわらず、先週も書いたことだが、私の生活はたいして変わっていない。 あるいは、私はずっと以前から緊急事態を生きていたのかもしれない……というのは、はいそうです、格好をつけただけです。本当のところを申し上げるに、私の生活は、緊急性とはほぼ無縁だ。それゆえ、このたびの事態にも影響を受けていない。それだけの話だ。 ブルース・スプリングスティーンの歌(1973年に発売されたアルバム「アズベリー・パークからの挨拶“Greetings from Asbury Park, N.J.”」に収録されている“For You”という歌です)の中に 「おい、人生ってのはひとつの長い非常事態だぞ」(Your life was one long emergency) という素敵滅法な一節がある。 私は、残念なことに、そういうロ

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                          • 人の不安を笑うな

                            新型コロナウイルスによる肺炎が、実際のところ、どの程度蔓延しているのか、私は、正確な情報を持っていない。幾人かの専門家が、現時点でのおおまかな推測を語ってくれているのだが、ひとくちに専門家といっても、いろいろな立場の人がいて、言っていることの内容もピタリと一致しているわけではない。感染者を多めに見積もっている人もいれば、軽めにアナウンスする人々もいる。なので、どちらに信を置くのかによって、私のような素人の見方は、かなり大幅に変わってしまう。 対策についても同様だ。 こまめな手洗いうがいを心がけて、不要不急の外出を控えるといったあたりの対処法に関しては、ほとんどの専門家の意見が一致しているものの、その先の対応(発熱、咳などの症状が出た時に、どんなふうに対処すべきなのか、あるいは、重症者以外への検疫の是非などなど)をどうするのかということになると、彼らの間でも様々に見解が分かれている。 と、自

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                            • 杉田水脈氏が「無敵」だった理由

                              「女性はいくらでもうそをつけますから」 と、杉田水脈議員は言ったのだそうだ。記事にはそう書いてある。 見出しを読んだだけでは、この発言の悪質さは伝わらない。 うっかり読むと、杉田議員は個人的な観察を述べただけであるように思える。 というのも、実際、女性はうそをつくことができるからだ。 うそをつくのは女性だけではない。男性だってうそをつく。子供も大人も、当然ながら、うそをつく。のみならず、日本人も外国人も、金持ちも貧困層も、およそすべての人類は例外なくうそをつくことができるし、現実に、多くの人間は、うそをつきながら日々を暮らしている。 そういう意味で、一般論として述べるのであれば、杉田議員の言葉は間違っていない。間違っていないどころか、人類普遍の真実を端的に述べた勇気ある言葉であると評価することさえ可能だ。 しかし、杉田議員は一般論を語ったのではなかった。 彼女は、性暴力に対する相談事業につ

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                              • 森氏が五輪組織委トップに祭り上げられる理由

                                「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」 と、森喜朗・ 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長は言ったのだそうだ。 この発言の第一報が伝えられた日の夜、ツイッターのタイムライン上には、記事を読んだ人々が、それぞれ、五輪の幕引きの手順や、尻拭いの方法について、思い思いの感慨を書きこんでいた。 なんというのか、第一報が伝わった時点で、すでに 「女性蔑視」 というのは、主要な論点ですらなくなっていたわけだ。 当然といえば当然だろう。森さんの発言がドンピシャリの女性蔑視であることは、いまさら誰が検証するまでもなく、隅々まではっきりしている。そんな論点について、ことあらためて議論をするのは時間の無駄というものだ。 とすると、次の問題は、森さんの言葉が、JOCの臨時評議員会という公の場所で五輪組織委のトップが発信する内容として適切であったのかどうかなのだが、これについても

                                  森氏が五輪組織委トップに祭り上げられる理由
                                • 小田嶋さんへの手紙

                                  2022年6月24日、日経ビジネスオンライン時代から長くご執筆をいただいてきたコラムニスト、小田嶋隆さんがお亡くなりになりました。 今回は、小田嶋さんに近しい方々にいただいた寄稿を掲載して、皆さんと一緒に偲びたいと思います。 最初は、日経ビジネスに小田嶋隆さんをご紹介くださったジャーナリスト、清野由美さんです。 追悼、小田嶋隆さんへ ついにこの時が来てしまった。 小田嶋さんが脳梗塞で入院された時から、ずっと、はらはらと過ごしてきた。編集Yこと、日経ビジネスの山中浩之さんから電話の着信があると、覚悟を決めて出るのが習いになっていた。小田嶋さん本人の美学から、逐一の病状はうかがっていなかったが、じわじわと砂の落ちる音は伝え聞いていた。 私にとっては、昨秋「中央公論」で小田嶋さんとオバタカズユキさんの対談の仕切り役をした時が、今生のお別れとなった。幾度かの入院治療のインターバルのタイミングで、身

