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山形浩生の検索結果1 - 28 件 / 28件

  • オーウェル『1984年』全訳完成 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Big Brother is Watching YOU!!! 2023年の年頭に宣言した通り、オーウェル『1984年』の全訳をあげました。 genpaku.org html版と、pdf版があるので、まあお好きに。当然、クリエイティブコモンズなので、自由にお使いください。個人的にはいま出版されているどの翻訳よりもいいとは思うが、それは趣味もあるでしょう。商業出版したいとかいうところはあるかなー。なければ自分で電子ブックでも作って売ろう。 追記:商業出版したいというところが出てきたので (まだ確定ではありません) 、いまのうちにダウンロードしたりあちこちにばらまいたりしておくといいと思うぞ。(11/28) ビッグ・ブラザーのポスターでもトップにかざろうかと思ったけれど、みんなおどろおどろしいものばかりで、小説の記述に即したニュートラルなものがあまりないので少しびっくり。 訳していて、いろいろ含

      オーウェル『1984年』全訳完成 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    • ピケティ『資本とイデオロギー』読書ガイド - 山形浩生の「経済のトリセツ」

      目次: 目次: はじめに 1. 『資本とイデオロギー』の概略 1.1 .『21世紀の資本』のあらすじ: 1.2. 『資本とイデオロギー』の全体的な話 1.3. 『資本とイデオロギー』のあらすじ 第I~II部:歴史上の格差レジーム/奴隷社会&植民地 第III部:20世紀の大転換 第IV部(その1):政治的対立の次元再考——問題編 第IV部(その2):政治的対立の次元再考——対策案 (第17章) 第IV部(その3):政治的対立の次元再考——対策案 (その他随所) 2. 通読する必要はないと思う 3. タイプ別読み方 『21世紀の資本』の続きとして読みたい人、つまり経済格差とその対応を知りたい人は…… 経済格差への対応を知りたい人は…… 世界各地の格差の変動プロセスの比較に興味ある人は…… 4. 最後に はじめに このたび、ついについに難産の子、ピケティ『資本とイデオロギー』が出ました。 資本と

        ピケティ『資本とイデオロギー』読書ガイド - 山形浩生の「経済のトリセツ」
      • オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

        Executive Summary トマス・ピンチョンのオーウェル『1984年』序文は、まったく構造化されず、思いつきを羅列しただけ。何の脈絡も論理の筋もない。しかもその思いつきもつまらないものばかり。唯一見るべきは、「補遺;ニュースピークの原理」が過去形で書かれていることにこめられた希望だけ。だが、考えて見れば、ピンチョンはすべて雑然とした羅列しかできない人ではある。それを複雑な世界の反映となる豊穣な猥雑さだと思ってみんなもてはやしてきた。だが実はそれは、読者側の深読みにすぎないのかもしれない。そしてその深読みが匂わせる陰謀論が意味ありげだった時代——つまり大きな世界構造がしっかりあって、裏の世界が意味をもった60-80年代——にはそれで通ったのに、1990年代以降はもっと露骨な陰謀論が表に出てきてしまい、ピンチョン的な匂わせるだけの陰謀論は無意味になった。それがかれの最近の作品に見られ

          オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
        • チェ・ゲバラ広島行きの謎、および三好徹『ゲバラ伝』 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

          いま訳しているゲバラ本、詳細なだけあって、とにかくおもしろいエピソード満載ではある。その一つが、1959年ゲバラの来日および広島訪問のエピソードだ。 簡単に背景を。1959年1月、世界の驚きをよそにキューバ革命が成功してハバナは制圧されてしまい、新政権が樹立した。カストロは、表向きは自分が共産主義者じゃないと言い張りつつ、軍と政権内の粛清とキューバ共産党 (=人民社会党) メンバーの浸透を着々と進める。 そんな中、カストロは今後のアメリカとの関係悪化を予想し、アメリカ以外への輸出市場拡大および外交関係の強化を狙って、特にバンドン会議の「非同盟国」(米ソどちらにも肩入れしない国々、エジプトやインド、セイロン、インドネシアなど) および新興工業国 (当時の日本は、いまのような「先進国」などではなく、あくまで妙にがんばってる後進国もどきだった) である日本やユーゴに使節団を送りだし、その親玉にチ