                                    小田嶋さんへの手紙
                                  • 2カ月後にこの国で展開される悲喜劇への覚悟

                                    東京五輪・パラリンピックは、本当に開催されることになりそうだ。 まさかそんなバカなことが、と思っていたまさにそのバカなことが、想定した悪夢の外形を保ったまま、真に俗悪で陋劣な安物の悲喜劇として、いよいよ上演の時を迎えるわけだ。 なんということだろう。 私たちは、またしても引き返すことのできない“崖の上のレミング”であることを、全世界に知らしめるのだ。 覚悟を決めておかなければならない。 われわれは、とんでもないものを目撃するだろう。 正直なところを申し上げるに、私は、ここへ来て、五輪の醜態を、ちょっと楽しみにしはじめている。 というのも、これほどまでに壮大な人類史的愚行をつぶさに観察できる機会は、この先、一生涯めぐってこない気がしているからだ。 2カ月後に、この国で展開されることになっている人間の愚かさの爆発を、私は、細大漏らさず、可能な限り克明に記録しようと思っている。 一介のコラムニス

                                      2カ月後にこの国で展開される悲喜劇への覚悟
                                    • ワクチン担当大臣が「ブロック」すべき相手

                                      いくつかの国で新型コロナウイルスのワクチン接種がはじまっている。 たとえば、イスラエルでは、すでに100万人以上がワクチンの接種を終えている。ちなみに、イスラエルの100人あたりの接種率は11.55%になる。この接種率は現状(2021年1月3日時点)では世界一の数字だという。 ほかにも、アメリカで医療従事者向けの接種が開始されたことや、トルコのエルドアン大統領がワクチンの注射を受ける姿を公開したことなど、世界各地からワクチン関連の報道が続々と伝わってくる。 これらのニュースは、COVID-19に対して、各国が「情報戦」をはじめたことを伝えるものだと考えて良い。 感染爆発から脱却して国民経済を再建することは、世界中の政治家にとって、政治生命を賭した命がけの「戦争」にほかならない。してみると、有効なワクチンを優先的に確保して、それらをなるべく早いタイミングで、可能な限りたくさんの国民に接種せし

                                        ワクチン担当大臣が「ブロック」すべき相手
                                      • 10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する

                                          10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する
                                        • 汚れてしまった「絆」という日本語

                                          東日本大震災から10年の節目を迎えて、テレビの画面や新聞の紙面には、震災回顧の企画が並んでいる。 似たようなトーンの番組に食傷する一方で、10年という時間的な尺度の有効さを、あらためて思い知らされている。 あわただしい日常に追われていると、どうしても視野が狭くなる。 日々の仕事に忙殺されている21世紀の人間は、だから、いつしか、過去を振り返ったり、未来に思いを馳せたりする作業を怠るようになる。 10年を区切りとしたタイムスケールは、そんな調子で近視眼的になっている私たちに好適な時間的視野を提供してくれる。 たとえば、自分の人生を10年刻みのブロックに分けて、そのひとつひとつに見出し(ヘッドライン、あるいは「章タイトル」)をつけてみるとわかりやすい。生まれてから現在までのひとかたまりの人生に、ひとつの決定的なタイトルをつけろと言われたら、誰であれ、途方に暮れるところだと思うのだが、自分の過去