            チェ・ゲバラ広島行きの謎、および三好徹『ゲバラ伝』 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
          • ラヴジョイは「冷笑系」:非ビリーバーの優位性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

            ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』を勝手に翻訳している話をした。 cruel.hatenablog.com で、引き続きやっていて、第2講もいまのところ、なかなかおもしろい。まだ前半だけだけれど、言われていることはやはり単純だ。 頻出する観念として「異世界性」と「この世性」みたいなのがある。 異世界性は、来世の天国で処女が17人!とか、この世が気に食わんから異世界転生するなろう小説みたいなもの欲しげな話とはちがう。そういう異世界転生って、この世の価値観のまま自分の都合のいい世界になるってことで、「この世性」の権化。 本当の異世界性というのは、この現実は現実ではなく、永遠不変の絶対的な善の世界があるのよ〜みたいな話。 この手の論者はみんなインチキ。なんだけれど、西洋思想では圧倒的にこの異世界性が大きな影響を持つ。宗教なんてみんな神さまだのといったありもしないものを押しつけるという理屈で、この異

              ラヴジョイは「冷笑系」:非ビリーバーの優位性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
            • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

              ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の翻訳を始めた話はした。 cruel.hatenablog.com 素直に第2講を初めて、半分くらいはおわっているんだけれど、そもそもこの話がどこへ行くのか知りたくて (はい、推理小説もまず最後を読むタイプです)、最後の第11講をあげてしまいました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第11講 (最終回) もちろん、このpdfを読むとそれなりにウダウダしい。だが、そこで言われていることは、第1講と同じでとてもシンプルではある。それはつまり、以下の通り: 「存在の連鎖」という観念は最終的に、二千年かけて詰めていったらボロボロでまったく整合性がないことが明らかになった。 だから破綻して、すると一気に忘れられてしまった。 思想そのものの現代的な価値はまったくない。 ただこういう変なものにハマる精神の働き (すでに蒸し返すバカも出てる) の記録という意味はあるかも。

                ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
              • なぜ歪曲されたプーチン像が流布されるのか? ウクライナ戦争をもっと正しく理解するために日本人ができる情報源の選択 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け

                #2 「プーチンは北方領土を返す気がない」 山形 日本におけるプーチン報道についてお聞きできますか。ウクライナ戦争の開戦直後、日本のロシア専門家と言われる人たちの発言は情けなかったと思います。これまで北方領土問題でも、プーチンが「引き分け」と言っただけで二島返還論を示唆したという報道が出たりしました。まず外務省や政府筋に「こう話を持っていきたい」という意向があって、それに忖度する人が重用されるうちに内輪の構図ができてしまったのではないか、と見ているのですが、黒井さんは日本のプーチン報道をどうご覧になっていますか。 黒井 日本の報道の中心の中心は、実は僕はよく知らないんですよ。たまに呼ばれて「北方領土は返ってきませんよ」などと言って、変なことを言っていると思われていたくらいでした(笑)。 北方領土に関しては、外務省は「北方領土返還交渉はいけます」と言っていますが、モスクワの大使館ではロシア高

                  なぜ歪曲されたプーチン像が流布されるのか? ウクライナ戦争をもっと正しく理解するために日本人ができる情報源の選択 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け
                • 焚書坑儒の続き:学者もその批判も昔から同じ。徐福も、無駄金づかい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                  以前、史記の焚書坑儒の話をした。 cruel.hatenablog.com ここでは、焚書坑儒の理由が封禅の儀式をめぐる話と関係があるんだろう、という説を紹介してそれの通りに書いた。でも、その後も史記をちまちま読んでいたんだが、なんか秦の始皇帝のところを読むと、普通に焚書坑儒の理由は書いてある (前回は、その封禅の儀式のところだけつまみ食いした)。きちんと部下からの進言があって、それをもとにやったのね。そしてそこの部分だけでも、封禅の儀式の話と主張はまったく同じだ。儒学者どもは、実用性のある役に立つ知識を持たず、何も結論を出せず、そのくせ批判だけは口うるさかった。 それよりもっと手厳しいかも。学者が訓詁学に堕している理由、それがかつてはオッケーだった理由も、そのえらい部下はきちんと分析し、進言している。時代とともに学問も進歩しなければいけない! 立派です。 その当該ヶ所を以下に引用。 始皇

                    焚書坑儒の続き:学者もその批判も昔から同じ。徐福も、無駄金づかい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                  • 「社会に埋め込まれた経済」で格差を克服? - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                    ポラニー『ダホメ王国と奴隷貿易』、Kindle版にして少しお金稼ごうぜと思って、ちょっと見直しておりました。 cruel.hatenablog.com ポラニーがこの本で言っている「社会に埋め込まれた経済」というのは、ピケティが『資本とイデオロギー』(もうすぐ出ます!) でも引き合いに出していて、資本主義と市場経済の暴走を許してはいけない、それは格差増大をひたすら肯定して不平等な社会の到来を招いてしまう、経済活動はもっと社会に奉仕するものとして、社会に埋め込まれるべきだ、という主張がポラニーの、特に『大転換』を軸に述べている。 でも今回思ったんだけれど、この議論というのは成り立つんだろうか。ポラニーに準拠する限り、非常に歪んだ議論なのでは? まず一つ。経済が社会に埋め込まれた状況としてこのダホメ本で挙がっているダホメ社会。これはそんな、格差のない平等社会だったっけ? もちろんちがう。王様が

                      「社会に埋め込まれた経済」で格差を克服? - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                    • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                      その昔、荒俣宏だったかで、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』をほめていて、その後高山宏が、ニコルソンとかの紹介で観念史をいろいろもてはやしていた頃に、読もうかと思って邦訳を買って取りかかった。 存在の大いなる連鎖 (ちくま学芸文庫 ラ 10-1) 作者:アーサー・O. ラヴジョイ筑摩書房Amazon が、これ本当にひどい翻訳で、何を言っているのかさっぱりわからない。で、原書を見てみたら、なんだ、ずっとわかりやすいじゃないか。 訳者はおそらく、著者が何を言っているのかまったく理解できていなかったと思う。最初の一章をまず訳してみたので、まあ暇な人は読んで見てくださいな。持っている人は邦訳版と対比してみるのも一興かとは思う。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第1講:観念史とは何か? 言っていることは、全然むずかしくないのだ。人は「すべては一つ!」とか「世界に1人で立ち向かうぜ」とか言うと、理屈もな

                        ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                      • オーウェル「バーナム再考:現状追認知識人の権力崇拝とその弊害」(1946) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                        Executive Summary ジョージ・オーウェルが、第二次世界大戦中および大戦後に人気を博した通俗評論家バーナム『管理職革命』『マキャベリ主義者たち』を徹底的に批判した書評的エッセイ。バーナムは、マキャベリを引き合いに出して、政治は常にエリートのだましあいの権力奪取で大衆は奴隷、イデオロギーなんて大衆動員の口実、パワーこそ正義、と冷徹なリアリストを気取ってみせた。この見立てを元に、バーナムはドイツが勝っているときはナチスこそ新世界秩序の盟主、ソ連なんか一撃でおしまい、抵抗するな、受け入れよと説いたくせに、数年後にドイツが負け始めたら、ソ連最強でスターリン社会主義が世界を支配する、と手のひら返しを演じて見せた。だがこれは「知識人」にきわめてありがちな態度で、彼らに蔓延する敗北主義の根底でもある。「リアリズム」と称しつつ、臆病な現状追認の権力すりより行動でしかないのだ。根底にある社会の

                          オーウェル「バーナム再考:現状追認知識人の権力崇拝とその弊害」(1946) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                        • マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』