                                            汚れてしまった「絆」という日本語
                                          • 路上飲みを楽しむみなさんに伝えたいこと

                                            ほどなく、3回目の緊急事態宣言が発令されるようだ。 まあ、仕方がない。 PCR検査の実施数が頭打ちで、ワクチン接種のメドが立っていない以上、お国としても、国民に忍耐を強いるほかに打つ手がないのだろう。 ちなみに、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は、4月21日の会見の中で、五輪選手には大会中毎日のPCR検査を実施する方針を明らかにしている。なんと毎日!である。 つまり、「頻回の検査と陽性者の隔離を確実に励行していれば、感染の拡大を防止できるはずだ」という、昨年来ずっと言われていたこの当然の指摘を、政府の中枢にいる人々は、内心ではきちんと理解していたのである。 とすると、彼らが、その「検査と隔離による感染拡大防止策」を、五輪出場選手に適用する一方で、その同じ方針を、われら一般国民に適用しないでいる理由は那辺にあるのだろうか。 数が多いからあきらめているのだろうか。 それとも、コ

                                              路上飲みを楽しむみなさんに伝えたいこと
                                            • かくして、全国民がダサくなる

                                              菅義偉総理大臣が、日本学術会議の会員候補105人のうち6人の任命を拒否したことへの反発は、意外な方向に広がりつつある。 当事者たる学問の世界の人間が抵抗するのは当然なのだとして、反発の声は、映画人や出版界にも飛び火し、ネット上では署名運動もはじまっている。 もっとも一方では、抗議や反発の動きを牽制する声も高まっている。 ……と、ここまでは、よくある両睨みの定型的な書き出しなのだが、当稿では、反政権派でも政権支持層でもない第三極の人々に注目するつもりでいる。 というのも、日本人の大多数は、その第三極に当たる洞ヶ峠で、静かに事態を眺める態度を選んでいるように思えるからだ。 重要なのは、サイレントマジョリティーの真意が「沈黙」それ自体の中にあるということだ。 どういう意味なのか説明する。 思うに、うちの国の静かなる大衆は、どうやら、学問の自由を防衛しようという声にも、倒閣運動に反発する声にも耳を

                                                かくして、全国民がダサくなる
                                              • セコくなった大臣の首取り

                                                吉本興業と京都市が仕組んだと言われているステマのお話はその後どうなったのだろうと思っている読者はいないだろうか。 私はそう思った。だから、各方面の報道をチェックしていた。ところが、11月に入ってからこっち、ふっつりと続報が途絶えている。どうやらこのニュースはこのまま黙殺されるカタチでフェードアウトする流れに入ったようだ。つまり、吉本ステマ案件は、報道的には、すでに風化過程に組み込まれているわけだ。 なので、蒸し返すことにする。 私が、あえてこのさしたる大事件にも見えない吉本ステマ騒動にこだわっているのは、この事件に限らず、最近、メディアが報道案件を取り上げる時の扱い方に納得できない気持ちを抱いているからだ。 思うに、21世紀の不況下の報道メディア各社は、ニュースバリューの大きさや事件の重要性よりも、取材のやりやすさや、視聴率の高さを重視する方向にシフトしている。だからこそ、ふだんから付き合

                                                  セコくなった大臣の首取り
                                                • ニコニコしているのは、幸福な日本人だろうか

                                                  奇妙な夢を見た。 今回はその話をする。時事問題をいじくりまわしたところで、どうせたいして実のある原稿が書けるとも思えない今日このごろでもあるので、こういう時は身辺雑記を書き散らすことで当面の難局をしのぎたい。 夢の中で、私は、古い家族のメンバーとクルマに乗っている。私は明らかに若い。30歳より手前だと思う。運転はなぜなのか母親が担当している。クルマの少し前を父親の原付きバイクが走っている。父親は既に老人になっている。亡くなる少し手前。たぶん70歳前後ではなかろうか。 と、その父親の操縦する原付きバイクが交差点でモタついたせいで、右折してきた対向車とぶつかりそうになる。見たところ、トラブルの原因は父親の運転の危うさにある。 そこで、私が出ていって相手方に謝罪してその場をおさめる。行きがかり上、原付きバイクには私が乗って行くことになる。 すると、しばらく走ったところで、二人の警察官に呼び止めら

                                                    ニコニコしているのは、幸福な日本人だろうか
                                                  • あなた、ウソヲツイタネ?