                          ずいぶん間が空いた山形月報ですが、今回は文学好きの間では話題ながらも難物と言われるコーマック・マッカーシー遺作2部作を中心に、ホームズの格闘術と、財政金融政策の話。文学にネタのような真面目な格闘術、さらには経済話といつもながらバラバラですが、さて、どんな話になるでしょうか! ずいぶん間が開いた (一年以上かよ!)。いつもながら、採りあげるつもり満々の本が一冊あって、それをどう料理しようか考えるうちに、ずるずる先送りになってしまうというありがちな話ではあります。 で、今回扱うのは、それではない。 コーマック・マッカーシーの遺作となる2部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』だ。 マッカーシー『通り過ぎゆく者』 コーマック・マッカーシーは、現代にあって、本当の意味での文学を書けた数少ない作家の一人だ。そして、それは文学というものの意義が変わってきた現代では、決して容易なことではない。 村上龍は

                            マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』
                          • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学と三つの原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                            お待ちかね (だれも待ってないか) 『存在の大いなる連鎖』第2講の翻訳。 まずは、暇な人は訳をごらんあれ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学における観念の創成:三つの原理 みんな読まないだろうからあらすじを。 前回の第1講は、そもそも観念史って何をする学問なの? という疑問に答えたものだった。 cruel.hatenablog.com 今回は、このシリーズで実際に扱う「観念」を紹介する。具体的には次の3つの原理となる。 充満の原理 連続性の原理 段階性の原理 プラトンが『国家』『ティマイオス』で、神さまというのはすんげえ隔絶したえらい絶対永遠真実完全な存在なんだぜ、この世なんか相手にしないほどすごいぜ (異世界性)、と言っておきつつ、じゃあなんでその神さまはこんな世界作ったりしたんだよ、なぜそんなえらい神さまがつくった世界に悪があり、苦しみがあるんだよ、というのに答えね

                              ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学と三つの原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                            • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』補論:現代に生きる存在の連鎖 (ちがう) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                              昨日、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講を見て、その滅多斬りぶりがスゲえという話をした。 cruel.hatenablog.com 一晩寝ると、なおさらすごいな、と思う。ふつう、ここまでやらないと思うのだ。普通はどうするだろうか? なんとかポジティブに終えたいと思ってしまうのが人情だろう。そしてその簡単な手はすぐに思いつく。まず、最終回の題名を変えよう。 「現代に生きる存在の連鎖」 とかいうタイトルにしましょう。そして、全体の話の構成はこんな具合にしよう。 (ヤコービが〜、シェリングが〜、で、全部破綻しましたという話) 確かに、こうした神学や哲学の分野においてはこの観念は破綻し消えた。 しかしそれは偉大な敗北、豊穣で多産な破綻だったんだ。 だって、世界に一貫した合理性があるという確信は現代科学に受けつがれたんだ! さらにベルグソンやホワイトヘッドみたいな現代の人々にも影響は見られる。

                                ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』補論:現代に生きる存在の連鎖 (ちがう) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                              • クルーグマン『経済発展と産業立地の理論』の改訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                数日前に、なぜだか知らないがアーサー・ラブジョイの本を訳し始めた話は書いた。 cruel.hatenablog.com で、それとまったく関係なしにやりはじめちゃったのが、このクルーグマンの本だ。 で、訳文がこれ。 クルーグマン『開発、地理、経済理論』(3章はまだ途中全部やっちゃいました) もちろん著作権というものがあるので、クリックして読んだりしてはいけないよ。 なんでこんなのやってるのか? おもしろいから。これは1990年代の前半、クルーグマンが最もおもしろくて天才的なひらめきを次々に発揮していた時期の話だ。そしてそこのテーマは、開発経済学と経済地理学。まあぼくがやらんでだれがやる、というような本ではある。 とはいえ、こうした分野そのものの中身に切り込んだというよりは、なぜこういう分野が1950年以降イマイチぱっとしなかったのか、という話ではある。そして答は簡単。どっちも収穫逓増がとっ

                                  クルーグマン『経済発展と産業立地の理論』の改訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                  はいはい、ちょっとだけ残すのもいやだったので、やってしまいましたよ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』全訳 (pdf、3.3MB) これまでずっと続けてきたラヴジョイ、これで注も含めて全訳あげました。詩とか、長々しい引用とかはあまりに面倒なので訳しておりませんが、詩は苦労してそれっぽく訳したところで、何か追加でわかるわけではないし、引用部分も決して追加情報があるわけではない。文中でラヴジョイが語ったことの裏付けでしかないので、まあ許しなさい。 cruel.hatenablog.com これで一通り訳し終わったが、もちろん内部利用用なのでみなさん勝手に読んではいけませんよ。 9章:存在の連鎖の時間化 さて残っていた第9章は、存在の大いなる連鎖の時間化、というもの。ここはそれなりにおもしろい。が、テーマは簡単。静的な存在の連鎖/充満の原理は、ライプニッツ&スピノザの章で見たように、決定論的な世

                                    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第8講:18世紀生物学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                    はい、ひまつぶしにラヴジョイの続きですよ。前は天文学だったけれど、今回は生物学です。個人的にはオリバー君の話につながるのが楽しかったが、もうオリバー君なんて知らないよな、みんな。 cruel.hatenablog.com 今回の話はとても簡単。18世紀になって、博物学ができていろんな人間や動物が観察されるようになると、生物種とかいうかっちりした分類ってウソじゃね? 細かく探せば間のもの、つまりミッシングリンクがたくさんが出てくるだろ、という話が有力に思えてきた。さらに顕微鏡ができると、これまで何もないと思っていたところにも微生物がウヨウヨしてるよねー、あらゆるところに生命が充満してるじゃないの、ほら充満の原理は正しいんじゃない? という話が出てきた、ということです。 翻訳は以下にあります。 ラブジョイ『存在の大いなる連鎖』第8講:18世紀生物学 そしてものぐさな読者のみなさんのために、パワ

                                      ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第8講:18世紀生物学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                    • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第4講:充満の原理と新しい宇宙観 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                      はいはい、やめようかなと思っていたラヴジョイですが、第2講で舞台設定ができて、第11講でいきなり結論になってしまうのは、ちょっとつまらない。その途中でどんな具合で論が進むかをみるために、多少は土地勘のある (他の部分よりは:スピノザやライプニッツは、そんなに読んでないよー) 宇宙論のところをやってみました……がその前に少しおさらいから。 cruel.hatenablog.com 前置き:「異世界性」と「この世性」のおさらい 第2講では、本書で扱う主な観念の源である、「異世界性」と「この世性」というのが示された。これはどっちも、神さまの位置づけの話。 異世界性ってのは、神さまの世界はぼくたちなんかの及びもつかないまったくの別世界だ、という話だった。神さまはスーパーえらいし、人間なんかの想像力なんかとても及ばないパワーもあるし能力もあるし神さまですから、もちろん善の親玉。その世界は隔絶し、完璧

                                        ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第4講:充満の原理と新しい宇宙観 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                      • 外国で「男性の皆さん(女性がされるような)こんな褒められ方嬉しくないでしょ?」という投稿が…(山形浩生) - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

                                        山形浩生氏のツイートより これ、女が言われることを男が言われたらイヤだろ、と言いたいらしいが、リプの男たちみんな、全然嫌じゃないよ、一生思い出になるほど嬉しいよ、男がどれほど人に褒めてもらえる機会少ないか知らないだろ、どんどんやって、とむしろ歓迎。 https://t.co/i8Mrw2GqkD— Hiroo Yamagata (@hiyori13) July 29, 2023 コメントで一番笑いつつ同情したのが「以前、髪がきれいだと女性に言われてすごくうれしかった、今はつるっパゲになって一本もないが、その褒め言葉が40年たった今も心の支えだ」というやつ。— Hiroo Yamagata (@hiyori13) 2023年7月29日 how would you men like it if the roles were reversed huh??? not so great is it