                                                    ディエゴ・マラドーナが死んでしまった。 多少ともサッカーに関わりを持ったことのある人間は、誰もが落胆していると思う。私も同じだ。朝方に第一報を知って以来、茫然としている。 本来なら、今回はマラドーナ追悼のためのテキストを書くべきなのだろう。 ただ、私は、読者を納得させるに足る文章を書く自信を持てない。たぶん、マラドーナについて私が書くテキストは、ひどく個人的な話になる。その個人的な話が普遍性を持っているのなら良いのだが、おそらくそういうことにはならない。私の個人的なマラドーナ追想譚は、うっかりすると、少なからぬ人々の反発を買う。でなくても、ネット上のメディアで万人が共有できるような心あたたまるエピソードには着地しないだろう。むしろ、炎上するはずだ。大好きな人間に向けた最も率直な言葉は、ネットにぶら下がっているそれぞれに鈍感だったり粗雑だったりする野次馬の心にはどうせ届かない。だとしたら、沼

                                                      あなた、ウソヲツイタネ?
                                                    • 「募集」と「募る」の違いはどうでもいい

                                                      書斎として使っている部屋のPCの横に、小型(19インチ)のテレビ受像機を置いている。 仕事をはじめる気持ちになれない時、私は、このテレビをつけておくことが多い。もっとも、音声はミュート(消音)したままだ。おそらく、画面の中を右に左に動いている人間たちを眺めることが、私にとって、窓を開けて空気を入れ替えることの代償になっているのだと思う。あまり健康的なテレビの使い方ではない。本当は外に出て、自分の足で町を歩くべきなのだ。それはわかっている。しかし、いつもわかっている通りにできるわけではない。 この2日ほどは、音量を上げて国会中継を視聴していた。 しばらくぶりに見る国会は、頽廃している。 私は、こう見えて、他人を軽蔑することに慣れていない。誰かを軽蔑せねばならない事態に直面すると、いつも大変に疲労する。そんなわけで、私は、現在、ひどく疲れている。 国会でかわされているやりとりが、日本国民の言語

                                                        「募集」と「募る」の違いはどうでもいい
                                                      • 出羽守に叱られろ!

                                                        最初にネタをひとつ。 《TLがデワノカミ批判だらけなので、ライバルの神仏を告知しておきます。 1.出羽守(デワノカミ):「欧米では」を連発する外国かぶれ 2.奈良の大仏(ナラノダイブツ):「日本人なら」を連発する国粋主義者 3.救世観音(クセカンノン):「◯◯人のくせに」を連発する差別主義者》 これは、2018年の8月にツイッター上に投下した書き込みなのだが、こんな未消化なネタをわざわざ公開したのは、私自身が、この数年、いわゆる「出羽守」を嫌う日本人が増えたことをとみに実感しているからだ。 念のために「出羽守」についてざっと解説しておく。 「出羽守」は「でわのかみ」と読む。意味は、weblio辞書では 《-略- 海外(特に欧米)の習慣や事柄を引き合いにして、日本のことを貶すような言動を取りがちな人のこと。 -略-》 と説明されている。 「欧米では」「アメリカでは」「フィンランドでは」という

                                                          出羽守に叱られろ!
                                                        • 大臣の謝罪で得をしたのは誰?

                                                          先週は体調不良のため、おやすみをいただいた。 今週も体調はたいして改善していない。でも、今回は書かないといけないと思っている。自分のためだけではない。この国の未来ために……と、別に恩に着せるつもりはないのだが、おおげさなことを言ってしまった。忘れてください。 萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言関連のニュースを眺めつつ、すでにうんざりしている人も少なくないことだろう。 なにしろ報道の量が多いし、その伝え方があまりにもカタにハマっている。そう思って大臣に同情を寄せている人もいるはずだ。 私自身、少なからずうんざりしている。 理由はいくつかある。 第一の理由は、萩生田発言をとらえて、自分が当欄に書くであろう原稿の内容が、あらかじめわかりきっているからだ。 いったいに、原稿を書く人間は退屈を嫌う。私も同じだ。自分が何を書くのかが、あらかじめ見えているタイプの原稿には、なるべくかかわりたくない。

                                                            大臣の謝罪で得をしたのは誰?
                                                          • 私たちはどこへ行くのか