                                          外国で「男性の皆さん(女性がされるような)こんな褒められ方嬉しくないでしょ?」という投稿が…(山形浩生) - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-
                                        • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                          ラヴジョイ、ちょろちょろ続いております。 cruel.hatenablog.com で、第5章にやってきました。この章はライプニッツとスピノザという大物が登場するのでなんかすごい哲学的な大バトルが出て、存在の大いなる連鎖という思想そのものに関わる話になるんじゃないかなー、と期待していたら、意外につまんなくてちょっとがっかり。 (ライプニッツとスピノザ) まあ、まずは訳を読んで下さい。もう章ごとに切るのは面倒だからやめた。全文あげておくから読んでね。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』(山形浩生訳) パワポも一応つくりました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ by @8721924829 しかしこれは、パワポ見るまでもなく実はかなり中身はシンプルです。この章の基本的な話は次の通り。 ライプニッツは、充満の原理から、宇宙の万物は理由があって必然的存在するという「充

                                            ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                          • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                            ラヴジョイの続きです。 cruel.hatenablog.com 最後の第11講では、この存在の連鎖とか充満の原理、さらにその元になっている神様の異世界性とこの世性の両立が不可能だというのがあらわになって、それが一気に忘れ去られる様子が述べられていた。 cruel.hatenablog.com 今回の第10講は、その一つ手前ということで、その解体の先触れみたいなのがロマン主義として出てきたか、あるいはこの世性みたいなのが嫌われて、全然別の世界を夢想する異世界性指向みたいなのがロマン主義になったとかいう話かなー、と思っていた。 結果で言うと、ぜんぜんちがった。むしろ、存在の連鎖と充満性を強調するような働きが、18世紀ロマン主義として出てきた、というのが主旨となる。まずはお読みあれ (ってきみたち読まないのは知ってるけど)。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 啓

                                              ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                            • 「戦後処理と世界経済の枠組み再構築」今こそ読みたい新訳バイブル | レビュー | Book Bang -ブックバン-

                                              新型コロナ禍とウクライナ戦争は、世界経済を大きな苦難に陥れた。国民の生活を維持し、回復させるには、政府と中央銀行の積極的な経済支援が重要だ。特に政府の積極的な財政刺激政策は「ケインズ政策」と呼ばれてもいる。本書は、今日でもきわめて重要な経済政策の主張者の論壇へのデビュー作になる。すでに古典的名著の評価があるが、その読みやすい新訳の登場を率直に喜びたい。 第一次世界大戦の講和条約を会議する場に参加したイギリス代表団の一員であったケインズは、その会議に参加した各国の首脳たちを風刺し、またドイツへの賠償金が過大であることを痛烈に批判した。ドイツの経済再生が賠償金によって不可能になれば、ふたたび欧州全域が不安定化してしまう。ケインズの主張は、当時、世界的な話題を呼んだ。その後、賠償金は減額されたが、やがて経済的に疲弊したドイツからナチスが生まれたのは歴史の教えるところだ。 ウクライナ戦争や、また中

                                                「戦後処理と世界経済の枠組み再構築」今こそ読みたい新訳バイブル | レビュー | Book Bang -ブックバン-
                                              • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第3講:中世の内部紛争 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                またラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の続きです。第3講。第2講で異世界性とこの世性/存在の連鎖の発端を説明し、4講でそれが天文学でいろいろ応用されたので、その二つの間の中世の話で、何かその天文学の前段にあたるひねりがあるかも、というのが期待だった。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com が、残念ながらそんなおもしろい章ではなかった。第2章で説明された、人間には及びもつかない自足した完全な神様という話(異世界性) が中世神学の基本教義だったんだけれど、じゃあなぜこの世はこんなダメなの、もっといい世界を神様は作れなかったの、神様無能やーいやーい、という批判に対して、「そんなことないやい、この世は最高の完璧なんだい!」という話をこじつけるには、充満の原理を持ち出さざるを得なくなり、トマス・アクィナスなどえらい人も右往左往して屁理屈こねてた、という話。

                                                  ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第3講:中世の内部紛争 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                  はい、ラヴジョイの続き。 cruel.hatenablog.com 今回は、18世紀に、存在の大いなる連鎖が流行って、それが人間の立ち位置についての考え方に影響し、格差社会の弁明まで出てきました、という話。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 比較的中身は薄いというか、言われていることはそんなに意外ではなく、ああ、こういう考え方も出てくるかねえ。というもの。全体として、存在の位階があってそれが重要なんだから、人間は自分が特別と思うな、自分のポジションだけ守ってろ、改善しようとするな、という現状肯定イデオロギーが出てきた、ということになる。それぞれについて、いろんな詩人や評論家があれこれ言っているのを引用するけれど、ざっと見ておけばいい感じ。それが18世紀社会の維持に決定的な影響を持っていた、という感じではない。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀

                                                    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第7講:18世紀楽天主義 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                    ラヴジョイ、短い章なのですぐ終わってしまいました。 cruel.hatenablog.com ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』(山形浩生訳) 楽天主義というと、ヴォルテール『カンディード』に出てくるパングロス博士の、「物事はすべて現状通り以外の形ではありえなかった」「現状はすべて最高よ、悪いことがあってもそれも含めて、現状が最高なのよ」というおめでたい論者のように思える。 なんかの芝居で演じられたパングロス博士。 そして、その通りなのだ。楽天主義はまさにそういう議論。 ただしそれは別に、その人たちが陽気で楽天的だったということではない。神は善で、善を最大化するように行動するから、現在以上に善の多い世界はあり得ない、という結論が先にあって、よって現状以外はあり得ず、悪いことも善を最大化するものだ、という議論。一歩まちがえれば、(いやまちがえなくても)「もう世の中どうしようもないよ、改善の余地

                                                      ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第7講:18世紀楽天主義 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
                                                    • プーチン重要論説集

                                                        プーチン重要論説集
                                                      • 新訳 平和の経済的帰結 | 東洋経済STORE

                                                        今こそ読みたい、平和のための経済論 「過剰な制裁が、新たな戦争を生み出す」 100年前、憎悪へ突き進む世界に警鐘を鳴らした 20世紀最高の経済学者・ケインズの傑作が復活! 山形浩生氏「ずいぶんきな臭い時代になってきた現在、本書をきっかけに少しでも戦争/平和と経済についてまじめに考えてくださる方が増えてくれることを祈りたい」ーー「訳者解説」より 〈本書の背景〉 1919年、経済学者にして官僚でもあるジョン・メイナード・ケインズは、 第一次世界大戦後のパリ講和会議にイギリス代表団の一員として参加した。 しかし、ドイツへの過剰な制裁を課す議論の方向性とヴェルサイユ条約の、 あまりのひどさに絶望し、辞表をたたきつけて、即座に本書を書き上げた。 〈なぜ今、読むべきなのか〉 世界的なベストセラーとなり、ケインズの名を一躍押し上げた本作は、 「ナチスの台頭」「第二次世界大戦開戦」を予言した書としても知ら

                                                          新訳 平和の経済的帰結 | 東洋経済STORE
                                                        • ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ - 山形浩生の「経済のトリセツ」

                                                          しかし、考えて見りゃラブジョイは40%くらいやったんだよな。そろそろ「ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ」とかできそうだわな。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com 改訳じゃないけどソローのやつとかクルーグマンとか新規で入れてもいいかも。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com 為替のヤツもあるのよね。 クルーグマン「為替レートはなぜこんなに変わりやすいのか」 もちろんケインズもいろいろあるし、なんかうまく使えばできそうに思うんだが。いまどき読む人がいるかどうかもわからないサマセット・モームなんてのもねー。これは著作権が2015年で切れたから、その後の延長は適用されてないはず。(追記:待てよ、1930年だから戦時加算があるのか。すると切れてないのか?

                                                            ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ - 山形浩生の「経済のトリセツ」
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