                                                            Go Toについて書いておきたい。 7月16日午後6時の執筆時点では、東京を対象外とする方針が固められたようだ。 とすれば、Go Toトラベルキャンペーンが、国の施策として動きはじめようとしているいまのうちに、その決定の経緯と現時点での反響を記録しておく必要がある。このタイミングを逃すと 「お国が引っ込めた施策について、いつまでもグダグダと言いがかりをつけるのは、あまりにも党派的な思惑にとらわれたやりざまなのではないか」 「世論の動向にいち早く反応して、一旦は動き出した政策を素早く見直す決断を下した安倍政権の機敏さを評価しようともせずに、死んだ犬の疱瘡の痕を数えるみたいな調子で撤回済みのプランを蒸し返してあげつらっているパヨク人士の叫び声が必死すぎて草」 てな調子で、検証作業そのものが、要らぬ非難を招くことになる。 でなくても、いったいに、現政権は、検証ということをしない。 彼らは、森友案

                                                              私たちはどこへ行くのか
                                                            • 昭和の笑いはおおらかだったのか

                                                              スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」(WEF)が3月31日に公表した「ジェンダーギャップ指数」の年次報告書によると、日本の男女平等の達成率は65.6%で、ランキングでは、世界156カ国中で120位に相当する。 ここまで書いてみてあらためて気づいたのだが、当欄でジェンダーないしは男女格差の話題を扱うのは、前回から2回連続になる。 そうでなくても、ここのところフェミニズム関連の話題をとりあげるケースが増えている。 「オダジマはフェミ推しに転向したのか」 「あいつもめんどうくさいヤツになっちまったなあ」 と、そう思っている読者もいらっしゃることだろう。 コラムニストとして自覚しておかねばならないのは、 「フェミニズム関連の話題は一般受けしない」 ということだったりする。もう少し踏み込んだ言い方をすると 「フェミの話題を持ち出すと、つまらない書き手だと思われる」 のである。 問題は、ここにあ

                                                                昭和の笑いはおおらかだったのか
                                                              • 伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」

                                                                毎日新聞が伝えているところによれば、なんでもJR東神奈川駅の駅員が、 《新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校や外出自粛が長引く中、少しでも明るい気持ちになってもらおう》 ということで、改札の前にあの昔なつかしい黒板の伝言板を設置したのだそうで、これが、好評をもって迎えられているのだという。なるほど。 いきなりのヒマネタだ。やれ新型コロナだ検察庁法改正だで世間の空気が緊迫しているなかで持ち出すには、あまりにも能天気な話題にも思える。でも、「伝言板」というフレーズを何十年ぶりかで見て、いろいろな記憶がよみがえってしまった私の執筆脳は、もはや後戻りができないのだね。 今回は伝言板の話をする。 そもそも、こんなほのぼの系の街ネタがどうして私のアンテナにひっかかったのかというと、週イチで出演しているラジオのディレクターさんが拾ってきてくれたからだ。ディレクター氏は、毎週、私が出演する20分ほどのコ

                                                                  伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」
                                                                • コラムニスト・小田嶋隆さん死去 65歳 政治や社会を鋭く批評(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

                                                                  政治や社会を反権力の立場から鋭く批評したコラムニストの小田嶋隆(おだじま・たかし)さんが24日、病気のため死去した。65歳。葬儀は近親者のみで営む。 【2022年に亡くなった方々】石原慎太郎さん、西村賢太さん 東京都生まれ。早稲田大卒。食品メーカーを退社後、ラジオ局アシスタントディレクター、作詞家などを経験する。雑誌「噂の真相」(2004年休刊)でコラムを連載し幅広い支持を得た。最近ではツイッターでも積極的に発言。19年に脳梗塞(こうそく)を公表し、その後入退院を繰り返していた。今月、自身初の小説集「東京四次元紀行」を刊行したばかりだった。 著書に「日本語を、取り戻す。」「小田嶋隆のコラムの切り口」「超・反知性主義入門」など多数。

                                                                    コラムニスト・小田嶋隆さん死去 65歳 政治や社会を鋭く批評(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
                                                                  • 訥弁は忖度を生み、詩は思考を呼ぶ

                                                                    新型コロナウイルスの感染拡大を警戒する中で行われたバイデン米新大統領の就任式は、私がこれまでに見た大統領就任式の中で、最も地味なイベントだった。それでも、彼の国の人たちが、あの種の式典を演出するにあたって発揮する手腕のみごとさには、毎度のことながら感心させられる。 とりわけ印象的だったのは、自作の詩を朗読したアマンダ・ゴーマンさんという若い詩人の素晴らしいスピーチと、その彼女の朗読に耳を傾ける聴衆の姿だった。 なんと言うべきなのか、詩という文芸への尊敬を失っていない国の式典のありように、羨望の念を抱かずにはおれなかった。 もっとも、私は、当日、ナマの朗読を聴いて、その場で英語の詩の意味を解したのではない。残念なことに、そういう能力を私は持っていない。私が「印象的だった」と言っているのは、その日のうちにネット上に流れてきた抄訳や、翌日の新聞に載った日本語訳を参考にしながら、ゴーマンさんの作品

                                                                      訥弁は忖度を生み、詩は思考を呼ぶ
                                                                    • 「死にたい人」の背中を押すなかれ

                                                                      川崎市の登戸でひどい事件が起こった。 詳しくはリンク先を見てほしい。私はあまりコメントしたくない。 登戸は、20代の頃、仕事上で行き来のあった人が住んでいた場所だ。その人はもう亡くなってしまったのだが、いつも自分の生まれ故郷である登戸について 「ニコタマ(二子玉川)なんかよりずっと素敵な街だ」 という言い方で自慢していた。 つい半年ほど前に所用で訪れた時にも、私の生まれ育ったあたりと同じ河川敷に近い街の空気に親近感を抱いた。なので、今回の事件は胸にこたえた。 宮崎勤による一連の幼女殺害事件が発覚したばかりの頃、保育園に通う女の子を持つ知り合いがとても怒っていたのを記憶している。 当時独身だった私は、いつもは温厚なその知り合いが、どうしてそこまで強い憤りを表明しているのかを、いぶかっていたのだが、後に、自分が子供を持ち、同じ立場の保育園児の親たちとやりとりするようになって、幼児を養育している

                                                                        「死にたい人」の背中を押すなかれ
                                                                      • 一億総祖父母時代に、大坂なおみ選手をたたえる

                                                                        菅義偉氏が第99代の内閣総理大臣に就任した。各メディアは新首相および新内閣の話題で持ち切りだ。 私個人としては、 「ああそうですか」 と申し上げる以外に伝えるべき言葉が見つからない。 もう少し事態がはっきりしてきたら、あるいは、何かを言うことになるかもしれないが、何も言わないかもしれない。私が何かを言う前に、政権の方が倒れているかもしれない。どっちにしても、先のことはわからない。 今回は、大坂なおみ選手の全米オープンテニス大会での優勝をめぐって、いくつかのメディアで取り上げられた話題を振り返ってみたいと思っている。 この話題には、いくつかの重要な問題の糸口が顔をのぞかせている。その「いくつかの重要な問題」を思いつくままに箇条書きにすれば、 アメリカにおける黒人差別の問題に、われら日本人は、どのようなスタンスで関与すべきであるのか。 スポーツ選手や芸能人などの著名人が社会的な問題や政治的な事

                                                                          一億総祖父母時代に、大坂なおみ選手をたたえる
                                                                        • 小田嶋隆『東京四次元紀行』について - 兵庫慎司のブログ

                                                                          小田嶋隆の遺作となった……いや、この後も、すでに書かれたものをまとめた本が出る可能性はあるし、大いに出してほしい、買いますので、とも思うが、少なくとも「生前に出た」という意味では遺作となった、著者初の小説が『東京四次元紀行』である。 「あとがき」に明記されているように、この短編小説集の元になった雑誌連載は、2014年の春、月刊サイゾーと、季刊の総合誌SIGHTで、ほぼ同時に始まっている。 SIGHTの方は『小田嶋隆の私物小説』というタイトルだった。自分の記憶に残っている「物」をモチーフにして、過去のことを書いていく、という設定なので、ご本人の発案で、そういうタイトルに決まった。 SIGHTでは、その前の号までは、『小田嶋隆の万巻一読 ベストセラーを読む』という連載が、長いこと続いていた。ざっくり言うと、「その時に売れているベストセラー本を読んで批判する」という趣旨だった。そうではなく、肯定

                                                                            小田嶋隆『東京四次元紀行』について - 兵庫慎司のブログ
                                                                          • 「はまらなかった」ピースの悲しみに

                                                                            先週末以来、体調がよろしくない。定期的な治療を受ける身になってみると、投薬のタイミングやら検査のあれこれでカラダのコンディションが変わりやすくなる。と、その変化に呼応して、気分や人生観がわりとカジュアルに変わってしまう。これはもう、どうすることもできない。 そんなわけで、病を得てからこっち、自分が、思考の主体である前に、まず生き物であるという事実に直面している次第だ。 生き物である限りにおいて、ものの考え方や感じ方は、外的な客観状況よりは、ほかならぬ自分自身の健康状態や体調に、より端的に左右される。そういう意味で、いま私がとらわれている憂悶は、あまりマトモに取り合うべきではないのだろうとも思っている。 とはいえ、本人にしてみれば、アタマで思うことよりはカラダで感じることのほうが切実でもあれば現実的でもあるわけで、ということはつまり、うんざりした気分の時に、啓発的な原稿を書くみたいなうさんく

                                                                              「はまらなかった」ピースの悲しみに
                                                                            • 「五輪」の蚊帳の外で思ったこと

                                                                              久しぶりです。 またしても、やや長めにお休みしました。 と、まずは、休んでいた間の事情についてお話しします。 とは申せ、すべてを明かすわけにはいかない。理由は、私が、インターネット経由でテキストを読んでいる読者を信用していないからだ。 読者にもいろいろな認識の人間がいる。 仮に95パーセントの読者がマトモな感覚の持ち主であるのだとしても、残りの5パーセントがあらかじめ悪意を抱いて文章を読みにかかる人間であれば、書き手の側が想定している前提は、そっくりそのまま、台無しになる。 少なくとも病気の話はできない。 以前、ある疾患で入院したことがあって、その時は、自分なりに穏当な書き方を心がけたつもりでいたのだが、結果はさんざんだった。 一部の心ない読者が、各方面に悪意ある情報を拡散したことで、私は、一定期間、いやな気持ちを味わう羽目に陥った。 あの時の繰り返しは避けたい。 とにかく、100人の読者

                                                                                「五輪」の蚊帳の外で思ったこと
                                                                              • 誰かを落とすための一票だってある

                                                                                投票日も近いことなので、今回は選挙関連の話をする。 この話題は、おそらく荒れるだろう。 もちろん、読者の圧倒的多数が、黙って読んでくれる穏当な人たちであることは承知している。 ただ、インターネット上に公開されたテキストを取り巻く空気は、ごく少数の「声の大きい人たち」が作り上げる決まりになっている。であるから、揮発性の高い選挙の話題を含む文章は、毎度のことながら、あっという間に炎上する。そういうことになっている。 選挙の場合とは逆だ。 どういうことなのかというと、選挙の結果を左右しているのは、熱心な政党支持者による個々の一票であるよりは、むしろ最大多数を占める「投票に行かない人たち」の「投じられなかった票」だったりするということだ。それゆえ、皮肉なことだが、21世紀に入ってからこっちの、投票率が頭打ちの状況にあるわが国の選挙の結果は、「投票所にやって来なかった人たち」の巨大な沈黙を反映して、

                                                                                  誰かを落とすための一票だってある
                                                                                • 「数」の力を妄信する人々

                                                                                  愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)に向けた署名集めをめぐって、奇妙な事実や不可思議な背景が漏れてきている。 現状で判明している事実と、明らかになっていない疑惑を整理しつつ、事態を適切に説明し得るシナリオと、今後究明が期待されるポイントを検討していく大切な仕事は、ジャーナリズムの世界の記者さんたちにまかせる。 私は、自分の足で取材をしている人間ではない。ひとさまの書いた記事を上から論評して、なにがしか意味のあることを言える立場の人間でもない。 なので、当稿では、自分の身に起こったことを起点に、今回の事件を、個人的な視点から眺め直してみるつもりでいる。 事件の真相や背景について、憶測を並べることは差し控える。 というのも、署名運動を推進していた人々の杜撰な仕事ぶりや粗雑な情報管理のありさまが、続々と漏れてきてしまっている現今の状況からして、事態の全容が解明される日は、そんなに先の話では

                                                                                    「数」の力を妄信する人々

                                                                                  新着記事